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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
32/72

魔法

まやかしの森には演習場が二つある。

その内の片方『エナフェロー演習場』にクリファは五人を案内した。



「この演習場は主に五、六年生が使います。今日は五、六年生は出払っているので一日ここで魔法の勉強をしましょう」

オリオンは演習場を見渡すがいつも使う演習場と大して変わらないように思えた。

「ここはまやかしの森にあるため、演習場外から場所を特定され難く、邪魔が入りません。今ここにいる六人しかエナフェローに入ることはできません」

「先生。魔法の勉強とは具体的に何をやるのでしょうか」

「アナタたちにオリジナルの魔法を開発してもらいます」

「オリジナル!?」

「アナタ達が受けた上級生からの攻撃も彼ら独自の魔法によるものです。彼らのように魔法を扱えるようになってもらいます」

「オリジナル魔法の開発方法を教えてもらえるんですか!?」

「正直一年生にはまだ早いですが、そうも言ってられません」

「?」

「いえ、なんでもありません。さぁ、特別授業を始めますよ」

「はい!!」






「さて、まずはオリオン・ハナムレー。アナタから取り掛からなければいけませんね」

「はい」

「アナタの強大過ぎる引力のことです。それを制御できなければ悲惨な事件を起こしかねません」

「・・・はい」

「普通の魔法使いは自分が必要なマナを集めるための引力に特化させています。アナタみたいに引力を物や人を引っ張るために使う魔法使いは今までに数人しか見たことがありません」

ガブリエルが言う。

「そうだよ!! 思ってたんだけどなんでオリオンってそんなに引力が強いんだ?」

レンダも続く。

「引力ってその人の質量に関係しているのにオリオンの体であんな強大な引力ができるはずがないんだ」

「それが、俺にもわからないんだ。十歳の時に急に引力に目覚めて、その時から引力が強いんだ」

クリファ言う。

「私の中の定義は『引力は魔法ではないが引力操作は魔法である』です。魔法使いが魔法をコントロールしているように引力もまた、必ずコントロールできるようになります」

一瞬曇ったオリオンの表情はやる気に満ちた。

「頑張ります! 俺は何をすればいいんですか?」






「オリオン・ハナムレー。アナタにはマナではなく、ジャッカロープを引力を使って捕まえてもらいます」

「ジャッカロープ!?」

「ええ。動くジャッカロープだけを狙って引力で手元に引っ張ってください」

試練によって多少は引力を抑えられるようにはなったが、まだ動く小さな的を被害を出さずに引っ張って来られるほどの自信はオリオンにはなかった。

(もしまた森を破壊してしまったら・・・)

「安心してください。ジャッカロープは演習場から出たりはしません」

「・・・はい」

「それでは始めますが、他の四人はここから出てもらいます」

「えっ! 演習場からですか?」

「エナフェロー演習場は、森林スペースもあるので四人はそちらへ移ってもらいます。ここではオリオン・ハナムレーの邪魔になります」

ガブリエルは言う。

「オリオン! 頑張れよ! 俺もすっげー魔法開発してくっからよぉ!」

「わかった! 俺も必ず引力をコントロールしてみせる!」

四人はオリオンのいる演習場から出て行き、クリファが指をパチッと鳴らすとオリオンの前方に一匹のジャッカロープが出現した。






「オリオン・ハナムレー。やってみなさい」

オリオンは因縁のある魔物に両手を向けた。

クリファは言う。

「力を抜きなさい」

オリオンは試練で身につけた脱力を行った。

「よろしい。以前よりは成長を感じられます」

以前。それはまやかしの森の木を破壊しながらもレンダを助けた時だ。

「あのジャッカロープを死なせずに手元まで引っ張りなさい。当然ジャッカロープは一匹。そして命も一つです」

クリファのその言葉にオリオンの身体に力が入るがすぐにリラックスした。

「アナタの引力はそれだけで武器です。焦らず引力を極めなさい」

ジャッカロープは動かずにオリオンの様子を伺っている。

オリオンはジャッカロープに向かって引力を発した。

しかし、慎重に行き過ぎたために微弱な引力にしかならず、ジャッカロープを手元にまで引っ張るには至らなかった。

「アナタの引力は何か・・・そうねぇ。対象を引っ張ろうというイメージが湧きませんね」

「!?」

「いえ。叱っているのではありません。魔法には個人的な感覚が重要です。感覚というのは人それぞれ違っていてその感覚と密接に結び付いているのはイメージです。引っ張るというイメージでしっくりこないのであれば、一度引っ張るというイメージから離れてみるのも必要かもしれません」

そう言ってクリファはオリオンのいる演習場を出て四人のもとへと向かった。

(イメージか)

オリオンは思い出す。

それは入学式の日に行われた引力の授業。

クリファは言った。

「引力を風に例える者がいます。『吹き抜けの風のように吸い込まれる』と。他には、漁師のする網漁のように捉える者もいます。一度網を投げてその後、網を引っ張る。更には『引力はパワー』とそのままのことを言うタイプもいます」

(俺の場合は・・・)

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