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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
30/72

事件

ゴブリンを一日で倒した五人は魔法の感覚を更に高めるために試練を続けていた。

対戦するゴブリンを変え、使う魔道具を交換した。

「不思議なスティック。馴れると強いな!」

「葉っぱで勝つの無理過ぎっ!」

五人は時間を見つけてはテピベラの管理下の元、三日間ゴブリンと戦った。

一度見た相手とはいえ、武器が変われば感覚、方法、戦略が変わってくる。

苦戦しながらも五人は魔道具を変えて、それぞれゴブリン五体に勝つことが出来た。

五人に魔法を使っている感覚が芽生えてきていると考えたテピベラは言う。

「よし! これで第一試練は終わりだ!」

「まじ!?」

「明日からは次の試練に移るぞ!」

「次はどんな試練ですか?」

「それは明日のお楽しみ」

「なんだよぉ~。もったいぶらずに教えてくれよぉ~」

「どうせ明日わかるんだし我慢しなよ」

「あっ! わかった! サプライズ的なぁ?」

「サレンちゃん。それは違うんじゃ」






五人が次の試練に胸を躍らせていると、それまで静かだったまやかしの森が騒がしくなる。

テピベラと五人がいる場所はまやかしの森の中でも外側にある。

それはまやかしの森深くに入って魔法を使用しての戦闘はリスクがあるためである。

しかし、学院に近いと試練が露点する可能性があるため、人通りの多い場所からは距離を置いている。

「なんだ!?」

アネッテの横をウサギやリスなどの小動物が駆けていく。

頭上を鳥がバサバサと森の外へと飛んでいった。

どうやら動物たちは何かから逃げているようだった。

「ねぇ、あっちから逃げて来てない?」

サレンはまやかしの森、内部を指さした。

森の奥で何かが起きている。

五人はそう察すると目を合わせた。

意見は一致した。

「行こう!!」

森の奥へ向かって五人と一匹は走り出した。




森の中を走る途中、鹿や熊やジャッカロープをはじめとする魔物などとすれ違った。

普段は穏やかに咲く花や木、草などを荒らしながら必死に逃げるように走っていった。

五人と一匹が走り出して騒動の原因と呼べる場所に辿り着くのはさほど時間はかからなかった。




その場所には一匹のオークがいた。




オークは並び立つ木々よりも背が高く、振り回す棍棒もゴブリンのそれとは比べものにならないくらい大きい。

「まさか、テピベラ。次の試練ってオーク討伐なんて言わないよな?」

「いや、俺は知らん! 学院が試験用に捉えていたのが逃げ出したのかもしれん!」

オークは怒っているようで目を赤くして手に持つ棍棒で木々をなぎ倒していた。

「どうする!」

「精霊たちが怒っちゃうかも!」

オリオンは以前学院長から受けた警告を思い出す。

このまま何もしないという選択肢はない。

教師を呼びに行くとして、呼びに行っている間も被害が広がる。

自分達がやるしかない。

オリオンは決心した。

「森を荒らさせない! ここで食い止める!!」

オリオンの言葉にガブリエルは勇ましく反応する。

「戦うんだな! よしわかった!!」

ガブリエルは呪いの人形に触れて頭に乗せる。

それを見たアネッテは不思議なスティックを持った。

「近接戦が得意な俺とアネッテが前線に立つ。三人は援護と作戦を考えてくれ」

ガブリエルとアネッテで一時的にオークの気を逸らせる作戦。

オリオンとレンダ、サレンは不安はあったが飲み込むことにした。

「わかった」

「無理に攻撃を当てる必要はないからな」

「アネッテちゃん。やばかったら逃げてね」

ガブリエルとアネッテはオークに向かって走り始めた。

(できるだけ早く作戦を考えるんだ)





ガブリエルとアネッテが気をひいているとはいえ、長くはもたない。

今この時にも致命傷を負うかもしれない。

(俺の引力をどうにか上手く生かせないだろうか)

「オリオン、どうする?」





ガブリエルとアネッテはオークの攻撃を直撃は免れながら、オークが振り下ろした棍棒による衝撃や弾かれた石や土が体に当たっている。

着々と二人にダメージが入っており、限界は近い。

その時、ガブリエルの呪いの人形が発動する。

人形は巨大化してオークに襲いかかる。

「行けー!! お前の破壊力見せてやれ!!!」

しかし、ガブリエルの期待を裏切り呪いの人形はオークの一振りで呆気なく真っ二つに破壊されてしまった。

「嘘だろ」

(そんな。呪いの人形が・・・。私の不思議なスティックも効き目が薄い。オリオン。早く!)





オリオンは二人の惨状に気づいてはいたが、答えは出ない。

(このままじゃ二人がやられる。でも、俺の引力はまだ、全力を出せば二人を巻き込んじゃう。うまく、森も二人も傷つけずにオークの動きを封じる方法はないのか)




焦りだけが溢れる中、オリオンはあることを思い出す。

それは二年前、両親を殺した雷が残していった火を消した御呪いだ。

イエスタデイがやり方を教えてくれた。

精霊に力を借りる方法。




(俺達の力では足りないのなら、精霊に力を借りよう。でも、精霊は俺達に力を貸してくれるだろうか)

悩んでいる暇はない。

やるしかないとオリオンは考えた。

「レンダ! サレン!」

オリオンはレンダとサレンに御呪いの方法を教えた。

「わかった。やってみる!」

「オリオン。まかせなぁ!」

段取りを説明したオリオンは急いでガブリエルとアネッテに叫ぶ。

「二人とも! オークから離れて!」

そう言ってオリオンは両手をオークに向けた。

オリオンの言葉と仕草を見て察したガブリエルとアネッテは素早くオークから離れて木々の中に身を潜めた。

オリオンはゴブリンとの試練で身につけた五十パーセントの引力をオークに向ける。

オークはその引力に引っ張られないように抵抗する。

オリオンの方に引っ張りきれない引力。

それがオリオンの狙いだった。

オークはオリオンの引力に抵抗するので精一杯で身動きが取れない。

オークの動きを止めたのだ。

しかし、それはオリオンの体力が続く限りである。

「後は頼むレンダ、サレン」

レンダは言う。

「よし、やろう! サレン!」

「一発で決められるっしょ!!」

レンダとサレンは地面に両手を置き、御呪いを唱える。

「円環の走者 御礼 羊 庭 卵 鉛 右足 木 神話に永久を」

(どうか森の精霊達、力を貸してください!)

すると地面がモコモコモコと浮き上がったと思うと地面から木の根っこが飛び出してきた。

木の根っこはうねうねとしながら、長く太くなっていく。

「やったぁ! 成功した!」

「精霊ちゃん! ありがとー!」

地面から無数に生える根っこたちはオリオンの引力で動けないオークの元へ向かっていく。

オリオンは木の根っこがオークに絡まりつくと同時に引力を解除した。

根っこの邪魔にならないようにだ。

根っこに絡まれて身動きが出来なくなったオークは抵抗しようともがきながら呻いていたが、やがて棍棒を地面に落として大人しくなった。





様子を見ていたガブリエルとアネッテは三人の元へ走ってくる。

「すごいな今の! どうやったんだ!」

「二人とも無事? 今のは御呪いだよ」

完全に抵抗を辞めたオークの目は赤色から黒色に変わって興奮状態も落ち着いたようだった。

「それにしても、どうしてこなことに」

「さあ? そういえばテピベラは?」

五人は周りを見渡してもテピベラの姿は見当たらなかった。

すると近くの草むらがガサガサと音を立てた。

五人は音の方に振り向いた。




「アンタ達! なにしているの!?」




草むらから出て来たのはエルザ・シュウだった。

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