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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
21/72

露呈

レンダは学院の廊下中を走り回った。

教室に人がいれば、入っていった。

庭や演習場へも行った。

アネッテもレンダを見ると指さして叫んだ。

一番人が集まっているまやかしの森前広場に来た。

そこでレンダはなるべく目立つように生徒たちの間を走り回った。

その生徒の反応をサレンは一人も逃さず見た。

すると、一人だけ明らかにレンダを目で追いながらも正常でいる男の生徒を見つけた。

その男は一人木の影に隠れてこそこそレンダを監視していた。

見つけるや否やサレンは急いでその男がいる木の影に走った。






サレンは男に気付かれないようにゆっくり近寄った。

他の生徒にも気付かれてはいけないため、木々の中を歩いて来た。

しかし、それが裏目にでたのか、サレンは地面に落ちていた木の枝を踏んでしまった。

バキッと音がなる。

男は振り返り、背後にいるサレンを見て焦り、走り出す。

「まてっ!!」

サレンは人目を気にせず、男を追った。

男は集まっている生徒にぶつかりながら走っているため、あまりスピード出ていなかった。

(チャンスだぁ!!!!)

サレンは男に飛びつく。その瞬間。

レンダの「うわぁ! あああ!!」という叫ぶ声が聞こえた。

サレンは声の方を見ると。レンダの頭上にあった矢印が膨らんでいて、レンダが宙に浮かんでいた。

「うそぉ!!」

サレンは急いで男を捕まえようと、男を追いかける。

人ごみを超えた所で男の背が見える。

今度こそサレンは男に飛びついた。

「くそっ! 放せ! やめろ!」

サレンに取り押さえられた男は抵抗するが、サレンから逃れらえない。

「今すぐ魔法を解きなさい!!!」

「放せ放せ放せ」

「魔法を解かない奴は痛い目みよぉ!!!!」

サレンはヘッドロックをきめると、さすがに男は

「解いた解いたとっくに解いた」と降参した。

しかし、レンダはまだ宙に浮いたままで、まやかしの森に生えている木よりも高いところまで飛ばされている。

「ちょっとぉ!! まだ、解けてないじゃん!!」

「飛んでいる矢印までは操れない。矢印が破裂して落ちてくるのを待つしかない」

「ふざけんじゃないよぉ!!!」

そう叫ぶと学院校舎から、オリオン、ガブリエル、アネッテが出てくる。



         ◇◇◇



「どうした! サレン!」

「みんなぁ! あれを見てぇ!!」

三人は宙に浮かび風で流されるレンダの姿を見る。

「どうしてあんなことに!?」

「全部こいつのせい!! こいつの魔法だよぉ。でも、助けれないんだってぇ。落ちてくるのを待つしかないんだってぇ」

「それじゃあ、レンダが死んじゃうじゃねかぁ」

「先生を呼びに行くにも、その間に飛ばされちゃうかも・・・」というアネッテの言葉にオリオンは考える。

(俺の引力で引っ張ってこれるかな。レンダだけに照準を絞って放てばジャッカロープの時みたいに。それはきっとできる。ただ、問題は引っ張った後だ。引力が強すぎるから、きっと凄い勢いでこっちにくる。引力を抑えるタイミングを間違えれば、レンダを叩きつけてしまうことになるかも。その時は俺もただじゃ済まないだろう)

「レンダぁ!!」

そのサレンの悲痛な叫びにオリオンは考えることをやめて、決断した。

オリオンは、サレン、ガブリエル、アネッテに言う。

「俺が今からレンダを引力で引っ張るから、落ちてくるレンダを受け止めて欲しい」

その言葉にガブリエルは「でもオリオン、俺達の引力程度じゃ」

「信じてくれ」

オリオンの真剣な眼差しを見たサレンは「うん! わかった。信じる」と言った。

それを見たアネッテも「私らに任せて!!」と言って

ガブリエルは「男が闘おうって時に、協力しないわけにはいかねぇよなぁ!!」と応えた。





オリオンは風で流されていくレンダに両手を向けた。

そして、力をできるだけ、両手に込めた。

現時点でオリオンが出せる全力の引力をレンダ目掛けて放った。





引力は瞬く間にレンダに届き、レンダを広場に引き寄せる。

「・・・なんだこれ」ガブリエルが呆気に取られていると、アネッテが「レンダが来るよ!!」と言った。

オリオンはレンダが広場に来たら引力をゼロにしようと考えていた。

(レンダ、ごめん。まだ引力の制御ができないんだ)

予定通りレンダが広場まで引っ張られた頃には、レンダはまやかしの森に立ち並ぶ木々の背よりも低い位置にいた。

(今だ!! 引力解除!!)

その瞬間、レンダは力が抜けたようにフワッと宙に止まったかと思うとそのまま落下し始めた。

三人はレンダを受け止めに走った。

「うおぉぉぉぉ!!!!」

砂埃がたち、三人の影しか見えない。

風が吹いて砂を運んでいった。

三人の姿がはっきりと見えた。

三人の腕の上には恥ずかしそうに笑うレンダがいた。



         ◇◇◇



オリオンの一連の行いを影で見ている者がいた。

クリファ・コールだ。

生徒達が騒がしくしているのを聞きつけてやって来ていた。

クリファは、学院教師の中でオリオンの引力を唯一目撃したのだった。

クリファは思う。

(オリオンは怪物級になる)

しかし、今考えるべきことはそれではなかった。

オリオンが放った制御されない引力は、友人を助けただけに留まらなかった。

レンダを引っ張ると共に、まやかしの森の木々に風穴を開けてしまったのだ。

これはおそらく、職員会議で議題にあがることは免れないであろう。

オリオン達の元に別の教師がやって来て、問題を深刻化させないために、クリファはオリオン達の元へと向かった。



         ◇◇◇



学院四年メタリオスの生徒である、ルーホウの魔法『目立ちたがり屋』の能力は、魔法をかけたい対象が最低でも五人の人間に同時に見られているところをルーホウの視界に入ると発動条件を満たす。

対象は『ターゲット』となり、常に頭の上に矢印がつく。

矢印がついている間は、常に他人がいるところでは他人に「ターゲット発見!!」と言われて指をさされる。

一度だけ、矢印は膨らんでターゲットを気球のように空に飛ばすことが出来る。

その間、外にいてターゲットを視認できる人は常にターゲットを指さし「ターゲット発見!!」と言う。

ただし、矢印はある程度まで大きくなると破裂する。


学院四年メタリオスの生徒である、イーシャの魔法『どん! どん!! どん!!! 酔っちゃってぇ!!!!』の能力は、あらゆる生き物や物を実際の大きさよりもを大きく見せる。あくまで幻覚であるため、触ると気付かれてしまう。幻覚を見せる対象を目視したことがあれば、近くにいる時に発動できる。

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