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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
19/72

研究室

「このへんかな? シン先生の研究室」

オリオンたち五人は、シン・アガードに相談をするために研究室へ会いに来ていた。

「あっ、ほらほらあったよ。シン先生の名前が書いてある」

アネッテがシンの名前が書かれたドアを見つける。

「じゃあ、ノックするね」とオリオンが言って、ノックをしようとした時、ドアが勝手に開く。

五人が驚いてドアの向こうを見ていると、中から一人の生徒が出て来た。

背はオリオンより高いガブリエルと同じくらいで、如何にも好青年といった顔立ちと姿勢の良い男の子だった。

すると、ドアの前にいた五人に気が付いたようで「失礼。ドア、ぶつからなかったですか?」と言った。

「大丈夫です」とオリオンは返した。

するとその男の子は「シン先生に会いに来たんですか?」と聞いた。

「うん。相談したいことがあって」

「そうなんだ! ボクも授業のことで質問があって来たんだ!」

「へぇ。引力とか?」

「そう! 引力って奥が深いからね」

「はは。難しいよね引力って。特に力加減が」

というオリオンの言葉に男の子は身を乗り出して「そう! 引力ってホント力加減がさぁ! 力んだところで出力が上がるわけでもないしさ! 気難しい奴だよ引力って」と言ったところで我に返る。

「ごめんごめん。立ち話している場合じゃないね。君たちもシン先生に相談があるんだったよね」

「いや大丈夫だよ。また、時間がある時に」とオリオンが言うと、男の子は目を光らせて「ぜひぜひ」と言った。

「ボクの名前はライト・ランプルー。よろしく」

「俺はオリオン・ハナムレー。こちらこそよろしく」

自己紹介を終えて、ライトは去っていった。

ガブリエルは「なんだったんだ。あいつ」と言ったが、オリオンはライトと仲良くなれそうな気がした。



         ◇◇◇



五人はシンに許可を取って研究室に入った。

研究室と言っても、実験室などではなく狭い部屋に机と椅子と本がぎっしり入った本棚があるだけだった。

「いやぁ、メタリオスの生徒だね。早速来てくれたんだ」

アネッテが「お邪魔じゃなかったですか」と聞いたが、シンは「寧ろ、生徒との関りが薄いから、うれしいよ」と言った。






「それで、今日はどうしたんだい? まさか、魔法人体学に興味を持ってくれたのかい?」

「違うんです。二つ相談がありまして」とアネッテは言った。

「ほう相談。困っていることがあれば、なんでも言ってくれ」

「ありがとうございます。実は最近、上級生から魔法の攻撃を受けていまして、何か知っていることはありませんか?」

「上級生からの攻撃か。ふむふむ。それは直接魔法をかけてくるのかな?」

「はい。明らかにメタリオスの生徒を狙って、怪我をする程の攻撃です」

「あー。そんな直接的になったのかぁ」とシンが何かを察したようで眉をひそめる。

「何か知っているんですか!?」

「毎年あるんだ。新入生を狙った魔法の試し打ちが」

「なんですか!! それ!!」

「四年生になると、生徒各々の魔法にオリジナリティが出て来て、その魔法の威力や効力を試して改良するんだ。その試験打ちのターゲットに新入生が選ばれる」

「はぁ? ふざけんなよ! 学院の教師たちは見ているだけなんですか!?」とガブリエルは激昂する。

「いや。もちろん禁止しているさ。元々は影でこそこそやるもので、教師どころか、かけられた生徒本人すら気付かないようにやっていたんだ」

「なんで今年はこんな直接的なんですか?」

「わからない。目立ちたがり屋なのかな。まあ、いずれにしろ直ぐに終わるよ」

「なぜですか?」

「生徒の数もそんな多くないし。それだけ派手にやっていたら、さすがに教師が気付き始めるだろうし。ワタシからも知らせておくよ。安心してくれ」

「そうですか。ありがとうございます」

「ごめんね。こんなことしか言えなくて」

「いえ、十分です」






「それで二つ目は?」

「はい」とレンダが言って、ウロボロスの絵が描かれた羊皮紙を机の上に置いた。

「・・・これはなんだい?」

「シン先生はこれがなんなのか知りませんか?」

「うーん。初めて見たなぁ。ちょっと古いね。この絵はウロボロスだね」

「はい。それで」と言ってレンダは三つの言葉とガブリエルが言っていた仮説についても説明する。

「ウロボロスが地下に・・・か」

「どう思いますか?」

「学院の地下に普段は教師すら入れない空間があるのは知っているよ。でも、そこにウロボロスが封印されているかはわからない。それにこの紙を見るに二十年以上昔のものだよね。ワタシは十年ここにいるけど見たことないなぁ。もちろんウロボロスの話も聞いたことがない」

「ちなみに、なぜ地下に教師すらも入れないんでしょう」

「詳しくは知らないけれど、昔地下で生徒を巻き込んだ事件があったんだって。元から生徒の地下への出入りは禁止だったんだけど、教師は入れたみたいだよ。結局、その事件がきっかけで教師すらも立ち入り禁止になったんだとか」

レンダは言う。

「・・・あの。その地下への行き方知っていますか?」

「えっ!? なんでそんなこと知りたいの?」

それにはオリオンも同感である。

わざわざ立ち入り禁止のエリアに入っていく理由はない。

確かに、ウロボロスの紙について興味を持ってシンの元へと来たが、ルールを破ってまで、追い求める目的はない。

レンダは応える。

「仮に怪物が地下にいたとして、封印をする術があるなら解くこともできるはず」

「解いてどうするんだい?」

「単純に人を殺せる装置に興味があるだけです。だって、僕らは兵士で戦争中でしょ」






レンダの言葉にオリオンはあることを思い出した。

それは属性の授業の時だ。

マナの発生源の話でレンダはクリファに質問をした。

「体内の水からはマナが発生するのか」と。そして、議論は体内の水を操れるのかということにも飛んだ。

あの時は気にしていなかったが、なぜ体内の水をコントロールしたいのか。

今はそこにオリオンは疑問を感じる。

そして、オリオンは思う。

体内の水を操ることが出来れば、簡単に人を殺せるのではないか。

レンダはそう考えたのだろう。

簡単に早く人を殺せる。

それは、敵を早く殺して戦争を終わらせようということなのか。

しかし、レンダがそんな残酷なことを考えているとは思えなかった。

オリオンはレンダの真意を考えるが結論はでなかった。






「何いってんだよレンダ! そんなもん必要ないだろ!!」とガブリエルが興奮して言う一方で、シンは冷静に応えた。

「なるほど。でも、怪物の軍事利用は危険だよ。百パーセントコントロールできないだろうからね」

「そうですね。確かに。倫理的にも適切じゃないです」

「うん。そうだね。アナタ達はまだ、十二歳だ。焦る必要はない。ゆっくり成長していこう」

「はい!」

そうして、五人はお礼を言って研究室から出ようとすると、シンが小声で言う。

「もし地下空間を探すなら深夜の四時から四時三十分の間が狙い目だよ。あの時間は職員室付近に見回りいないから。それと、職員室に入るんなら一番左側の窓が良い。あそこだけ、防犯の魔法のかかりが弱いから」

そう言ってドアが閉まり、鍵がかかった。

「えっ!? 今シン先生ヒントくれなかった?」

「今の発言通りなら、地下空間への入り口は職員室にあるってことだよね」

「おいおい。知ってんじゃねぇかよ! シン先生!」

「それにしても詳しすぎぃじゃない????」

「まあ、教師だし職員室のことや防犯のこと知っていてもおかしくないんじゃないかな」

「そっかぁ!!!!!!!」

「それを生徒に教えていいのかな・・・」とアネッテが言うと「いいじゃん!!!!」とサレンは言った。

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