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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
18/72

引力

教室にクリファが入って来た。

クリファの隣には見知らぬ男が立っていた。

髪は長く、肩を超えるぐらいあった。

クリファは生徒が全員いることを確認し、言う。

「さて、昨日は演習を交え、属性について学んでもらいました。マナというものは引力によって操作するものだと知っていただけたかと思います。今日はその引力について詳しく学んでいただきます」



(引力操作を覚えれば、魔法を使えるのかな)



「本日の授業では、私ではなく別の先生に来ていただきました」

そう言ってクリファは隣にいる男を教卓の前に立たせた。

「みなさん、こんにちわ。シン・アガードといいます」

シンの声は優しく、教室の緊張感に満ちた空気を少し和らげた。

クリファはシンの紹介をする。

「シン先生は魔法人体学と言って魔法と人体の関係性を研究しておられます」





「紹介された通りワタシは魔法人体学の研究をしているため、必ず一年生に一時間引力の授業をするんだ。魔法人体学ってなんだ? と思うかもしれないれど、この学問があったから引力と魔法の関係性が発見され、今日の魔法の基礎が築かれたんだね」

とシンの自己紹介を終えたところでクリファは授業をシンに託す。

「それではシン先生お願いします」





「はい。それじゃあ、授業に入っていこうか。今まで引力操作は引っ張ることだけだったと思うけれど、今日は少し踏み込んでみようか。実は引力操作は大きく分けて四つあるんだ」



シンは黒板に文字を書き始める。



「まず一つ目は、

『引っ張る』これはみんなできるね。主に魔法使いはマナを引力で引っ張ってきて、そのマナを『留保』で魔力にしてから魔法を作り出すんだ。

二つ目は、

『留保』これは引力で引っ張ている物をその場で留める操作だ。マナを引っ張って終わりじゃない。その後の行動に引き継ぐために留めておく必要があるんだね。

三つ目は、

『反発』これは通常、引力は自分の方へ引っ張るものだけど、逆に引力で引っ張っている物を自分から遠ざける操作です。大抵の人は極々小さな反発しか起こせないけれど、その大小で魔法使いとしての才能を測れるわけではないです。小さくても気にしないでください。

そして最後四つ目は、

『拡張』これは、引力で引っ張ってきたマナを『引っ張る』『留保』『反発』を使って目的にあった形や性質に組み上げる操作です。

これら四つを『四原引』と言うんだ」




(うん『留保』まではわかる。でも『反発』ってなんだよ。俺が知っている引力じゃねぇ。まぁ、引力のこともそんな知らないけど・・・)




「引力の力は質量で決まっていて鍛えて強くなるものではない。しかし、引力の操作技術次第で引っ張る能力は上げられるんだ」




ここで例のごとくレンダが挙手する。

「物も引力を放っています。それならば、僕達の引力では引っ張り合いに負けるのではないでしょうか?」

するとシンは「いい質問だ」と言って応える。

「しかし、その考えから直さなければいけませんね。通常引力で物を引っ張る時、ワタシ達は引っ張り合いをしているわけではありません。例えばワタシがロープを持っているとします」と言ってレンダを指さす「アナタもロープを持っています。引力とはすなわち、ワタシのロープとアナタのロープを結んで一本のロープのようにするということです」




そして、シンは真剣な顔で続ける。

「強い引力を持っていれば、強い引力を持った魔法使いとの引き合いは実際にあります。しかし、ワタシやクリファ先生も含めてそのような場面に出会うことはほとんどないでしょう。なぜなら、そこでは引力の技術よりも引力の圧倒的な強さが必要になるからです。それができる圧倒的な引力を持つ魔法使いは、大賢者レベルでしょう」




シンによる引力の授業は、自分たちが持つ引力のちっぽけさを知ったところで終わりを迎えた。

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