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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
14/72

獣の刻印

「それでは、演習に移ります。五人のグループを作ってください」

オリオンは真っ先に、ガブリエルとアネッテと組むことにした。

三人が残りの二人を探していると、オリオンは話しかけられる。

「オリオン君だっけ?」

オリオンは声がする方へ振り向くとそこにはちょうど二人の生徒が立っていた。




一人は、座学中に二度質問をしていた男の子だった。

もう一人は、見覚えのある女の子だった。

男の子は「僕は、レンダ・サコリ。一緒に組まない?」

続いて隣にいた褐色肌で明るい茶髪の女の子が言う。

「アタシは、サレン・ダーツ! まあ、仲良くしてやってよ!」




二人の誘いにオリオンが応えようとすると、ガブリエルが「お! いいね! ちょうど二人探してたんよぉ!」と言って話に入ってくる。

それにサレンが「っしょ! アタシらジャストタイミングっしょ! 」と言ってガブリエルとハイタッチをした。

「俺! ガブリエル! よろしく!」

「私はアネッテ。よろしく」

「こちらこそ、よろしく」

「仲良くしていこうじゃん!」



オリオンはレンダに言う。

「なんで、俺の名前知ってたの?」

「う~ん。それは授業が終わったら話すよ」

「そう。とりあえずよろしく」



グループが決まり、クリファが演習の準備に入る。

「それではグループに一つ、マメガキの苗木を配ります」

苗木が配られ、生徒達はこれと魔法がどう関係しているのかとそれぞれ考察を口にしている。




「苗木ってことは木属性の魔法かな?」

とオリオンが言うと「てっきり、マナを集める練習でもするんだと思っていたよ」とレンダが返す。

「でも引力でマナ集めるって、ぶっちゃけどうやってやるのかわかんなくない?」

「気合だろ!! なんてったって引力はパワーだからな!!」

「なにそれ~意味わかんなぁ~」

「私、そもそも引力操作苦手だしなぁ」

「あっ、それわかる~。アネッテちゃんとの共通点みぃっけ!」

「サレンちゃんて元気だね」

「アゲアゲでいこうよ!!」

アネッテへの言葉にガブリエルが反応する。

「おっ!! いいね!! アゲアゲェ~」



オリオンは真面目に魔法の話をしていたはずが、逸脱してレンダと顔を合わせる。

しかし、どちらも顔は笑っていた。

(にぎやかだなぁ)



すると突然、サレンが空に何かを見つける。

「あれ何!?」

その声に生徒はみんな、空を見上げる。


そこには、雲が広がる空へ向かって空中を歩いて登る学院の生徒と教師がいた。


(なんで!? なんで何もないところを!? あれも魔法?)


驚きを隠せない生徒たちにクリファは口を開く。

「あれは光の階段。皆さんには見えていないでしょうが、彼らは光属性の魔法で作られた階段を上っているのです。上っているのはタレッドの一年生とその担任教師であるエルザ・シュウです」



(タレッド! レベルが一番上のクラスだ!)



「光の階段は、光属性の魔法を扱える者にしか見えませんし、触れることもできません。五大基礎に数えられる光と闇は、実際には会得することは難しいです」



(それなのに・・・一年生のあの人達は・・・)

驚いているオリオンの隣で、またもレンダが挙手をして質問の許可を求める。

「タレッドクラスの生徒たちはどうして光の階段を上っているのでしょうか」

「東の魔王。つまり、国王が主催するお茶会に招待されたためです。彼らの実力が評価され、国王に謁見が許可されたのです」



オリオンは、自分の上を歩くタレッドの生徒たちを見上げる。

タレッドの生徒たちは、誰もが気品に溢れ、その顔には自信がみなぎっている。

オリオンは思い知った。地に足をつけている自分と天へと上っていく同級生とのレベルの差を。



暫くして、安全性を考慮して階段を上る生徒たちの姿が光の魔法によって見えなくなった。



       ◇◇◇



演習中であるはずの演習場に静寂が流れる。

上位クラスのレベルを知り、呆気にとられる生徒たち。

しかし、それをクリファがうち壊す。

「アナタ達。何をぼうっとしているの? 今は授業中です。勝手に休んではいけません」

生徒たちにピリッとした空気が流れる。




クリファは演習の説明を始めた。

「いきなりアナタ達にマナを集めて魔法を使えと言っても大したことはできないでしょう。まず、魔法を使ったという実感を覚えていただきます。今から皆さんにこのマメガキの苗木を成長させてもらいます。五人で手を繋ぎ円を作って苗木を囲んでください」




オリオン達は手を繋いで苗木を囲む。

「がんばろうぜぇ! お前ら!」

「一番デカい木にしよう!」

「うん!」

「さんせーい! 魔法とかマジテンションあがるぅ!」

「サレン。真面目にやるんだよ」




「手を繋いだら目を閉じて、引力を感じてください。本当に出そうとしなくていいです。この世のものは皆、引力を放っています。苗木から放たれる引力、繋いだ手から伝わる引力。それらを感じてください」



(・・・引力を感じる)



「苗木が持つ引力を利用して魔法を使います。繋いだ手から引力を感じたら、それを片方の繋いだ手へ移してください」



(!? アネッテの手から『何か』が俺に流れてきている!!)



「コツは円環を意識することです。魔法は円環です。片方の手からエネルギーを貰いもう片方の手でエネルギーを送ってください。感じてください、風を葉っぱや土の匂い、そして、苗木の引力を。引力は繋がり。繋がって相手と影響しあうのです」



(みんなで作った円を『何か』が回っている)



「さあ、みなさん。苗木へ力を渡してあげてください」



五人は示し合わせずとも、ベストなタイミングを感じ取っていた。

(今だ!!)



五人は同時に目を開けて目の前の苗木を見た。

それは苗木とは程遠いほどに成長を遂げていた。

「・・・大樹だ」

小さな苗木だったものが太く大きな木になっていて強大な存在感を放っていた。



こんなにも魔法の効果は絶大なのかとオリオンは他のグループの結果を見た。

どのグループも苗木の背が少し伸びたくらいで、木になっているグループは一つもなかった。

それに驚いていると、クリファが呆気にとられているのに気が付く。



         ◇◇◇



想定を超えた結果を残したグループにクリファは狼狽えた。

こんなことができる生徒がメタリオスにいるはずがないと。

タレッドの生徒ですら、単独はおろか、グループですらここまで大きくできない。

そのレベルだった。

(どうして?)

クリファは思わぬ結果にはしゃいでいる五人を観察する。

(考えられるのは、木のマナを引っ張るのがとんでもなく得意な生徒がいる。または、強大な引力を持つ者がいる)

考えるが、先日の授業をふまえてもそんな生徒は見当がつかなかった。




考えても答えはでない。

これからの授業の中で答えを見つければいい。そう決定づけようとした時だった。

クリファは、背筋が凍る思いをした。

なぜなら、クリファは見えてしまったのだ。






オリオン、アネッテ、ガブリエル、サレン、レンダ








五人の首に押された『獣の刻印』を。


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