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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
11/72

魔物

遅刻をしてはいけない。

そう叩き込まれたオリオンとガブリエルは、時間に余裕があるにも関わらず、走って演習場へ向かっていた。

入学式の翌日で本格的な授業が始まるのだ。

寮から一緒の二人は昨日と同じ演習場へ向かっていた。

「今日は属性の授業だってよ」

「何するんだろうね」

そう言うオリオンを見てガブリエルはあることに気づく。

「あれ? オリオン。お前教科書は?」

「えっ! 演習って教科書いるっけ?」

「昨日、クリファ先生が言ってただろ」

「やばい! 俺、寮に取りに行って来る! ガブリエルは先行ってて!」

「おう! 遅刻すんなよ!」

オリオンは一人、来た道を走って戻り始めた。



         ◇◇◇



教科書は直ぐに見つかった。

オリオンは寮を出て、急いで演習場へと向かう。

時間に余裕があるとはいえ、ゆっくりしてはいられない。

寮のドアを開けて、急いで出ると、危うく他の生徒にぶつかりそうになった。

(あっぶねぇ。この前やらかしたばっかだからなぁ。気をつけないと!)

そう思い、演習場に向かって再び走り出そうとしたオリオンの背中を誰かが撫でる。

オリオンは驚いて振り向くが、そこにはもう誰もいなかった。

気にしていても仕方ないとオリオンは走り始めた。





周りに気をつけながら走っていたオリオンだったが、何かに躓いて思いっきり転ぶ。

「ぶべべべべべ」

オリオンは「いってぇ~」と言いながら立ち上がって何に躓いたのか確認すると、躓いた場所には何もなかった。

しかし、オリオンの足下にジャッカロープが三匹、呑気に自分の体を舐めていた。

(うわっ! 魔物だ)

うさぎに角が生えている、その生物をオリオンは初めて見た。

(まぁ、魔法学院だし、魔物くらいいるか)

「ごめんな。ぶつかっちゃって」

そう言って、オリオンは再び走り出した。





演習場に続く廊下を走るオリオンは「このままなら間に合う」と安堵していた。

最悪の事態は免れると。

(えーと。次の角を曲がって)

オリオンが曲がり角で少しスピードを落とした瞬間、あることに気づく。

後ろの方からドドドドッ!! と音がするのだ。

(なんだ、この音!)

振り返るとジャッカロープがオリオンの背後を走っていた。

しかし、オリオンは戸惑う。

それは、あの呑気な姿を愛でてはいられない程のジャッカロープの大群が廊下を飲み込むようにオリオン目掛けて激走していたからだ。

隙間がないくらいに密集したジャッカロープの大群。

(なんであんなに増えているんだ)





オリオンはジャッカロープの大群に巻き込まれないように、角を曲がったところでスピードを上げる。

(このまま演習場へ向かおう。先生がいるはずだ)

そう考え、トップスピードにはいろうとするが、上手くスピードがでない。

理由はすぐにわかった。

ジャッカロープは大群の中にしかしないわけではなかった。

オリオンの足元には数匹のジャッカロープがいて、オリオンの足にしがみついているのもいた。

そのジャッカロープも少しずつではあるが、増え続けている。

(なんで!?)

ジャッカロープはオリオンの足をよじ登り始めた。

オリオンは追い払おうと、足を強く振りながら走るが、しつこくしがみついてくる。

(少し重いなぁ)

背後からは大群が迫って来る。

(もういいこのまま逃げよう)

スピードは落ちるが、走ることに専念することで振り切ろうとした。

しかし、その考え通りにはいきそうではなかった。

(やっぱり、スピードがでないと・・・)

オリオンと大群との距離は段々と縮まってきている。

(引き離す方法はないのか)

大群は直ぐ後ろまで来ている。

(まずいまずい!)

ジャッカロープの大群は波のように、オリオンに覆いかぶさる。

オリオンはジャッカロープに流されながらなんとかあがこうとするも、何もできず、そのまま大群の背に乗せられた。

その間もジャッカロープの激走は続いている。





大群は方向転換をして演習場とは逆の方へオリオンを運んでいく。

(駄目だ! そっちは!)

オリオンはかなりのスピードで演習場から遠ざかっていく。

「ちょっと! 本当に! 俺は演習場へ行きたいんだって! 邪魔しないでくれ!」

幸いなことに、この廊下は広くない。

オリオンは曲がり角で壁の角に掴まり、ジャッカロープが走り去るまでなんとか角にしがみつく。

やっとのことでジャッカロープの背から降りる。

(よし! このままどこかに隠れるぞ)

オリオンはジャッカロープが再び現れ、追いかけてくることを想定して、大群から距離を取った後、どこかの部屋へ隠れようと考えた。

オリオンはなるべく音をたてないように歩いて遠ざかる大群から逃げた。

その途中に小教室を発見して入って様子を見た。

(ふぅ。ドアが開かないようにしよう)

ドアの前に教室内にあった机や椅子などを置いてドアが開かなようにした。

廊下の方の壁に耳をあてて、外の様子を音で探る。

すると、ドドドドドドッ! という音が再びし始めた。

(戻って来た?)

ジャッカロープの大群が激走する足音は、段々オリオンのいる教室に近付いて来ていた。

(来る・・・!!)

オリオンの予想では、教室の前で止まるか、ドアに体当たりをするかだったが大群は予想に反して教室の前を通り過ぎていった。

(よかった。これで演習場へ行ける)



オリオンはドアの前に置いた机や椅子を元の場所に戻し始めた。

まだ、間に合う。全力で走れば。そう思った直後、オリオンは思わず息をのんだ。



足元にジャッカロープがいたのだ。

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