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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
10/72

演習

十分後、演習場にメタリオスの生徒達が全員集まっていた。

「それでは、演習を始めます」

演習というのはマメガキの木の実を引力によって引っ張るという内容だった。




実際に生徒がどの程度引力を現時点で操れるのかを見るための演習だ。

演習場付近の森に生えているマメガキの木の実を自分のもとへどの程度引っ張ってこられるか。

一番手は積極的に挙手して前へ出てきたガブリエルが行うことになった。

オリオンには、遅刻の失敗を取り戻そうと「自分はここにいるぞ」とアピールしているように見えた。




ガブリエルは、定位置に立って、両手を十メートルくらい離れたマメガキに向けた。

すると、マメガキの実は揺れだし、実の底の部分がガブリエルの方に向いた。

「うわぉぉぉぉぉ!!」

ガブリエルのその雄叫びと同時に、実は枝から離れ、ガブリエルの方に向かっていく。

しかし、ガブリエルに限界がおとずれ、実は木とガブリエルとのちょうど真ん中に落ちて止まってしまった。

それを見た生徒からはガブリエルを讃える声が溢れた。

得意げな顔のガブリエルは「やっぱ引力こそパワーなのよ!」と言った。




次々と生徒達がガブリエルの後に続く。

アネッテの番が回ってきた。

(緊張するなぁ)

アネッテは定位置から手を木に向ける。

木の実が揺れ始めた。

(とれろとれろぉ)

しかし、アネッテの頑張りも虚しく、木の実の底が少しこちらに向いた程度だった。

それを順番を待っていたオリオンが見ていた。

(うおっ! 動いた。すげぇなぁ。俺もあれぐらいはやりたいなぁ)

「オリオン・ハナムレー。定位置へ」

(き、きた)

オリオンも定位置に立った。

木の実に手を向ける。

唾を飲み。

(よ、よし。やろう。きっとできる)

腕に力を入れて、引力を解き放とうしたその時。



「制御できるまで、人前で引力を使ってはいけないよ」



二年前のイエスタデイの言葉が頭の中に流れた。


そして思い出す。あの日からの祖父との日々を。

キラノト村での最後の修行後、祖父はオリオンに言った。

「まだまだ練習が必要だな。この状態で学院に送り出すのは心苦しいがワシには何もできない。無力なワシを許してくれ」

「大丈夫。なんとかするさ」

「しかし、イエスタデイさんとの約束は忘れるなよ」



         ◇◇◇



オリオンの手がぴくッと動く。

定位置から出した手のひらは、マメガキの木に向いている。

すると風が吹いて木の実が揺れた。

「よろしい。次の人」

(えっ?)

ただ、風が吹いて揺れただけ。

オリオンにはそれがわかっていた。

しかし、引力を使わずに終えれたことに安堵していた。




オリオンは、二年前から引力を制御するために努力をしてきた。

だが、二年経った今も、引力をコントロールすることはできていない。

学院の入学試験では当然、引力を試される。

全力を発揮できない中で、偶然にも試験をパスすることができた。

試験の結果は、最低限であったが、学院に入ることができれば、それでよかった。




オリオンは定位置から退いて、演習場の隅っこに座った。

これで良いのだろうか。

まだ入学日だとはいえ、他の生徒は皆、引力をコントロールしていた。

自分にこの学院にいる資格はあるのだろうか。




そう考え込むオリオンの肩に誰かが手を置いた。

オリオンは顔を上げるとそこにはガブリエルがいた。

「よっ」

「ガブリエル」

「これからっしょ!」

凄く軽い言葉だな。と思ったオリオンだったが、ガブリエルの心遣いに悪い気はしなかった。

オリオンは自然と笑顔になった。



そんな二人のもとへアネッテもやって来る。

「私も引力苦手だからなぁー。上手だよねガブリエル」

「まっ才能!」とガブリエルは言って「はっははは」と鼻を伸ばした。



         ◇◇◇



明かりが灯っていない暗い部屋に黒い服の女がいた。

女の前には五人の生徒が跪いていて、女は五人の生徒に見下すような視線を向けた。

女は言う。

「よいですか。いくら未熟な相手とはいえ、殺してはいけませんよ。あくまでこれは教育なのですから」

その言葉に五人の生徒は、それ以外の発言を許されていないかのように、ただ「はい! エルザ先生!」とだけ返事をした。

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