刀と鏡
刀と鏡
どちらの生き方が良いのだろうか?
これは中々に難しい問いだろう
刀は
己を研ぎ鍛え上げ
磨かれた鉄と炎の身体で
己の深部を追及をしていく
男としてはこの上なく憧れる生きざまだ
だが
そこには空しさが表裏一体としてある
たどり行く先は誰とも分かち合うことない
孤独の果てない戦場
それはあまりに背負うことのできない虚空だ
なら鏡はどうだろう?
鏡は写す
忠実に
ある成功した生き方をなぞるように
完璧に真似ることができる
失敗も不安もない
ただ成功する生き方を何度何度も写しとり覚えれば良い
必要であれば幾つもに重ねて
必要であれば何十通りの答を捲って
けれど所詮
写してばかりの真似事
本当の意味するところが分かっていない愚行だ
これもまた虚しい
────ワタシは結局あの日から
出された問題の解答を得られずに歳を食うばかりでいる──────




