38.飛び降りればいいじゃない
コツコツと足音が響く。
螺旋階段を降り続けて暫くの時間が経過したが、最下層はまだ見えてこない。
終わりの見ない闇がそこにはあった。
グラズは必死に階段を降りているが、時折足を滑らせて悲鳴を上げていた。
もちろん、彼を死なすつもりはない。
落ちそうになったら、魔法でなんとかする算段もあるが、それを彼に伝える必要はないと思い、私は無言で前を歩いた。
「ノクタリア様……あと、どのくらいですか?」
「もう少しよ」
「そう、ですか……」
本日十度目となる会話。
もう少しの定義が危うくなるくらいに、私は適当なことを口走った。
長い道のり。
明確な終わりがまだまだ先であると伝えてしまえば、彼の気分が落ちてしまう。
だからこそ、残りどれくらいなのかを明言しない。
「あの……ノクタリア様は、この階段を毎回昇り降りしているのですか?」
「そうね……毎回、ここを通っているわ」
ここで一つ私は嘘を吐いた。
普段、階段の昇り降りを……私はしていない。
階段を一段一段降りていくのは、それなりに時間がかかる。
それを自覚しているからこそ、そんな周りくどいことをしていない。
──そして本来は、この暗闇に向かって、飛び降りている。
物凄いスピードが出るし、それが最も効率的。
しかしながら、今回はグラズがいる。
いきなり、この暗闇に彼を突き落とすというのは、可哀想に思えたので、今回は敢えての階段降りを選択した。
──それにしても、本当に長いわね。この階段。
降りれど、降りれど、終わる気配がない。
グラズも恐怖心以上に疲れが溜まってきたようだ。
息が上がっている。
「……グラズ、早く降り切りたいという気持ちはあるかしら?」
彼は、私が何を意図しているのか理解していないようだった。
「急にどうしたのですか?」
「いいから答えて」
「……早く下まで降りたいって気持ちはあります。階段を降り始めてから、ずっと怖いですし」
その答えを受けて、私は決断した。
「そう分かったわ」
「あの、何が分かっ……⁉︎」
私は数段上に戻り、グラズを担ぎ上げる。
「ちょっ……! ノクタリア様、何を……!」
「早く降りたいのでしょう。最も効率的な降り方をするわ」
「ちょっと、待ってください。何をしようとしているんですか?」
私はそのまま、下を覗く。
そして一歩、階段のない場所へと近付いた。
そこまでして、グラズはやっと理解したのだろう。
私が今から、階段を介せずに下に降りるつもりであると。
グラズは息を荒くする。
呼吸が早い。
「待ってください……心の準備が!」
「心の準備は必要ないわ。死なないから、安心なさい」
「いや、そういう問題……じゃ……?」
グラズは、途中で言葉を紡ぐのをやめていた。
心臓が浮き上がるような浮遊感。
──これで、早く降りられる。
気を遣っているのが馬鹿らしい。
彼は、早く下に降りたがっていた。
だから最初っから、
──飛び降りていれば、よかったわ。
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