27.悪徳領主への制裁完了
バレオンのこれまでしてきた行いは、決して許されることはない。
だから私は、犯してきた罪と類似した苦しみを、この男に与えてやろうと思った。
「ノクタリア、振込はお前の口座にすればいいのか?」
「いいえ。私の優秀なブローカーの口座に半分を、もう半分は……現物で欲しいわ」
「そうか。用意するから、ちょっと待ってくれな!」
ケイは、バレオンの足を引き摺りながら、彼と馬車へ乗り込んだ。
バレオンには、犯罪奴隷としての生活がこれから待っている。
貴族だから優遇されるとかもない。
何故なら、彼は恐らく……他国で労役を課されるからだ。
──もう、この国には帰ってこれないでしょうね。
バレオンを人生のドン底に突き落とした。
その自覚はあるものの、霧のように心に張ったモヤモヤが消えることはなかった。
ケイは、少しして、大量の金貨が入った麻袋を私に渡してきた。
「これで半分。確かに渡したぞ。残り半分は、言われた通り、お前の協力者の方に振り込んでおく」
「ありがとう。助かるわ」
手元にある金貨の重みを感じながら、私は深く息を吐く。
「浮かない顔だな」
「そうね。少なくとも、楽しい気分ではないわ」
「一人の人間を奴隷落ちにさせた罪悪感でも?」
「それは全くないわね……もっと別のことを考えていたわ」
誰彼構わず手を差し伸べるつもりはなかった。
だから、グラズの息子が死んでしまったという事実は、私の人生にとって影響するものではないはずなのだ。
にも関わらず、心が軋むような感覚が残っていた。
「……その男、労働ができなくなったら、バラして売ってもらっても構わないわよ」
だからこそ、鬱憤を晴らすかのように私は、冷たい声でケイに、そう伝えた。
ケイは、ブルリと身震いを挟んでから、耳元で囁く。
「そういえば、最近王国奴隷商の名誉代表が行方不明になったって聞いたけど……あれって、ノクタリアがやったのか?」
何を察したのやら。
鋭く言い当ててくることに感心すらしてしまう。
「……そうだけど、よく分かったわね」
ケイは「やっぱり」と言葉を漏らし、すぐに猫撫で声で話してくる。
「俺のことは、殺さんでくれよ?」
ああ、怯えていたのか。
全然気付かなかった。
ケイに対して、不満があったから不機嫌なわけじゃない。
単純に、バレオンの行ってきた悪事を許しきれていないだけだ。
「心配しなくても、貴方がまともに生きている間は、殺したりすることはないわ。だから……私に殺させるようなことは、くれぐれもしないことね」
「はは、肝に銘じておく」
全然楽しそうではなかったが、ケイは無理やり笑っていた。
そうして彼は、バレオンを乗せた馬車を走らせる。
行き先は……セイント王国の外にある国々だ。
段々と小さくなっていく馬車を眺めながら、私は踵を返した。
踏み締めた砂利の感触を認識しながら、乗ってきたみすぼらしい馬車へと戻る。
日は既に落ちていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【読者の皆様に大事なお願い】
この下にあるポイント評価欄【☆☆☆☆☆】から、1人10ポイントまで応援することができます。(★1つで2ポイント、★★★★★で10ポイント!)
少しでも、
『面白いかも!』『続きを早く読みたい!』『陰ながら応援してるよ!』『頑張れっ!』
と思われた方は、下のポイント評価から評価をお願いします。
今後も『更新』を続ける『大きな励み』になりますので、どうか何卒よろしくお願いいたします。
加えてブックマークの登録も、お願い致します!
ブックマークと★★★★★評価を下の方でして頂けると今後の励みになります!
明日も頑張って更新します!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
↓広告の下あたりにポイント評価欄があります!↓




