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23.元神級聖女の名





「ほら、仕事に戻れ!」


 使用人の男に声を荒げるバレオン。

 彼は、深々と頭を下げ、部屋の扉を閉めた。

 しかしながら、私としては、大きな収穫だった。

 

 ──見つけた。


「彼は、優しいのですね」


「いやいや、仕事もろくにできない男です。ああして、余計なことを考えるくらい、集中力もありませんし」


「そうでしたか。バレオン様も苦労なさっているのですね」


「はは、それほどでもないですがな!」


 バレオンの馬鹿笑いを見ながら、私は思考を研ぎ澄ましていた。

 使用人の男……あれは、育てれば、優秀なブローカーになれる。

 人のことを思いやれる人材は、私にしてみれば喉から手が出るくらいに欲しい人材。

 屑貴族とは対照的に、人の心に寄り添おうとする姿勢がある人間は、教育すれば、優れた人身把握の力を手にすることができる。


 そう考えつつも、目先のバレオンに制裁を下すため、私は彼に上目遣いで問いかける。


「バレオン様……その、先程のお話の続きを……」


「ああ、そうだったな……へへっ」


 下賎な舌舐めずりをするバレオンは、私の肩に手を添えた。


「ここでは、ああいう使用人の邪魔が入る。どうだろう? 奥の部屋でゆっくりと話す気はないか?」


「はい。是非……!」


 促されるまま、部屋の奥にある扉を開いた。

 今度はしっかりとした鍵付きの部屋。

 内側から鍵を掛ければ、外からは開けられない。

 更にチラリと部屋の構造を見てみると、外に音が漏れにくい素材が壁や床に使われていた。


 完全なプライベートルーム。

 バレオンは扉の鍵をガチャリと閉め、こちらに振り向き満面の笑みを浮かべる。


「じゃあ……楽しいお話でも、しようか!」


 私も、彼に笑顔を返す。


「ええ、本当に……楽しくなりそうだわ」




 ──こんなに制裁を下すのに、都合のいい部屋があるなんて、とっても幸運だったわ。

 



 外からの侵入はない。

 私がバレオンにどんなことをしようとも、助けが来ることはない。

 私を聖女であると信じきっているバレオンは、無防備にも服を脱ぎ始めた。

 

 色々と勘違いさせるような言動をした。

 だからこそ、相手は勝手に無防備な状態になってくれる。

 

「聖女様、分かりますね。服を脱いでください」


「…………」


 バレオンは鼻息を荒くしながら、ズボンを下ろす。

 しかし、私は黙ったままその場に立ち尽くした。


「聖女……様?」


 バレオンの表情が少しだけ曇った。

 私が指示に従わないことを不審に感じたからだろう。

 こんな個室に、警戒心もなく入り込んできた私を、手篭めにできると考えていた彼からすれば、直立不動で見下ろすような視線を向けている私に、懐疑的な視線を向けていても無理はない。


「バレオン様……忘れておりましたが、私、まだ名乗っておりませんでした」


 数トーン下がった声音で、バレオンに対して告げる。

 

「ああ……そう言えば、そうでしたな」


「はい。ですので、ちゃんと名乗っておこうと思いまして。よろしくですか?」


 バレオンは、小さく頷く。

 

「ありがとうございます。では改めまして……」


 数秒の間を開けて、私は口から己の名を告げる。





「私の名は、ノクタリアです」


「ノク……タリア……?」


「はい。これでも、そこそこ有名である自負があったのですが」


 そう、私は、王国内でも数少ない神級聖女だった。

 私の容姿が国中に周知されているわけではないが、名前くらいなら、聞いたことがあるはず。

 貴族に気に入られ、嫁に欲しいという提案を受け……そして断った聖女。



「私のこと……ご存じですか?」


 


 ……歴史上、神級聖女の位を得ていながら、聖女の地位を剥奪され、追放された唯一の聖女。



「私は、元神聖統一教会の神級聖女のノクタリアです。ふふっ、表舞台での最後の景色と共に、この名を心に焼き付けてください」



 ──そして、『上級国民』を罰し続ける闇堕ち聖女、それがノクタリアという元聖女の名である。





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