表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/54

19.偽装と潜入




 偵察の四日後。

 私は、制裁のための準備を整えて、ドミトレスク子爵邸の前まで来ていた。

 装いは、かつて毎日のように着ていた聖女の正装。

 この服を着ていれば、王国内各地を巡回に来た聖女であると勘違いして、相手も油断するはず。

 屋敷の門前では、門番が二人。


「お待ちください。聖女様」


 私はそこで槍を持った門番に止まるように言われた。


「お初にお目にかかります。神聖統一教会から配属された者です」


「本日、聖女様の面会予定はありませんが……?」


「実は、至急お伝えしたいことがありまして、それで、神聖統一教会から派遣されたのです」


「なるほど。領主様に確認して参りますので、ここでお待ちいただけますか?」


「はい。もちろんです」


 門番の一人は、屋敷内部へと駆けてゆく。

 怪しまれてはいないみたいだ。

 あとは、すんなり入れてもらえるかどうか……無理なら、強行突破をすればいいだけ。

 けれども、可能であれば、穏便に屋敷内に侵入しておきたい。

 そうした方が、計画が楽に進む。


「して、至急の要件とはどういったものなのでしょうか?」


 残された、もう一人の門番が尋ねてくる。

 無言の間を作らないための、雑談タイム……なのだろう。

 私は和やかな雰囲気のままに語る。


「実は、王都に近い場所で色々と問題が起きまして」


「問題……でありますか?」


「はい。昨今、『光』の災害が国内で増加しているのはご存知ですか?」


「知っております。大地が荒れるという……」


「実は、『光』の災害の発生条件や発生地域の特徴などを教会が突き止めたのです。その件に関して、貴族の方々にお伝えしておかなければならない内容もありましたので、こうして順々に貴族様のお屋敷に赴いている次第です」


「そうでしたか」


 ……もちろん、適当に作った理由である。

 そもそも、『光』の災害とは、私が引き起こしているものである。王都の付近だけでなく、王国内に満遍なく足を運んでいるから、各地での被害が報告されている。

 その『光』の災害に発生条件も発生地域も明確に存在していない。

 規則性も、私が制裁を下したい者がいる場所というだけ。

 それを突き止めたなど、嘘でしかない。


 『光』の災害に詳しい者なら、この雑談に不信感を持つはずだが、地理的な事情を詳しく知っているのは、教会関係者のごく一部のみだけだ。

 だからこそ、簡単に騙される。

 

「お待たせしました。聖女様、領主様の許可が下りましたので、中へどうぞ」


 先程、屋敷の方へと行った門番がこちらに戻ってきて、そう伝えてくれた。

 私は軽く頭を下げてから、門の内側に足を踏み入れる。

 通り過ぎる間際、門番の一人からボソリと一言。


「……聖女様、領主様に、お気を付けください」


 門番の言葉は、きっと本音だったのだと思う。

 ドミトレスク子爵邸の門番。

 彼らはきっと、この屋敷に仕えて長い。

 だからこそ、知っているのだ。


 現当主が屑貴族であることを……。


 私は門番に微笑み返し、


「ご忠告、感謝致します」


 柄にもなく、淑やかな言葉を放った。

 聖女として振る舞っていなければ、こんな風に返事をしたりはしない。今の私は、神聖統一教会から遣わされた一人の聖女。

 単なる連絡係に過ぎない。


 ──だからこそ、誰もが油断をしてくれる。


 聖女は、心優しく、無害な存在。

 そういう思い込みが、手荷物検査などをスルーさせる要因になっている。

 太ももに括り付けてある手頃なナイフは、簡単に持ち込むことができた。

 この武器を使って、バレオン=フォン=ドミトレスクを殺そうというわけではないものの、手札が多く用意できるのなら、それに越したことはない。


「……さて、始めましょうか。私の理不尽を忘れられないくらい、脳裏に植え付けてあげる」


 私は誰に対しても平等に優しい八方美人な聖女じゃない。

 悪には然るべき制裁を下して、弱者を苦しめるこの環境を多少なりとも変えられればと思っている暴君。


 邪智暴虐の闇堕ち聖女。

 それが、私……ノクタリアなのだ。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



【読者の皆様に大事なお願い】


この下にあるポイント評価欄【☆☆☆☆☆】から、1人10ポイントまで応援することができます。(★1つで2ポイント、★★★★★で10ポイント!)


少しでも、

『面白いかも!』

『続きを早く読みたい!』

『陰ながら応援してるよ!』

『頑張れっ!』

と思われた方は、下のポイント評価から評価をお願いします。


今後も『更新』を続ける『大きな励み』になりますので、どうか何卒よろしくお願いいたします。

加えてブックマークの登録も、お願い致します!

ブックマークと★★★★★評価を下の方でして頂けると今後の励みになります!

明日も頑張って更新します!



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


↓広告の下あたりにポイント評価欄があります!↓

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

反逆者として王国で処刑された隠れ最強騎士〜心優しき悪役皇女様のために蘇り、人生難易度ベリーハードな帝国ルートで覇道を歩む彼女を幸せにする!〜
書籍化&コミカライズ作品です!
よろしければこちらもご覧ください!

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
― 新着の感想 ―
[一言] 上手く騙して潜入出来たか。 仕えてる連中にも容赦はいらないかな。 今回のも反吐が出るクズ。 こんなのが生きてても世のためにならないのにね。 まさに、ワンピースの世界貴族みたいだな。 自分が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ