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17.ドミトレスク子爵領




 ドミトレスク子爵領は、王国の最南端に位置している小規模な領地である。

 温暖な気候であることから、多種多彩な果物が有名な地だ。

 そんなドミトレスク子爵領の人口は、年々減少傾向にある。

 人が領外に移動しているというのも多少はあるが、一番の理由は、領内での死者数増加にあった。


 ──表向きの理由としては、流行病が領内で広く蔓延してしまったため、という風に語られているけれど。本当は違う。


「餓死者……自殺者……それから、奴隷商への身売りがほとんどのようね」


 ドミトレスク子爵領内を歩きながら、その惨状を私は瞳に焼き付けた。

 

 領内に足を踏み入れなければ分からない。

 それほどまでに、目の前に広がる惨状は言葉では言い表せないほどに目を伏せたくなるものだった。

 


 ドミトレスク子爵領の首都と言われている場所では、想像以上に人影が少ない。

 建物の数と比例していないのだ。


 閑散とした町を眺めながら、私は色々な場所へと足を運んだ。


 すれ違う人は、皆が痩せている。

 大通りから少し外れた細い裏道では、乱闘や、怪しい人間たちによる物品のやり取りが頻繁に見受けられた。


「おい、金を出せよ!」


「ひいっ……もう、そんなものありませんって」


「ふざけんな! さっさと、出せや!」


 顔を地面に向け、座り込む人が多くいた。



「…………」


 服も薄汚く汚れ、人らしい生活を送れていないというのがとても感じられる。

 まるで、この世界に絶望しているかのように無気力な顔。

 あまりに不憫でならなかった。


 ──お世辞にも、治安が良いとは言えないわね。


 自領の荒れ具合に心を痛めることもなく、ドミトレスク子爵領の領主は、贅沢三昧を繰り返しているという。

 心の底から、屑貴族に制裁を下してやりたい。

 そう……感じた。


 彼らの瞳には、希望なんてものはない。

 ただ、ひたすらに明日生き残るために何をすればいいのかという短期的なことを考えるので精一杯なのだ。



 ──見定めましょう。そのドミトレスク子爵のことを。


 取り敢えず、その情報が本当かどうかを直接確かめるべく、私は領主の館のある方角へと歩いた。

 領主の暮らし方次第では、より過酷な制裁を下す予定だ。

 それが、民を苦しめている悪徳領主に相応しい罰であるのなら。






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