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11.私の生き様





 地下室の扉を閉じた。

 部屋の中からの音は、完全に遮断され、彼がいるということさえも分からなくなった。

 地下室の扉は、閉まるとすぐに部屋の壁と一体化する。

 地上に続く階段も霧に隠れるかのように床と同化し、地下室の入り口があるはずの薄暗い小部屋は、何の変哲もない物置のような場所となった。




 ──これで、私の下せる制裁は終わりね。



 事後処理としては、彼に無理やり奴隷とされた子たちを解放することくらいだった。

 皮膚に刻まれた烙印を消すことは、簡単ではない。

 けれども、私にならそれを可能にすることができる。


 


 ノーマンの屋敷の外では、数多くの奴隷たちがせっせと働いていた。

 彼が地下室に閉じ込められたとは、夢にも思っていないだろう。

 ただ、私には、特に奴隷にされた痕跡がない。

 無傷のまま、一人で外に出てきたことが、やはり気になるようで、私が歩みを進めていくと、周囲からの視線を感じた。


「あ……あの!」


 そんな中で、一人の少女が私の服の裾を掴む。

 よく見ると、私がこの場所で最初に出会った子だ。

 私が僅かばかりの食べ物を分け与え、私の身を案じて、忠告をしたくれた子でもある。

 

 空腹を満たせたのか、最初に会った時よりも顔色は良い。

 

「……こんにちは」


 挨拶をしてみたが、その返事をせず、少女は怪訝そうにこちらをジッと見つめてくる。


「貴女、あの男に何かされなかったの⁉︎」


「あの男? 一体誰のことを言っているの?」


「え……?」


 少女は口をポカンと空けて固まっていた。


「この村には、男性の方が沢山いるわ。だから、どなたのことを言っているのか、分からないのよね」


「あの男と言ったら、私たちを奴隷にした奴隷商の男に決まっているじゃない! 酷いことをされなかったの?」


「ああ、そういうこと……」


 この子も私がノーマンに、部屋へ招かれる場面を見ていたらしい。


 少女は私にグッと顔を近付け、ペタペタと服の上から私の身体を触り始めた。

 何をしているのかと思ったら、どうやら奴隷契約の証……烙印が刻まれていないかどうかを確認していたようだ。


「良かった……何もなかったんだ……」


「そうね。何もなかったわ」


「でも、どうして?」


「何がかしら?」


「だって、あの男が貴女みたいに綺麗な人を奴隷にしないなんて考えられない!」


 よく分かっているのね。

 私は、あのノーマンという男に目を付けられた。

 そして、この村に足を運んだのは、あの男と接触を図るためである。故に、全ては私の計画通りだ。

 


 少女の言う通り、私の目論見通り、彼は私のことを奴隷にしようとしていた。

 そして、私の制裁を受け、長い長い地下での幽閉拷問生活を始めたのだ。


「ふふっ……あはは!」


 思わず、笑い声が上がってしまった。

 少女は、私が突然笑い出したのを心配そうに見守る。

 弄ばれ、私の心が壊れてしまったのではないかと、考えているのかもしれない。


 ……けれども、それは違う。





 ──私の心は、こんなところに足を運ぶ前から、ちゃんと壊れている。




 存分に笑った後に、私は少女の腕に押された烙印に指を添えた。


「貴女は、奴隷じゃないのよね?」


「────!」


 言葉は出ていないが、少女はゆっくりと頷く。

 それを見てから、私はすぐに魔法を発動させた。

 指先からは、神々しい白い光が発せられ、少女の烙印は完全に消え去った。

 烙印のない奴隷はいない。

 つまり、烙印が消えた彼女は……もう奴隷ではない。


「嘘……消えた?」


「これで、貴女は自由の身よ。奴隷として、この村で働き続ける必要はないわ」


 私の目的は、ノーマンへ制裁する他、不当に奴隷に落とされた者たちの解放というものがある。

 弱者には救いがない。

 ……そんな世界が、私は許せなかった。

 彼、彼女らは、理不尽な環境で十分に苦しんだ。

 もうこれ以上、苦しむ必要はない。


「……私、もう奴隷じゃないの?」


「ええ、そうよ。奴隷商の名誉代表の男も、貴女たちを縛る力を失ったわ。故郷に帰りたいのなら、私がそこまで帰してあげる。そのくらいの援助はしてあげられるわ」


「……なに、それ。夢みたい」


 少女は涙を流して、地面に膝を付いた。


「あり、がとう……!」


 彼女の体験してきた辛さを私は理解していない。

 それは、実際に奴隷になってみなければ、分からないからだ。

 言葉でどれだけ、『大変だったね』と慰めたところで、彼女のことを理解したわけではない。

 それは、理解した風を装っているだけ。


 だから、そんなありきたりな言葉を私は使わない。

 代わりに、目の前の少女へ私はこう告げる。


「貴女みたいな理不尽な目に遭っている子は、他にも沢山いるわ。……だから、幸運だったわね。これ以上の苦しみから解放されて」


 この言葉は、きっと予想していなかったはずだ。

 もっと優しい言葉をかけてもらえるものだと思っていたはずだ。

 けれども、残念ながら私は、そういう人の心に寄り添うような優しさを兼ね備えていない。


 理不尽を打ち砕くことでしか、人を救うことができない。





 ──それが、『闇堕ち聖女ノクタリア』としての生き様だから。




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