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七話 冒険者ギルドへようこそ!

「う〜ん、冒険者……ならなくても良いんじゃない?だって〝冒険者〟なのにギルドに戻って来ないといけないんだよ?それだったら無所属で旅してる方がよっぽど冒険者だよ?」


「…………うざ」


つい本音がぽろりと漏れてしまった新田。彼が今前にしている男性が先程から身も蓋もないような事ばかり言って遠回しに新田の冒険者登録を拒んでいるせいだ。


アルマよりも遥かに背が高いその男性は色黒の肌を持ち、ぼさぼさの黒髪で少しばかりの顎髭を蓄え、耳はファンタジーな漫画等でよく見るエルフのように尖っている。


彼の名前はゲドンと言い、冒険者ギルド会館の受付兼取締役のようなものをしている男性だ。


……何故冒険者ギルド会館に?教会を追い出されて仕方なく宿を探すのではなかったのか?と思っている方も多いだろうから今から新田がここにいる理由をご説明しよう。


理由は単純、宿に泊まれる金も持っていないので小林がここに来ていないか確認に。最悪他の転生者でもいれば無心を……と思い冒険者ギルド会館へとやって来たのだ。


しかし道を聞き続け、やっとの事で辿り着いたこの場所にはゲドン以外誰もおらず、やむなく登録だけでも済ませようとしているのだが……


この男、全く首を縦に振ろうとしない。


「あの……本当に登録だけでも良いんで……そうじゃないと働けなくて、お金が……」


「あ〜そうなんだ!でも大丈夫だよ!冒険者じゃなくても魔物を倒せば金貨やら何やらが都合良く出てくるから!それに君転生者でしょ?魔物なんて余裕余裕!」


ゲドンは大げさなジェスチャーを用いてそう言う。


それにしてもデカい男だ。椅子に座ったまま手振りを混ぜて話すその様子はショベルカーが土を移動させる為に回転しているようである。


「うーん、でも僕武器も、それを買うお金も持ってないですし……あの、登録は諦めるんで、せめて何か簡単なクエスト?依頼?をやらせてはもらえませんか?お願いします!」


新田は深々と頭を下げた。ここで断られてしまえば野宿しか選択肢は無くなる。なりふり構ってなどいられないのだ。


「…………ハァ、君の気持ちは分かった。分かったんだけど……無理なんだよ」


「そんな……!」


「だってホラ、周り見てみ?」


ゲドンにそう促され、新田は周囲を見回した。


冒険者ギルド会館……内部はボロボロであり、至る所からよく分からないキノコのようなものが顔を覗かせている。


これでは手入れもされていないのだろう。冒険者になる人物が不足しているのだろうか?


「その、何と言うかぼろ……草臥れてますね」


「そうなんだよ。転生者が来てからと言うもの……あいつらがちょっと強いくらいの魔物ならポンポン倒しちゃうから俺達に仕事が回って来なくなってさぁ、そしたら皆辞めちゃって、ここもこんなんなっちゃうし、全く困ったもんだよ。そんなに強いんだったらさっさと魔王でも倒してくれたらいいのにね……あ、君も転生者か、気を悪くしたらゴメンね」


「あ、いえ……」


なるほど、ヨルムやガルドのような冒険者としての立場から見た転生者は非常に強力な戦力として尊敬の対象となるが、その強さによって弊害もまた生じてしまうと言う事らしい。ゲドンとアルマが転生者を良く思っていないのがまさにその証明であろう。


全く世知辛い。転生者がこうも傍迷惑な存在になり得るとは思わなかった。こうなる事が分かっていればイムに頼んで現地人のような見た目と能力にしてもらったと言うのに……出来るのかは分からないが。


「てな訳で悪いんだけど、今転生者の登録はお断りしてるんだよね。代わりにコレあげるよ、まあその……頑張ってね」


そう言ってゲドンに手渡されたのは丁度いい握り心地の木材と盾のように扱えそうな木材だった。間違いなくこの建物の何処かから引き剥がしてきた物だろう。木材は所々腐っており、嫌な臭いがする、これでも無いよりはマシ……『なワケねえだろ!』とは言えなかった。


「…………はい、ありがとうございます」


新田は力無くゲドンにそう告げ、会館を後にした。

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