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三話 初戦闘!転生者の実力を見せてやれ!

冒険者の3人組に新田を加えた一行は会話を交えながら街へと歩き続けていた。


聞けばガルドとヨルムは凄腕の冒険者でありながらも、最近駆け落ちのような形で街で最強格のギルドを脱退したらしい。そして二人で再出発と言うまさにその時、偶然にも小林と出会い、彼に桁違いの戦闘能力がある事を感じ取った彼等は無精者の小林をどうにか口説き落として3人でギルドを結成したのだそうだ。


一方でスカウトされた張本人である小林は自らの能力の高さをあまり自覚してはいないのか、その力を披露する事を極端に嫌がり、何事にもやる気のなさそうな姿勢で取り組む人物のようだ。


ただ……実力の違いからか転生者をまるで神のように扱う現地人ではなく、完璧なる第三者から小林の印象を述べるとするならば……


『その言動は自らの能力の高さを鼻にかけているが故の態度である事は間違いない』と付け加えなければならないだろう。と言うか全く……それを隠し切れていない。むしろよく見ていればすぐに分かるはずだ、彼はこの世界に転生した事が嬉しくて仕方がないのだと。


まあ、前述した事柄に気が付いている者は新田を含め今現在登場している人物の中には誰一人存在していないので、これ以上話す必要は無いであろう。


「そういえば、小林さんはどうしてこの世界に来たんですか?」


新田はふと頭に浮かんだ疑問を小林へと投げかけてみた。そのすぐ後でこの質問は死因を聞いているようなものだと自分を責めたが、もう言葉にしてしまったのだ、時既に遅しである。


「ん?あぁ…………俺はトラックに轢かれて」


「えぇ!?一緒じゃないですか!?」


「マジか……偶然だね」


死因と言う共通点がある事が発覚し、新田は僅かながら隣を歩く青年と心の距離が縮まった、ような気がした。小林が一瞬、躊躇うような表情をしたのが気がかりではあったが。


……その時だった。強力過ぎるまでの殺意を感じ取り、四人が一斉に立ち止まったのは。


「ぎゃあああああ!」

「あひゃああああ!」


ガルドとヨルムの叫び声が聞こえたかと思うと、二人が上空高くへと弾き飛ばされるのが見えた。木々の間から突然現れたどす黒い色をしたモノの体当たりを喰らったせいだ。


その黒い物体は凄まじい速度であり、すぐにまた木々の中へと消えて行ってしまった。どのような魔物なのか見当すらつかなかった。


しかし、周囲に漂う殺意が衰える気配はない。あの魔物がまだ近くにいる証拠だ。


これは非常にマズイ……このままではあの二人のように何の対策も出来ぬまま、次の攻撃を喰らってしまうだろう。


「こ、小林さん!」


新田は声をひそめ、小林に問いかけた。


「……噂には聞いていたけど、本当だったのか。この森に最近、恐ろしく強い魔物が現れたらしいんだ。で、そいつに襲われるのは大半が転生者……それも、その殆どがこうして死因を話している時にね……」


小林は眉を顰めてはいるものの、動揺まではしていないようだ。彼ならばこの状況も何とかしてくれるかもしれない。


それよりもだ……彼の言っている事が本当なら、この事態は新田が引き起こしてしまったようなものだと言えるだろう。新田は再び自らを責め、小林へと謝罪を繰り返した。


「すみませんすみません!僕があんな事を聞いたばっかりに……」


「いいよ、別に……やれやれ、また戦わないといけないのか」


小林がそう言い終えた直後、黒い物体が再度こちらに向けて突進して来た。それを小林は易々と片手で受け止め、魔物の動きを停止させたのだった。


「こ、これは……!」


その正体は、何と車のタイヤだった。この大きさならば大型車のものだろう。


そう、まるで、トラックのタイヤ……


「助かるよ。死因を俺の縄張りでべらべら喋ってくれるなんてな。お陰で転生者かどうか尋問する手間が省けたってもんだ」


突如、タイヤが現れた方角の木々の間から、何者かが小林と新田に語りかける声が聞こえてきた。


「炎技!ファイアーボール!」


それを聞いた小林はすぐさま火球を打ち出した。何かの凹むような音が森に響く。どうやら直撃したらしい。


「最近現れた魔物と言うのはお前の事か?あれ……?」


小林の声は静寂の中で虚しく漂うばかりだった。返事が無いとすると、あの一撃で相手はやられてしまったのかもしれない。


「もしかして俺……またなんかやっちゃい」


「やっちゃって……ない‼︎」


小林がそう言いかけた時だった。先程の声の主から返事があったのは。


「なっ……!嘘だろ!?」


「もう一度言おう。やっちゃって……ないぞ‼︎」


機械音……例えるならばアレク……ゲフッ、ゲフッのような声を張り上げて二人の前に現れたのは……


8トントラック、そのものだった。

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