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第五話「護紙隊からの少女S」

刹那、横にいた魔法少女ピンクの身体が衝撃で吹き飛ばされ地面を打って転がっていく。

「ピンクーーーー!」と語尾ウサを忘れたラビじんの声が響き渡った。

な、何だ…!?

突然のことに俺はごくりと唾を飲み込む。

ヒロイン→魔法少女響蕾ピンク…この次は俺か…

刀も魔法もない。しかし、『服従』の能力は持っている。

このフード少年を服従させるのか?言うこと聞いてくれるのか?

などと脳裏が言葉が覚え始めた時、刹那、鼓膜が声を拾う。

「ここからは私に任せてもらえないかな?」

注目を集める凛とした声色。桜の絨毯じゅうたんが向かい入れたのは大人びた女子高生。

背中に届く程伸ばされた長髪は紫色をしており、一つに結ばれていた。

青色を基調とした服装の少女は妖精族フェンリー。尖った耳が特徴的だ。

少女は小さい口を開くと涼やかな声でこう言った。

「あれは…『護紙隊ごしたい』の…沖田総司」

「沖田…?」「総司?」

妖精うさぎの言葉に俺とヒロインが言葉を二人で紡いだ。

腰にぶら下がっていた柄に手を添え、抜刀すると、正中線に平行になるよう構える。

ぎらり、と刀が陽を照らした時、軌道上にフードの少年を迎えた。

一方で俺達は新しく出てきたワードに疑問を解決抱く。

「というか『護紙隊ごしたい』って何?」

突然、新撰組一番隊隊長と同じ名前を持つ少女の戦闘に目線を送りながらも、あまりにも気になったため質問させてしまった。

今日一日で何個の団体名が出たのだろうか。ごっちゃになってしまうほど固有名詞が頭の辞書を書き換えていく。

「はい!電子化された時代にできた紙の文化を護る軍団です。彼女は副会長であり、一番隊隊長であります」

少し威圧感を感じているのか裏返る声を使いながら補足を挟む櫻子。幼女に紹介された〝女〟子高生…沖田総司は新たな登場人物に目を白黒させる魔法少女ピンクに歩みを寄せた。

「君の名前は…?」

「わ、私は響蕾きょうら…じゃなかった、魔法少女ピンクと申しますすす、先輩っ!」

二年生の証である制服の青いリボンを見つけた魔法少女は、礼儀よくお下げ髪を揺らしながら頭を深々と下げた。

「ふふふ…そんなに慌てなくてもいいんだけど」

一種の狂気すら覚えてしまう少女の微笑みに肩を振るわせる。

「『柘榴協会(ざくろきょうかい)』の少年…私と一戦交えてくれないか?」

余裕綽々な表情で言葉を重ねた沖田。

「しかし」と息継ぎを挟み、「君が負けた時には大人しく我が学園の生徒になってもらうぞ」

「五月蠅いー…

彼女の言葉を聞きたくないと言わんばかりに刀を薙ぎはらう。

「聞き分けのない」と口の中で溜息をつくお、鞘から刀身を抜き取り、襲いかかる攻撃を刀剣で受け止めてみせた。刹那に重なる剣戟が周囲を圧迫させた。

火花飛び散る鋼と鋼の打ち付け合いは退屈なのか、少年は距離を息継ぎのように離すと、夕日を照り返す刀を使って、速度に速度をのせた斬撃を追わせる。

しかし、刀身は届かず、かがんで避けた女子高生は瞬きすらできない一瞬のうちに回避され、背後に回った途端右肩に刀を沈み込ませた。

電撃のような痛みが炸裂→くらりと蹌踉めきそうになるが、疲労を訴える身体に鞭打ちし、四肢で何とか身体を支える。

「しつこいな…」

速度を乗せた刃空を裂き、横一文字の斬撃を与えた。

反撃できないまま、フード少年はふいに頭全体がふらつき、片膝をついた。

そんな彼に沖田は優しく微笑む。敵味方としてではなく人生の先輩として言葉を投げかけた。

「大丈夫。少しきつい睡眠薬だ…お前の命は奪わないから安心して眠るがいい」

自信に満ちた語調が産む言葉は少年に届いたのかは分からない。が、安心したように一筋の涙を流すのであった。



午後八時半過ぎ 学寮の男女兼用ロビー



風呂上がりのあと、黒一色のジャージーに着替えた主人公はその機能性に驚きを隠せないでいた。もう、転移時の古臭い服装は一生着ることないだろう。

四階のロビーの四つの辺の延長戦に作られたベランダに夜空を眺めていた少年に紅色の長髪を揺らしながらヒロインが近づいてきた。

「ねぇ、隣いい?」

肩に巻き付いた包帯が視界に入った主人公は一応会話の一環として触れておく。

「肩はもう大丈夫なのか?」

「えぇ、気にしなくていいわよ」

愛想のない返事に眉を潜ませるが、あえて何も言わない主人公。その隣でヒロインも『シブヤ』の夜空を見上げる。

「星があんまり見えないな…」

「そう?私は綺麗な夜空だと思うけど」

心地のよい沈黙が場に落ちた。背後は青春を謳歌する学生で賑わっているのに、不思議と五月蠅く感じない。この世界の夜空にはそんな力が込められているのだろうか。

「あんたはこの世界で生きてくの?」

「分からない」

「へぇ〜」

「…」

「…」

「…」

「ねぇ、私は早くの世界に戻りたいの」

「…お前はどんな世界から来たんだっけ?」

「ここより少し科学技術が発展した世界線…発展しすぎたのかもしれない。第二次宇宙大戦が始まってから」

眼帯に覆われた片目に手を置きながらヒロインは窓から明後日の方向を見つめる。

「私は殺さなくちゃならない男がいるのに」

「…」

「あんたは何かしたいことないの?」

場を沈黙させてしまったことに罪悪感を感じたのか、言葉を紡いだ。

「俺は何故死んだのか知りたい」

誰が殺したか知りたい。復讐したいわけではないが、何故殺したのかその理由を知りたいのだ。

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