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08 ロイ


 空気がキリッとした、良い朝。


 いつもの村内巡回というか散歩を終えて、我が家に戻った俺。


 この所、良い感じに平穏すぎたので、たぶんそろそろ何かあるだろうななんて考えていたら、案の定。


 突然の訪問者は、ニケルちゃん。


 友人のモノカさんの愛娘マクラちゃんのお友達で、領主の娘さん。


 ここから結構遠くの街ヴェルクリで暮らしているはず、


 なぜここに、いや、なぜ一人でここに?



「家出、したの……」


 泣き出しそうなニケルちゃんを、慌てて家の中へ。



 突然の小さな訪問者に驚いてるみんな、


 震えているニケルちゃんを妻のリノアが毛布でくるみ、そのまま優しく抱っこして、


 震えているニケルちゃんの姿に動揺しているセシエリアさんに、温かい飲みものをお願いして、


 慌てて通信魔導具でモノカさんに連絡しようとしたアリシエラを、まずは事情を聞いてからと制して、


 ニケルちゃんの姿に怒り心頭で飛び出そうとするヴァニシアを、まずは事情を聞いてからと制して、



 ようやくひと心地ついた様子のニケルちゃんが、


 涙ながらに話してくれた家出の理由は、


 領主パパことバルモルトさんがマクラちゃんと合わせてくれなかったから。


 

 ついこの間、モノカさんたちが幌馬車の旅でこの国を訪れていたことを、


 ニケルちゃんが知ったのは、みんなが帰ってしまった後。


 怒ったニケルちゃんがバルモルトさんを問い詰めると、


 危ない冒険に夢中になりすぎているから、と、逆に叱られたそうだ。



「パパなんて大っ嫌いっ!」


 ひと晩悩み抜いたニケルちゃん、家出を決意。



 以前、知り合いのお医者さんクロイ先生から、


 危険な目に遭ったら使うようにとこっそり渡されていた秘薬『転送薬』


 しっかりと行き先を考えてから飲むようにと教わっていたそうだが、


 誰か助けてとだけ願ったニケルちゃんが、


『転送』したのは、なぜか、我がロイ家。



「どうしてこうなる前にマリオネさんたちに相談しなかったのかな」


 お友達の先輩冒険者マリオネさんにも、


 頼りになるセシエラ先生にも、


 今は会わせてもらえない、と、ニケルちゃん、ぽろぽろ、涙。



 これは、駄目だろう、バルモルトさん。


 もちろん、娘を心配する気持ちは、父親としてとても良く分かる。


 しかし、子供の気持ちを全く無視して、上から押さえ付けるだけのこのやり方、


 なんとかしないと、このままでは、親子ふたりとも不幸になってしまう。



 ロイ家一同、みんなで真剣に考えているが、時間だけが過ぎていく。



 ぷしゅぅん



 聞こえてきたあの音は、


 配達魔導車『システマ』の、着陸音!



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