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10 ロイとニケル


 幌馬車スマキ1号で、ヴェルクリの街へ。


『システマ』転送を使わなかったのは、ニケルちゃんに落ち着いて考える時間を与えたかったから。


 御者は俺、隣にはニケルちゃんの、ふたり旅。


 ニケルちゃんの様子、客室へ行く前と比べてずいぶん落ち着いているけど、何かあったのかな。



「さっき、リカお姉さんたちのお話し、聞いたんです」

「私とパパ、親子げんかできるのが、うらやましいって」



 ニケルちゃんに、三人娘が語ったこと。



 ミスキさんのところの三人娘、


 リカさん、ルミさん、マヤさんは、同じ孤児院育ち。


 元々三人は、家族全員みんな一緒の、大きな商隊キャラバンでの旅暮らしだった。


 旅の途中のキャラバンが野盗に襲われて、生存者は幼い三人だけ。


 孤児院に引き取られ、助け合って暮らしていたけど、


 実はその孤児院は奴隷商人絡みの施設。


 成人の儀を迎えた三人が別々に売り飛ばされそうになったところを、


 間一髪、巡回司法官が救出。


 ところが今度は、固有スキルで引き取り先を振り分けられ、


 離ればなれにされそうになったところを、


 ミスキさんに引き取られて、


 今は、仕事も暮らしも、みんないっしょに。



「私たちはお父さんとけんかしたくてもできないけど、家族は仲良くしてほしいなって、リカさんたちが……」


 ニケルちゃん、真っ直ぐな眼差し。



「俺も本当は、ニケルちゃんとお父さんのこと、少しうらやましくて」


「?」


「実は俺、アイネとは、ちゃんとけんかしたこと無くて」

「あの娘が良い子だったからってことは分かってるんだけど、もしニケルちゃんたちみたいに本当の親子だったら、違ってたかも、なんて……」



「ロイおじさんらしくないよっ」


 突然、ニケルちゃんに、叱られた。



「そういうこと、絶対に、みんなの前で、言っちゃ、駄目だよっ」



 優しいニケルちゃんから、真剣に、きつく叱られた、俺。


 なのになんで、こんなに嬉しいんだろ。



「バルモルトさんのことも、そうやって叱ってあげてほしいな」


 あの人なら、ニケルちゃんの成長に、ちゃんと気付いて、向き合ってくれる。



「はいっ」


 ニケルちゃん、真っ直ぐな、良い笑顔。



 大人は、子供が成長して成るものだけど、


 成長の塩梅は、人それぞれだから、


 大人具合もまた、人それぞれ。



 さっきから、リノアに甘えたくて仕方ない俺、


 誠に遺憾ながら、まだまだ、要成長。



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