01 モノカ
『リヴァイス 30 若旦那の平常運転な遠征と安全運転な凱旋』の続きで、
これまでの登場人物による短編です。
お楽しみいただければ幸いです。
秘崎萌乃果です。
異世界暮らし、ますます充実しております。
ぶらり旅とかグルメとかバトルとか、時々、デートなんてしちゃったりとか。
いい感じではあるのですが、充実しているがゆえの悩みだって、あるのです。
婚約者のカミスとの関係について、です。
本人は荒事関係が苦手なのを気にしているのですが、そんなの問題ナシっていうくらいに優しさと漢気がいっぱいの、とっても素敵な男の子なのですよ。
おのろけ、なんかじゃないのです。
まるでそれがカミスの魅力を証明するためのイベントであるかのように、いろんな出来事がおこるたびにカミスを慕う娘さんたちが増えちゃうのです。
そして今の彼には、奥さまがひとりと、奥さま候補が三人、そして婚約者が私も含めてふたり。
つまり、現在判明しているだけでも、六名のカミス大好きっ娘が、仲良くカミス包囲網を形成中。
もちろん、私も大好きですとも。
本人は根っからの草食系男子なので、そっち方面には消極的なのですが、いわゆる"ハーレム"ですよね。
こっちの世界では、殿方の器量次第で奥さんたくさんあたりまえ、なのですが、
集まったみんながとっても仲良しなのは、カミスの人徳の証し、ですよね。
彼は争いごとは苦手ですが、チームカミスのリーダーとして頑張って冒険者しています。
そしてそれこそが、まさに私の悩みごと、なのです。
私は、チームモノカという冒険者パーティーのリーダーです。
もちろんお互いのチームは、基本的には別行動。
それぞれのチームのリーダーとして、冒険中は離ればなれが当たり前、だったのですが……
つい先日、私、やらかしちゃいました。
任務のため遠方の街に長期遠征していたカミスたちが、滞在先の館で夜襲を受けたとの急報に、パニックになっちゃって、
心配した友人たちが大急ぎの『転送』でカミスの所へ連れていってくれたほどに、取り乱しちゃったのです。
両チームのメンバーも、もちろんカミスも、私のあの醜態には触れないのですが……
それでも、このままじゃダメだよ。
どんなにカミスが心配だからって、リーダーの私が自分のチームをほっぽっていいわけないし、
カミスのチームの迷惑になるような無様はさらしたくないのです。
私を信頼してくれているチームモノカのみんなのためにも、
カミスを慕っているチームカミスのみんなのためにも、
これからどうするかを、私自身が、ちゃんと、決めないと。
居間に集まってくれた仲間たちに、意を決して、真剣に相談。
ノルシェ、アイネ、シジミ、クロ、ササエさん、ネルコ、フナエさん、
そしてマクラ。
みんなは、私の話を、最後まで静かに聞いてくれました。
「リーダーなのに、いつまでも弱くてごめんなさい」
頭を下げたら、みんなからぽんぽんされちゃった。
「お母さん、ちゃんとみんなに相談できたから、えらいっ」
マクラ……
「確かに、ちょっと前までは、ずっとひとりで悩んでいましたからねっ」
ノルシェ……
「今回のお悩みは、すっごく簡単に解決できるよねっ」
アイネ……
「大好きな殿方が心配だったら、遠慮しないでガンガン攻めるべき、なのっ」
シジミ……
「つまりは、モノカが通い妻しちゃうってことですよね」
ネルコ!?
「ここにいるモノカハーレムのみんなが、モノカの恋路を応援してるってことさ」
クロ……
「おふたりの状況進展のお祝い、どうしましょう」
ササエさん……
「お赤飯は、まだ早いのかしら」
フナエさん……
そういえば、そうだったね。
うちのチームの主役は、私じゃない。
みんなが主役の、みんなのチーム。
誰かが困った時は、みんなで助け合い。
もし、ほかのチームの男の子を好きになったのがノルシェだったとしても、
きっと今みたいな感じで、みんなで応援しちゃうよ。
もちろん私も、全力で、ね。
みんな、本当に、ありがとう。
今のこの気持ち、早くカミスに伝えたいな。