《始まりの洞窟》
ゲームの記憶を頼りに《始まりの洞窟》を探して数時間、幸運にも夜が明ける前に洞窟に着くことができた。
『ふー、着いたー!』
目の前に崖には、直径5メートル程の穴が空いている。
そう、これが《始まりの洞窟》だ。
それにしても····。
ゲームの中でしか見れなかった景色を現実で見れるなんて·····感動だ。
さて、空も白み始めて来た。じきに夜が明ける。
さっさと洞窟に入ってしまおう。
洞窟に向けて歩きだそうとした、その時。
俺の顔に何かが飛び付いた。
『うわわッ!?なんだ?』
それは、俺が掴むより早く近くの草むらに飛び込んだ。
取れたのか····?
ん?なんか視界が悪いぞ?
顔をぺたぺたして気づく·····左目が無かった。
ま、マジかよ!?
左目盗まれた!
ガサリ 草むらから紫色の犬のような耳が除く
なるほど····コボルトか··。
コボルトは魔獣の1種だ。
見た目は、紫色の二足歩行する犬だ。
強さはゴブリンと同じ位····つまり弱い。
群れで動く事もあるが、今の所、周囲に仲間は見当たらない。
俺の左目を奪ったコボルトは、しばらく手に持った目玉をクンクンして···食べた。
····え"え"え"え"え"え"え"!?
お、俺の左目がぁあああッッ!!
コボルトと目が合う
オノレ貴様ァ···経験値にしてやるッ!
その時、地平線から太陽が登った。
コボルトに向かって走り出そうとした俺の体が焼け爛れる。
「がァァァァァァァァァァッ!····イダイ、いだいィィィィ!」
叫び声を上げたゾンビに驚いたのか、コボルトが逃げる。
だがそんなことはどうでもいい。
早く洞窟の中に····。
腐肉が溶けてほとんど骨だけになった足を引き摺り洞窟に駆け込む。
「あ゛あ゛あ゛····はぁ。」
助かった
洞窟の入口が太陽が登る方角じゃなくてよかった。
もしそうだったら今頃····。
やめよう。
考えたくもない。
とにかく俺は生き延びた、ただそれだけだ。
それにしても····こりゃトラウマもんだなぁ。
俺は再生していく腐肉を眺めながらひとまずの無事を喜んだ。