くびなしオバケがやってきた!(5)
オバケ、なかなかやるなぁ!
とシホちゃんは考え
「じゃあ、おばあちゃんも『失格!』って言われちゃったの?」
と訊いてみました。
「それが、言われなかったのよ。」
と、おばあちゃんが教えてくれます。
「その代わりに、星明りの山ぜんぶから『めでたい、めでたい!』って声がしたの。」
そして『亭主が非道を働けば、山に呼ばわれ。我らが懲らしめてやろうぞ。』とカミナリのような声が聞こえてきたそうです。
「なんだ、それは。」とおじいちゃんが驚きます。
「カミナリみたいな声のところは、初耳だ。」
シホちゃんが「どういうこと?」と、お父さんに訊ねると
「もしも、おじいちゃんがおばあちゃんに悪い事をしたら、山に向かって言いなさい。そうしたらおじいちゃんを懲らしめてあげるよ、って意味だね。」
とコッソリ教えてくれました。
おばあちゃんは
「いいじゃないですか、おじいさん。私は今まで山に何にも言いませんでしたし、おじいさんも罰を貰った覚えなんて無いでしょう?」
とニコニコします。
シホちゃんのお母さんがおばあちゃんに
「なんで今まで黙ってたの?」
と訊くと、おばあちゃんは
「必要ないでしょ?」
と答えました。
するとお母さんは、今度はお父さんに
「アナタは何も隠してないでしょうね?」
と訊ねます。「正直に言いなさい。」
「なにも隠してなんかいないよ。」
とお父さんは答えます。
お父さんが奥座敷で肝試しをしたのは、お母さんと結婚した後のことで
「もう、いい大人だったからね。」
そして「緊張していたし、勧められたお酒を全部飲んじゃったから、奥座敷で横になったら、直後に前後不覚だ。」と続けます。
「だから、鬼も河童も、お振袖のお姫様も見ていない。」
ただ、朝起きると枕元に『宝の地図』が置いてありました。
「キミにも見せただろぅ?」
「ああ、あの地図。」
とお母さんも納得します。
「画用紙に、子供がクレヨンで描いたような地図だったよね。」
地図には、その時お父さんとお母さんが住んでいた社宅の絵が描いてあって、『ここ』という矢印には、丁寧に番地と部屋番号まで書き添えてありました。
お母さんは
「お父さんは『キミと結婚が出来て、一緒に住む場所たから確かに”お宝”だなあ!』って言っていたけど、あの社宅でシホを授かったのよねぇ。」
と感慨深げに頷きました。
シホちゃんは
「じゃあ、お父さんは『合格!』も『失格!』も、言ってもらってないんだぁ。」
と少し残念な感じがしました。
「オバケも見られなかったし。」
するとお父さんは
「オバケが見られなかったのは残念だけど、合格は貰ったんじゃないかな。」
微笑みました。
「だって、『宝の地図』は本物だったんだからね!」




