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首無しお化け 後日譚(3)

 「面白い着想だと思う。」

と彼女はニッコリした。

「論理的に破綻も無いようだし、私が会った”さんもとごろうざえもん”と”しんのあくごろう”のキャラとも矛盾しない。」


 だとしたら、と彼女は続けた。

「あの夜、私が望んでいた事はホントウは何だったとキミは推測しているのかな? 多分、私本人も気付いていなかった事なんだろうけど。」


 志保は、こういった推理を戦わせるような場面になると、僕に対する二人称代名詞が”キミ”になる。

 学生時代と一緒だ。


 僕は志保の質問には即答せず、先ずは

「キミが僕にしてくれた”お話”は、叶う限り正確な内容だったとして進めるよ。」

と宣言した。「脚色は無い、という事で。」


 「それは勿論もちろん。」

と彼女も承諾する。「私、記憶力には自信があるし、肝試しの夜の出来事に関して言えば、特に強烈な体験だったから今でもアリアリと思い出せるもの。」


 彼女が「質問に対する結論を先に!」などと先走らない自制心を持っているのは有難い。

 順を追っての説明でないと、理解しにくい――あるいは受け入れがたい――事柄というのは、世の中ままある事だからだ。


 それでは、と僕は話を切り出した。

「まず第一に、”山ン本五郎左衛門”はウソをついたのだと思う。お父さんの肝試しの夜の件だ。それが『シホちゃんへのギフト』だったんだ。そして『宝の地図』の作者はキミではない。”五郎左衛門”本人の手によるものなのか、別の誰かに描かせたのかは判らないけどね。一方で、朝、目が覚めると枕元にそれがあったという部分に関しては、キミのお父さんの証言は正しいんだろう。」


 「どゆこと?」

と志保は驚いた。

「”さんもとごろうざえもん”が、嘘を言わなければならない必然性が、見当もつかないんだけど。しかもその理由が、胎児たった私が地図など描けるはずがない、という常識に基づいた判断であるのならば、それは受け入れられない。百鬼夜行みたいな非常識なモノが跋扈ばっこする夜だったんだから。」


 「”山ン本五郎左衛門”は、キミに対してウソはつかない、と契約を結んだわけではないから、別にウソを言ったって構わないだろ? 僕は彼の存在を否定しているわけではないんだ。」


 僕の指摘に、志保は「それはそうだけど」と応じたが、納得はしていない。

「私が言っているのは、積極的に嘘を言わなけばならなかった理由は何か、という事よ。」


 「うん。だから僕は”山ン本五郎左衛門”の語った事の全てがウソだった、と言っているのではないよ。キミのお父さんが『正座をして待っていた』という部分なんかは、”山ン本五郎左衛門”の証言の方が正しいんだろう。」


 う~ん、と志保はうなった。

「じゃあ、”さんもとごろうざえもん”と父との両方が、少しづつ嘘を交えている、って考えているわけ?」


 「端的に言うと、そうだ。」

 僕は前方に目を遣ったまま、彼女のげんに同意した。

「だって、正座して待ってるようなお父さんだろ? それにスマホ――いや、あの時代はまだ携帯か――の待ち受けを”絵姿女房と絵姿娘”にしているような人だ。」


 だから、と僕は続ける。

「願い事を言えとうながされたら、誤解や間違いの無いように第一声から『妻子共に助けて頂きたい』と願ったはずだと思うんだよ。遠慮したり、回りくどい言い回しなんかを考える余裕は無かったはずなんだ。」


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