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9 神の裁きの言い渡しの後……隠し部屋にて

神様が五人へと語り掛けるのを、私たちは王族のみが使える隠し部屋にて見ていました。


この部屋は許可が与えられた者しか入ることが出来ません。なので、この部屋に居れば、とても安全なのです。この部屋の位置は西の尖塔の中にあります。ですが、その尖塔からでも、この部屋には辿り着けないのです。


先程、私が陛下と一緒に移動したのは、私にはまだ許可をいただけていないからでした。



神様による五人への断罪が終わり、今まで鏡に映されていた五人の姿が見えなくなりました。変わりに美麗な男性の姿が映り、私たちへと話しかけてきました。


『今聞いた通りやつらは今宵、あの宮から出ることは適わぬようにした。あの者たちのために、其方らが夜遅くまで働くこともないわ』

「アスティパレア神様、ありがとうございます。それならば、通常の業務体制のままにして、他の者は休ませることにいたします」


陛下が鏡に向かって恭しく頭を下げました。アスティパレア様は、手を振りながら『そんな(かしこ)まるでないわ』とおっしゃいました。


『其方たちにも苦労を掛けたな。明日もあることだし、早く休むがよい』

「まあ~、どの口がそのようなことをおっしゃいますやら」


私はコロコロと笑いながら言いました。アスティパレア様は、眉間にしわを寄せました。


『メイティア、其方も疲れたであろう。明日に備えて』

「ですから、どの口がそれをいいますの? もともとはフォレガンド様のお遊びに気づかずにいて、好き放題させてしまったからでしょう」

『いや、それは……』


横目で視線を向けましたら、アスティパレア様は怯んだ顔をして口籠られました。


「それに八つ当たりでわたくしが(・・・・・)生まれる(・・・・)のを遅く(・・)になどなさるから、このような事態になったのではありませんこと?」

『それは……』


アスティパレア様は言葉が出てこないようですわ。それでもまだ、私から目は逸らしませんわね。


「メイティア、その、それ以上は……」

「あら、お父様、私以外に、この方に文句が言える人がいまして?」


お父様は顔を(しか)めて私を諫めようとなさって、でも、言葉を濁されてしまいましたわね。アスティパレア様のことを(おもんばか)ってのこととは理解し(わかっ)ておりますが、お父様こそもう少し強気に出てくださってよろしいのに。


そう思ってお父様の顔を見つめましたら、その横にいらっしゃるギル兄様が小さく笑い声を上げました。私の視線を受けて、お兄様は苦笑を浮かべた顔で口を開きましたの。


「父上、メイティアの言う通りですよ。というか、我々(・・)が言わないでどうするのですか」


そうお父様に言ったあと、ギル兄様は表情を引き締められました。それと共に纏う雰囲気も変わりました。


「アスティパレア、お前が異界の魔女共のことを、苦々しく思っていたのは、わかっている。私たちも対応が後手に回ってしまったからな。だけどそれで、メイティアの生まれを遅くするなど、していいことではないだろう。いくら神の寵愛を受けた母上でも、歳がいってからの出産はリスクが大きすぎる。幸いにも母上もメイティアも何事もなく済んだが、万が一命を落としていたらどうするつもりであった」


アスティパレア様はしばらく黙られた後、ぽつりと呟くように言われました。


『人というのは、脆いものだったのだな』

「あのな、神の世界でも出産は命がけだろうが。そんなことも忘れたのか?」


サス兄様が呆れたように会話に加わりました。


『この数百年、赤子が生まれたとは聞いていないな』

「それ以前に新しく連れ添うことを決めた者はいなかっただろう」


お父様も立場を切り替えることにしたのか、先ほどと口調を変えてアスティパレア様に言いました。アスティパレア神様は『グッ』と呻いた後、恨みがましい視線をお父様へと向けました。


『大体……お前たちが、この世界の王となればいいではないか。そうすればフォレガンドも、ちょっかいを掛けようと思わなくなるだろう』


その言葉に私を含めたライフェン家の四人は、キッとアスティパレア様を睨みつけました。


「どの口がそれをいうのか?」

「ええ、あなたの仕出かしたことの尻拭いのために、我々がこちらに来ているというのに?」

「ほんと、自分で責任が取れないおこちゃまのくせに、文句だけはいっぱしだなんて、最低だよな」

「お父様、(わたくし)考えたのですけど上に申し上げて、私たち一族のお役目を解いていただきませんこと? ディミトロとカラヴァスは仕方がないですけど、これ以降我が家に生まれる者は普通の人間にしていただきましょう。そうすれば、この世界の舵を握るのは、王家の方々になりますわ」

『ま、待ってくれ。それではこの世界の均衡が!』


焦ったように言うアスティパレア様に、冷ややかな視線を向けてお父様は言います。


「そんなことは知ったことか。お前が何とかすればいいだろう」


まあ、お父様は本気でお怒りになられたようですわ。


今までは上からの命として、この世界のために尽力なさっていましたもの。いろいろ思うところがあったところに、この事態ですわ。いい加減堪忍袋の緒も切れるというものでしょう。


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