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2 待ち人は……まだ来ない

それにしても、フォルグワンダ様は遅いわね。今日がどんな日か、わかっていらっしゃらないのかしら。


まあいいわ。どうやらもう少しいらっしゃるまでに、お時間がかかるようですわね。それでしたら、もう少し思い出に浸っていましょう。


……あら、おかしいわね。私は楽しいことを思い出すはずでしたのに、どうしてフォルグワンダ様の不貞の話を思い出しているのかしら?


まあ、いいわ。ついでだから、気に食わないものは、さっさと思い出しておくことにするわ。


そうね、決定的なことが起こったのは、今から一年ほど前のことね。何を思ったのかフォルグワンダ様ってば、新年を祝うパーティーで私との婚約破棄を叫ばれたのよ。

でもこれは、フォルグワンダ様の母上であるクシュリナ 王 妃(・ ・)様が、速攻でフォルグワンダ様を昏倒させて王子宮へと運び込んでしまわれたの。


そしてクシュリナ様は。


「王太子は新年の祝酒に酔って、心にもないことを言ってしまったようですわ。おほほほほほ~」


と、高笑いで誤魔化しておられたの。でも、一度口から出た言葉は取り消せるものではありませんわ。烈火のごとく怒った父が、婚約破棄に同意して……というより、学園に入られてからのフォルグワンダ様の行動を調べ上げられていて、それを理由にこちらからの破棄を宣言しましたの。


それをクシュリナ様が宥めすかして、逆に私との結婚をフォルグワンダ様が学園を卒業されたら、すぐに行うと決定されてしまったのよ。


クシュリナ様のご実家は、父と同じく公爵家ですの。力関係もほぼ互角(・・・・)ということで、クシュリナ様のお言葉を無下には出来ないのですわ。


それにクシュリナ様には、宰相様(侯爵家)、騎士団長様(伯爵家)、魔術師長様(侯爵家)、大商会の会頭(伯爵家)という方々がついておりますの。この方々のお言葉を無視するわけには参りませんものね。


とにかくこの一年は結婚準備に私はおおわらわでしたのよ。


そうそう、私はフォルグワンダ様と入れ違いに学園に入学しますの。結婚は致しますが、まだ国王陛下方もお若いですから、王子妃としての外交がある時だけ学園をお休みすることになるのですわ。


学園に通うことについては父がどうしてもと言い、陛下がご許可をくださいましたので、クシュリナ様でも異を唱えることは出来ませんでしたわ。


……


というわけで、わたくしは本日フォルグワンダ様と、結婚式を挙げたというわけですの。


それで私の今の楽しみは二週間後に始まる学園生活ですのよ。友人たちと学園生活を謳歌すると決めておりますの。


……って、おかしいわね。これでは今までに楽しい思い出なんてなかったみたいじゃない?


どうやらこの三年間のフォルグワンダ様のことで、他の楽しかった思い出が霞んでしまったようね。


これじゃあいけないわ。そう、私の一番楽しい思い出を思い出さなければ。


そうねえ、やはり初恋(ポッと頬を染める)……の、ことかしら。


私の初恋は三歳の時ですの。あの日のことは今も昨日のことのように思い出せますわ。

祖父母、両親、お兄様方を含めた我がライフェン公爵家は、王宮へと参りましたの。祖父母は先王陛下のご両親(つまり先々王陛下)と仲がよろしかったのよ。私の両親も先王陛下ととても親しかったの。それにお兄様方も、当時の王太子殿下(今の陛下の兄君)と、現在の陛下の側近としておそばにいらっしゃったわ。


ええっと、そうね、整理するためにも、当時のことを少し詳しく思い出そうかしら。


私はお兄様たちと歳がかなり離れているの。上のお兄様とは十七歳、下のお兄様とも十歳離れているのよ。そしてお兄様方が側近としてついた王子様方は、私と二十歳と十二歳、歳が離れているのね。


この頃は先々王陛下もご健在でいらして、私の祖父母といろいろな所へ小旅行にいらっしゃっていたと、お聞きしているわ。


それで、私は遅くに出来た子供ということと、待望の女児ということもあり、とても家族に可愛がられていたのよ。それに、王家でも女児が生まれにくく、先王陛下のご兄弟も、現王陛下のご兄弟も、男しかいらっしゃらなくて……。

ええ、そうなのですわ。私は王家の方々にも、非常に可愛がられておりましたのよ。


そうそう、この時には王太子殿下(今の陛下の兄君)はご結婚をなさっていらっしゃったの。王太子妃はこの国の公爵家の方でこの時には第二子(こちらも男だったそうですわ)を出産直後とかで、いらっしゃいませんでしたけど、王太子のお子様は少しの間いらしておりました。


この国の王家の方々は金髪に青い瞳の方が多いのですわ。先王陛下も、王太子殿下(今の陛下の兄君)も、今の陛下もその色をしておりました。


あっ、そうでした。王太子殿下(今の陛下の兄君)のお子様も金髪に青い瞳をしておりますわ。


……


ポポッ(思い出して頬がもっと赤く染まる)


ハア~、本当に素敵な思い出ですのよ。それまでにも王家の方々とお会いしていたはずでしたが、この時が初めて記憶に残ったというか……。


まだ三歳の私を、ちゃんとレディとして扱ってくださり、優しくエスコートしてくださいましたのよ。あの方は微笑んでお菓子や飲み物を勧めてくださいましたの。


本当に身目も麗しくて、私にとっての理想の王子様が、そこにいましたわ。


まあ、三歳で理想の王子様と言うだなんてと、おっしゃらないでくださいね。本当に私は嬉しく思いましたし、正しい王子様である彼に、恋をしたのですもの。



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