表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/35

第13球「『もえる異世界ファンタジー野球、僕らのアマゾネス』の『創造主』として転生せよ!!」

「はい……はい……」


 ロリ閻魔大王(えんまだいおう)は例によって、俺のツッコミなど完全無視し、お釈迦様(しゃかさま)との通話を続けている。


「広島県出身の冴えない高校球児・池田勝正(いけだかつまさ)ですよね、はい、今、目の前にいます。池田は極楽浄土(ごくらくじょうど)行き……ですよね……ええ、そのように当人に通知しておりますが……ええっ!? はぁ……そうですか……わかりました、では当方でうまいこと処理いたします。はい……はい……お任せください、この閻魔、いつでもお釈迦様の御意(ぎょい)のままに働かせていただきます……はい……はい……では、またよろしくお願いしまーす……はい……はい……」


 さすがにお釈迦様との通話を邪魔したら(ばち)が当たって、本当に地獄へ落とされそうな気がしたので黙っていた俺。


 保身に走る未成年。


 ていうか、通話の口調から察するに、お釈迦様と閻魔大王だったら、お釈迦様の方が格上らしいな、知らなかったよ……閻魔大王がお釈迦様の下請け業者みたいなものだっただなんて……


「さてと、お主にとって残念なお知らせがある」


 お釈迦様との通話を終えたロリ閻魔大王は、さっきまでの低姿勢が嘘のように、尊大な口調で俺に話しかける。


「なんだよ?」


 俺がぶっきらぼうな返事をしたのは、そのあまりの態度の変わりようにムカッと来たからだ。


「お釈迦様いわく、今、極楽浄土は定員オーバーなので、お主の極楽浄土行きは取り消しということになりましたー!」


「なんでだよー!! 定員オーバーってどういうことだよ! 定員ってぇぇぇぇっ!!」


 軽い口調で放たれた非情な宣告に、俺はついつい大声になる。


「なんじゃ、お主、そんなことも知らんのか。『定員』ってのは『規則によって定められた組識などの人数。また、乗り物・会場などの安全を考慮した上での収容人数』」


「そういうことを言ってるんじゃねぇんだよ! なんで極楽浄土に定員が存在してるのかって聞いてるんだよぉぉぉぉぉっ!!」


「まあ、人の話は最後まで聞けて……極楽浄土には定員オーバーで連れて行けないけど、命懸けで幼女を助けたお主を無間地獄(むげんじごく)に落とすのは忍びないというのがお釈迦様の(おぼ)()し……というわけで、ほれ……ああ、落ちてきた、落ちてきた……キャーッチ」


 ロリ閻魔大王は上空からゆっくり落ちてきた何かを両手でキャッチした。


「なんだよ、それ?」


「あれ? お主、このノートに見覚えない?」


 そう言ってロリ閻魔大王が見せてきた大学ノート、俺にはバッチリ見覚えがあった。


「ハッ!! そ、そのノートはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 俺はそのノートを奪い返そうとロリ閻魔大王に近寄ったが、ひらりひらりとかわされた。


「そう、高校3年間で野球選手としての限界を感じたお主が『読書が好き』という安易安直な理由で、小説家にでもなろうと思って、ネットに小説を投稿するため、ひそかに書きためていたネタ帳じゃ。その中でも、野球を題材にした、この『もえる異世界ファンタジー野球、僕らのアマゾネス』って作品が、お主は特にお気に入りのようじゃのう。何々? 『皆さん、こんにちは。私が実況アナウンサーのカレン・カーライル……』」


「か、返せよ! 読むなよ!!」


 ロリ閻魔大王が突如、大学ノートを朗読し始めたので、恥ずかしくなった俺はノートを奪い返そうとしたが、できない。


 曲がりなりにも閻魔大王に、ただの人間が挑んだところで太刀打ちできるわけはないのである。


「まあまあまあ……最後の4割バッターと言えば、テッド・ウィリアムズ……なるほど、そこから取って、ダイナ・ウィリアムズか……」


「だから読むなて!!」


「……ところでお主、なってみたいと思わんか? この、『燃える赤ヘル僕らのカープ』をもじって『もえる異世界ファンタジー野球、僕らのアマゾネス』……『もえる』がひらがななのは『燃える』と『萌える』のダブルミーニングを狙っているから……希望略称『もえゾネス』……の主人公、全能力Sのパーフェクト美少女野球選手、ヴィクトリア・ペンダーグラスに」


「な、なんですと?」


 唐突な提案に、さしもの俺も目が点。


「お釈迦様は、お主を極楽浄土に招けないお詫び及び代替案として、極楽浄土と同じように、お主の願いがなんでも叶う異世界への転生を提案なされたのじゃ。どうじゃ? この提案を受けるか? 受けなければお主は無間地獄行きじゃが……」


「そ、そんなこと急に言われても……」


 どうも俺は(うたぐ)り深くていけない、「お主の願いがなんでも叶う」などと言われると、何か裏があるような気がしてならず、すぐに「受けます!」などとは言えない。


「何を迷っておる? 『アレ』を失うのが嫌なのか?」


「『アレ』って何?」


「言わなくてもわかるじゃろうに……男にだけついてて、女にはついてない、ちん……」


「わ、わかったわかった! 言わなくていいから!!」


 まさかロリ閻魔大王が下ネタをぶっ込んでくるとは思っておらず、なぜか俺の方が赤面してしまう。


「何を迷う必要がある? ヴィクトリア・ペンダーグラスとして異世界に転生すれば、お主の願いはすべて叶うのじゃぞ。しかも苦労も何も絶対しない。なぜだかわかるか?」


「わかんない」


「ならば教えてやろう。お主が転生する世界の創造主はお主。言わばお主はこの異世界の『神』として転生するのじゃ。登場人物や世界観の設定から何から何まで、すべてお主のお望み次第。お主が嫌いなキャラや設定は一切出てこぬ夢の異世界に転生。これはまさに極楽浄土そのもの、いや、極楽浄土以上の愉悦(ゆえつ)の世界ぞ。なんたって『お主が創った世界』に転生し、『お主自身が生み出した、好みのタイプのキャラたち』に囲まれて日々を過ごすことができるんじゃからのう、これ以上の幸せは他にないと断言できる!! さあ、迷うことなど何もない!! 決断せよ、池田勝正!! お主はヴィクトリア・ペンダーグラスとして、自らが創造主の異世界に転生するのじゃ!!」


「で、でも……」


 そう言われても全然ピンと来ないし、やはりうまい話には裏があるような気がしてならない、そんな無邪気に「ヒャッハー! 転生しますしまーす!! これでもう金にも不自由しないし、いろんな女とヤリたい放題なっしー!! ヒャッホー!!」などとはどうしても思えない……


「うーん……でも、その異世界に転生しないと、無間地獄行きか……うーん……」


「まだ迷っとるんか、お主! お釈迦様の顔に泥を塗るでない!!」


「でもなぁ……絶対何か裏があるに違いないよなぁ……うーん……『創造主だからやりたい放題』とか言うけど、本当にやりたい放題やったら、(ばち)が当たるんじゃないの? 仏教って因果応報(いんがおうほう)の世界でしょう?」


「ええい! 小早川秀秋(こばやかわひであき)もビックリの優柔不断! 決断力のない奴め!! もうええわい! お主の決断なんか待っとられんっ!! すべてはお釈迦様のお導きのままに!! 南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)……南無阿弥陀仏……池田勝正よ、ヴィクトリア・ペンダーグラスになぁぁぁぁぁぁれっ!!」


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 問答無用に、謎の光に包まれて、異世界に連れて行かれた俺が最後に思ったことと言えば、


「閻魔大王が念仏唱えるだなんて、どんな世界観だよ……」


 ということだった。


 こうして俺は、お釈迦様とロリ閻魔大王の思し召しにより、半ばむりやり池田勝正からヴィクトリア・ペンダーグラスに生まれ変わらされたのだった。


 それにしても……


 極楽浄土が定員オーバーだから、異世界転生て……


 そんな話、今まで一度も聞いたことがないよ……


 アホけ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ