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ダリア戦記   作者: 獨國薯夫
魔術干渉
14/15

OITA 1/12 1973

耳元で目覚ましがなっている。目を開けるが、しかしそこはいつもの我が家ではない。ハッと驚いて目を大きく開けたと同時に今までの記憶を思い出す。そういえば、ここはホテルだった。

自然と布団をめくったが、起きたときから部屋が暖かい。耳を澄ますと暖房が忙しく動いているのがわかる。電気代のその金を気にせずに暖房が使えるのは素晴らしい。


昨晩もらった紙を見ると、このあとはレストランで朝食をとる予定になっている。

さっさと身支度を終え、レストランへと向かった。


「科学文化機構の方ですか?」

受付の男性が私に聞いてくる。


「はい。」


「お疲れ様です。既にお連れの方は入られております。ではどうぞ」


案内された場所はとても広いバイキング形式の会場だった。席につきあたりを見回すと大人だらけ。ただその中に一人だけ、子供が混じっていた。違和感だらけでまるで悪い大人達に誘拐されたみたいに座りながら、黙々と食事をしている。そういえばと先日の手紙を思い出した。


“ダリアに行く際あなたには連れ添っていただきたい人がいます”


きっとあの子がその少女なんだ。僕は確信した。


席に座り私は遠目で少女を見つめた。

僕よりも少しくらい背の低い少女。耳を隠しながら首元まである髪は、いわゆるボブヘアだろう。その丸みを帯びたかわいらしいシルエットに、さらに気品のある洋装を身に着けいかにも名家の少女という感じがする。


たぶん年下だろうし話しかけるのは意外と容易だな。

彼女が食堂から出るタイミングを見て話しかけようとそう考えながら皿に手を伸ばした。


何分か経ったのちついに彼女が席から立った。私もそのあとを追って、そして話しかけた。


「こんにちは」


「だれ?」


「僕は君と一緒にダリアへ行く一人さ。」


「あぁ。あなたなのね。意外と良さそうな人ね。」


あれ、なんとなくそっけない?

立ち止まって話を続ける。


「ならよかったよ」


びっくりするほどの態度ではないが、確実に同世代とは離れた風格をしている。そのほうが彼女には似合っている。


「あんなにも大人たちがペコペコしているからさぞオコガマシイ子供かと思ったら、出が名家じゃない人間はまだましなのねぇ」


「それで、あなたは私にとって何になるの?」


「はい?」


急な言葉に驚く。少女の顔が笑っていないのは冗談じゃないということだろうか。


「そう。知らないのね。」


少女はスッと俯く。あきれように、そしてその表情は暗い。


「え?」


「あなたはもう少し自分の"価値"を知っていたほうが良いわよ。」


「価値?」


「そう。あなたから感じるその強力な魔力は、偽物じゃないでしょう?」


はっと、少女の言葉は核心を突いてくるようだ。魔力を感じとれるということは彼女も魔術使だろうが、強力な魔力という言葉は嬉しい。


「偽物。そうではないと思うけどな。自分でも使ったことがないからわからないんだよ。」


「ふーん。意外ねぇ。あなたぐらいの魔術使はみんな自分の魔術にうぬぼれてもっと傲漫なんだけど。それとも本当に知らないのかしら。」


「僕はそんなのとは違うよ。確かに自分の能力についてはさっぱりだけれど、知ったとしても決して放漫な態度はおかしいと言うね。」


少女がそっとこちらを向き、それ以上に上目遣いで目線を合わせてくる。やはり相手の意見を否定する言葉はよくなかっただろうか。


「本当にそう言えるかしら?自分の能力を知ってしまえば、誰しも惚れ惚れしてしまうはずよ。」

「だって、明確に人の上に立つことができるのだから。」


向けられた目線をすぐに外してどこかにつぶやくような、それでいて語気を強めたような言い方だった。


「そうかもしれないけれど。それでも僕は能力を誰か人のために使いたいな。」


「はぁ。高貴な考えね。尊敬するけれど、私にはそれが、本心じゃなくてそうありたいと願って自分を抑えているだけにしか見えないのよね。」


返す言葉が見当たらないのは、図星だからだろう。心のどこかで誰かの上に立ちたいと思っていること自覚せざるを得ない。


「図星かしら?でも、そういうの嫌いじゃないわ。嘘でも、綺麗な意思を持っている人。」


どうやら、嫌われてはいないらしい。顔には出さないが僕は心の中で少し安堵した。


「そういえば。名前を聞いていなかったね。」


「あら、私は面影(おもかげ)才媛(さいえん)よ。あなたは?」


「僕はハルだよ。よろしく。」


「珍しい名前ね。こちらこそよろしく。」


自信ありげな絵顔でそう言いながら、そっけなく振り向きどこかへと歩き出した。


()()()()()()()()


「その名前、珍しいのは君もだよ。」


なんだか終始少女に圧倒された会話だったけれども、どことなく私と波長が合いそうな子だと、そう思う。それが分かっただけでも、私のちょっとした不安が崩れていくのを感じた。

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