8.〜ちょっとした日常〜
俺はキリハに呼び出され、サラを起こして食事に向かった。
食卓にはメンバーの皆の姿があった。
キリハ、カオリ、ケン。
未だ指名手配されているので少し期待していたのだが、やはりディアスの姿はなかった。
だがメンバーの皆はそんな素振りを一切見せない。
俺は席の前で立ち尽くす。
「お前らはディアスが、仲間が死んでもなんとも思ってないのか!」
俺は突然怒鳴り出す。それは無理もなく。仲間の一人がいなくなったというのにそんな素振りを一切見せず、呑気に食事をしようとしているのだから。
すると俺の背後に人影が。
「俺がどうしたって?」
俺は驚いき後ろを振り向く。なんとそこには死んだはずのディアスの姿があった。ディアスは失った片腕を氷で再現していて、他には特に変わったところもない。
「ディアス……なんで……」
俺はさらに驚き、後の椅子に倒れ込み背中をぶつけた後、倒れ込みしりを着いた。
「俺があんな所でくたばる人間だと思ったのか?」
「ディアスはそんなこと言ってるけど、彼はただ魔法が効かないだけよ」
キリハは付け加えるように言った。
魔法が効かない!?
「じぁあ、あの時力尽きたように倒れたのは……」
「演技だ。片手を失って戦えるような状況じゃなかったからな」
だから俺に剣を託して……。そのあと敵の隙を伺って逃げたということだろう。
「あの時は本当にすまなかった。だがおかげでいいものも見れた」
「いいもの?」
そんな話をしていると食卓にメイド服を着た少し年上の可愛らしい人が入ってきた。メイドらしき人はワゴンの上に乗せた豪華な食事を運んできてくれたらしい。
「おっと食事の時間だこの話はまた今度」
そういうとディアスは自分の席の方に歩いていく。
なんかいいように逃げられた気がした。
メイドは食卓にどんどん食事を並べていく。俺は席に座って食事が並べられていくのを眺めていた。
俺はこんなキラキラした料理は見たことがない。
「どうぞ! ごゆっくり召し上がってください」
そういうとメイドらしき人は微笑み、部屋から出ていった。
俺は目の前に出された食事が早く食べたくてしょうがない。
だが皆がまだ食事に手をつけてないので、なんだか食べづらい。
ここ一週間カップラーメンを食べていたと言うのもあるが、ここまで美味しそうなものは見たことがなかった。
はやく食べたい……。
そんな事を思うのはやはり俺だけではなかったらしい。
「すごいのすごいのー。今日もまた豪華なのー」
「毎日これが食べれるなんてキリハさんは幸せですよ」
いやいやいや、べつに。みたい事を言うキリハはなんだかとても羨ましく見えた。
この料理を毎日食べれるなんて……。
「ずっ、ずるいぞ!」
「ずっ、ずるいです!」
俺とサラは同時に机をバシッと叩き突然そんな事を言い出す。
そして皆の視線が俺とサラに集まり、少し沈黙しかける変な空気に。
「私もこんな豪華な食事を毎日のように食べてみたいものです!」
「キリハはどこかの国の姫様かなんかなのか?」
俺とサラは裕福な暮らしに嫉妬してキリハにでたらめを言う。
「あれっ、言ってなかったっけ? 私はグレンテ王国の第三王女よ。訳あって昔から縁のある校長の家に居候してるのよ」
本当にお姫様だったのかよ。前世は勇者で今は王女だと……どれだけ裕福なんだよ。
「それよりもシルクさんとサラちゃん、二人とも息ぴったりだったの。私、二人を見て南の町に住んでる双子の妹を思い出したの。この結界を解いたら早く会いに行きたくなったのー」
どうやらカオリには南の町に双子の妹がいるらしい。
さっきのキリハの話しからも、この街ニニホにはいろんな町や国の人が来ていることがわかる。
「そのためにも結界の破壊は最重要作戦よ! 皆で頑張りましょう!」
俺達はその後、豪華な食事を取りながら盛大に盛り上がった。
私は魔王サクヤ。今は転生してサラという名前です。とある日をきっかけに私は全てを思い出すことが出来ました。
私は前世、勇者に殺されました。しかもその勇者は今私の目の前にいます。しかも湯槽で一緒に寛いじゃってます。
それは私が最近仲良くなったキリハさんです。記憶が戻った時の夜、私がどれだけ辛かったかなんて皆さんにはわかりません。その影響でここ一週間キリハさんとは距離を置いていたので少し話しづらく、今変な空気になっちゃってます。
「あ、あのぅ、キリハさん?」
私はキリハさんと仲直りがしたいです。その第一歩『声をかける』に成功しました!
「ど、どうしたのサラ」
こんなに動揺してるキリハさんは初めて見ました。キリハさんも少し気にしているようです。なんかちょっと気まずいです。
「ごめんなさい!」
やばいです。言葉が浮かんで来ませんでした。なんか唐突すぎました。
「あ、あのさ、サラ。私って、そんなに嫌な性格してるかな……」
「そ、そんなことはありませんよ!」
突然カオリが言い出した言葉にサラは素で否定する。
「初めてじゃないんだよ……」
え?
「私、一週間くらい距離置かれるの、これで二回目なんだよ……」
キリハは少し涙目になって嘆いた。
「ほ、本当にごめんなさい! でも私そういうつもりじゃないんです」
「本当に? 私のこと嫌いじゃない?」
私はこんなキリハさんを初めて見ました。
これはいつもの勇敢なキリハさんじゃないです。弱々しくてほっとけないぐらいの小学生キリハさんです。
「本当です。多分そのもう一人もキリハさんを嫌いなんかじゃないですよ」
「なんでそう思うの?」
「キリハさんはどこからどう見てもいい人ですから。嫌いになるのは魔王くらいですよ」
私も魔王だったんですけどキリハさんを嫌いになったわけじゃありません。むしろ大好きですよ。
「サラ……ありがとう」
そういうとキリハはサラに飛び込む。
ちっ近いですよ……。
少し内気なサラはそんな事を思いながらも飛び込んできたキリハをあやした。
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