6.〜気まぐれで〜
目が覚めると、俺の視界に入ったのは知らない天井だった。
俺は確か……禍々しい剣で……。
俺は体を確信すると、俺の体は包帯がぐるぐる巻きになっていた。
「生きてたのか……」
俺はどこかで「もういいのに」と思っていた。
前世の全ての記憶を取り戻した俺は、キリハへの恨みや人間そのものへの恨みを思い出してしまいどうすればいいのか分からなかったからだ。
俺は部屋に置いてあったディアスの刀を取り、知らない部屋から出た。
廊下には、俺の方へと向かってくるキリハの姿があった。キリハは俺のかえの包帯とお茶を運んできてくれていた。
「目を覚ましたの……」
キリハは驚いた表情を浮かべたあと涙を浮かべていた。
「あんた一ヶ月も目を覚まさなかったのよ! もう目を覚まさないんじゃないかって……」
キリハは俺にしがみついてきた。
一ヶ月!? 俺はその間ずっとキリハに世話をされていたのか……。
「もうちょっと早く目、さましなさいよ……バカ……」
キリハが流した涙が俺の体に巻いてある包帯に染みる。
だが……。
「すまない、俺はキリハの思っているようなやつじゃなかった」
「えっ?」
その意味深な言葉に、キリハは涙を流しながら呆然とした。
「俺はキリハと、皆と一緒にいては行けなかったんだ。今までありがとう……」
そう言うと俺は家から出ていった。
校長の家だったのか。
家の外に出るとそこは見覚えのある景色が広がっていた。
そういえばキリハはディアスの話をしなかったな。俺に気を使ってくれたのだろうか。
俺は家の方向に向かって歩き始めた。
「あれっ、おかしいな……なんで……」
俺の視界はものすごくぼやけていた。俺の目から頬に流れるように水が通っていた。
俺は手で両目を押さえて水を拭き取るも、水は目から大量に出てくる。
キリハ……。
それから一週間後。
俺は学校に行くことをやめて家に引きこもっていた。俺は母さんが死んでから、ずっと自分で飯を作って食べていたが、この一週間俺は飯を作る気力も出ず、カップラーメンで生活していた。
俺は今日の夕飯を食べようとしたが、カップラーメンの残りがないことに気がついた。
そして俺は一週間ぶりに外に出てカップラーメンを商店街へ買いに行こうとしていた。
外に出ると目底までくらませるような強い光が刺した。
俺は日光と戦いつつ商店街に向かった。
今日のラーメンは醤油がいいかな。
そんな事を考えている時、俺と戦っていた日光は輝きを失い、空には超巨大な魔法陣が。
「どうなってるんだ……」
「やぁ諸君。俺は英雄ジン」
魔法陣は巨大なモニターのようなものを作り出すと、動画が流れ始めた。街の中はざわついている。
「今から簡単なゲームを始める!」
ゲーム? ジンが何を考えているのかわからないが、どうせ碌でもないことに決まっている。
「ゲームの内容は簡単だ! ただ今から指名手配する犯罪者たちを俺の元に連行する。ただそれだけ」
その時モニターには俺、キリハ、サラ、ディアス、カオリ、ケンの反乱軍全員と俺の学校の教師達の顔写真が映し出された。
「賞金はモニターの通りだ!」
キリハ 八千万円
ケン 五千万円
カオリ 五千万円
ディアス 八千万円
サラ 一億円
シルク 一億五千万円
俺には一億五千万円もの賞金が課せられていた。
俺がジェノバだと知っているジンにとって、俺は一番の天敵なのかもしれない。
この世界には元勇者のキリハもいるし反乱軍の皆は大丈夫だろう。まぁ俺にとってはどうでもいい事だが。
「では、ゲームを開始する!」
ジンがそういうとモニターや魔法陣が消えて、太陽の光が俺に降り注いだ。
俺が再び目をくらましていていると。
「いたぞ! シルクだ!」
早速街の皆が声を上げて俺の方へ走ってきた。
やはり街の皆は全力で俺を狙っているらしい。
俺はひたすら逃げた。
街の外に逃げれば街の人々に追われることはないだろうと思い、街の門の所まで全力で走った。
だが街の門は閉じていて門番の人間もいた。
今の俺なら人間の門番は簡単に倒せそうだが、門が閉じているのであれば外に出ることは出来ない。
ニニホの門が閉じると特殊な結界が街を覆い、門の破壊は愚か誰一人街への出入りが出来なくなる。
街に犯罪者が現れると門が閉じるようになっているので、この街からは出ることが出来ない状況だ。
ジンの悪事を世間に暴露すれば俺達は勝てる。だが街の英雄が普通そんな事をするわけないので、街の人々には信じてもらえないだろう。
俺は追われながらもそんなことを考えていた。
いっそのことこの街を吹き飛ばしてしまおうか……。
と考えていると俺の頭にキリハ達の顔が浮かんでくる。
たった数日の出来事なのに俺はキリハを──反乱軍の皆を見捨てることは出来ない……。
そんな事を考えている時、俺の腹の傷口が少し開く。俺は腹の激痛に耐えながら走り続ける。
俺は街の路地裏を駆使してなんとか街の人々をまくことが出来た。
俺は路地裏の壁に腰掛けた。
俺はしばらくここに身を潜めることにした。
だが俺は今の疲れのせいか、すっかり眠ってしまっていた。
俺は目が覚めると視界に入ったのは知らない天井だった。
たしか俺は街の人々に追われてて……。
「俺は捕まったのか!?」
叫んで飛び上がった。
今の声に反応したのか、急いでこっちに走って来るような足音がした。
俺は咄嗟に身を隠そうとするがそれは間に合わず、扉が開く。
部屋の扉が開くとそこにはサラの姿が。
「起きてたんですか」
サラは息を荒くしたような声で言った。
俺はサラの姿を見て少し安心する。
「あぁ、だがどうしてそんなに慌ててるんだ?」
「先程私の家のドアで力尽きたように眠っていたので……」
俺そんなふうに寝てたの!?
気づけば腹の激痛がなくなっていた。
まさか腰掛けていた壁がサラの家の壁だったなんて。
「ん? ドア? 俺が腰掛けていたのはたしか何もない壁で……」
「結界魔法が張ってあるんです。私も一様狙われているので……」
ドアが壁に見える結界魔法? でもそんなものではサラの家の場所はおそらく街の人々にバレているのだし……。
「まさか、テレポートで家の場所を移動できるのか!?」
テレポートとは究極魔法の一つで、使えるものはこの世界にはもう居ないとまで言われている魔法だ。百年前は俺の妹だけが使えていた魔法でもある。
「はい! ですので私の家は、今はここということです」
サラはしれっとそんなことを言う。
ということは俺が壁に腰掛け寝ていた家がサラの家と入れ替わったという訳だ。
だが一体どうやってテレポートを覚えたのだろうか……。
そんな時、俺はあることを思いついた。
「サラ! 街の外にテレポートすることは出来ないのか?」
街の外に出れたら街の人々に追われることはなく、俺達の勝ちだ。
「それが出来ないんです。おそらく街の門が閉じているのが原因でしょう」
街の門の結界魔法はそこまで強いものなのか……。どうやら俺の閃ではどうすることもできんらしい。
「助けてくれてありがとう。だが俺は直ぐに外に出て行くよ」
「えっ、どうしてですか? ここにいれば当分のあいだ安全ですし」
当然のことながらサラは驚いた表情をみせる。それと同時に俺を心配してくれた。
俺は少し下を向いた。
「俺は人と関わってはいけないんだよ」
そんな事を言い出俺にサラは呆然とする。
俺はそのまま玄関の方に向かう。
「待ってください!」
サラは大声で叫んだ。
俺は驚き振り返る。
「それは人が苦手なんですか? それとも人が嫌いなんですか?」
俺は戸惑う。サラが怒ったところなんて初めて見た。
「なんで人と関わってはいけないなんて言うんでですか!」
それは……。
「人は、人々は支え合って生きていくんです! だから私は人を素晴らしい種族だと思うんです。だからそんな……人と関わってはいけないなんて……悲しいこと……言わないでくださいよ……!」
俺を見ながら途中泣き出すサラを見て、言葉を聞いて、人間が好きだった頃の俺を思い出す。
支え合って生きていくから素晴らしいか。
俺は玄関の方を向く。
「シルクさん!」
玄関の方に向いた俺に涙目になったサラが叫ぶ。
「大丈夫だ。メンバーと一緒にジンをぶっ飛ばしてくるだけだ」
俺は何かが吹っ切れたかのように宣言した。
「シルクさん……」
サラはどこか安心したような声で俺の名前を呼んだ。
どうやら俺は彼女に、人に心を救われたらしい。
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