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サタンクローズ〜魔王が転生して人間に〜  作者: 白石 月
第一章 全て始まりにすぎない
3/19

2.〜転生して人間に〜

9月29日22時に1話の追記をしました。

誠に申し訳ないです。

御手数ですが、2話は前回の続きになりますので1話の方からご高覧ください。

気づけば俺は何も無い場所にいた。

 「ここは……」

 「起きたか魔王」

 この何もない空間でどこからか声が聞こえる。俺は遂に頭がおかしくなってしまったのだろうか……。

 そんな事を考えていると、何もない空間に亀裂が入り俺の目の前が光り出す。

 「私は神さま、ここは天界。お前は死んだんだ」

 光と共に現れたのは幼女体型の神さま(?) だった。

 「えっ……そういえば……」

 少し忘れかけていた過去を段々と思い出してきた。

 「だがお主は、転生の権利を得た数少ないものなのだ」

 「転生?」

 「もう一度この世界で生きてはみないか?」

 もう一度繰り返してなにになるってんだ。

 「俺はもう、いいですよ……」

 「そう釣れんことをいうな」

 神さまはどうしても俺を転生させたいのか?

 「あの……ひとつ聞いてもいいですか?」

 「いいぞ」

 神さまはにこやかに応えた。

 「なんで俺なんですか?」

 どうしても気になるので俺を転生させる理由を聞いてみた。

 「くじ引き」

 「えっ?」

 聞き間違いだよな……。

 「当選したの」

 そんな適当なの……。

 「俺は魔王の人生なんてうんざりなんです! 他の人を転生させてあげてください!」

 俺は神さまに対して必死に抗議する。

 「一度決めたことは変えないもん」

 この神さまちょっと自分勝手すぎないか。俺はどこかで怒りを覚える。

 「ていっ!」

 神さまは俺を突き落とした。そして俺落下中謎のゲートが真下にあることに気づいた。

 「行ってらっしゃーい」

 「おい! まて! ふざけんなー!」

 俺は落下するままにゲートをくぐった。

 

 気づけば俺は赤子になっていた。それも人間の赤子になっていた。

 俺はシルク=ヴィ=アドルスキと名付けられた。

 俺はこの時前世の記憶を忘れていた。

 

 俺がニニホで生まれて五歳になったころ。

 この都市に関する大まかな歴史がわかってきた。この都市を約百年前、大魔王ジェノバが一度滅ぼしたことや、最後の勇者がジェノバと相討ちになったこと、魔王ジンが市民を助け英雄になっていたことなどだ。

 「大魔王ジェノバって悪い奴なんだな」

 

 そして俺が十歳の時のある日。

 俺は母さんと魔法の初訓練をしていた。俺は魔法を使うのは初めてだった。なので俺は自分の力を知りたくてワクワクしていた。

 

 俺と母さんは庭に出て魔法の練習を開始する。

 「魔法ってのはこうやって使うのよ」

 そういうと母さんは詠唱を唱え始めた。

 「アクアショット!」

 母さんは庭にある魔法の結界で包まれた木に向かって魔法を放った。母さんのアクアショットは木に傷をつけていた。

 「やって見なさい」

 

 俺は母さんの真似をして詠唱を唱えようとした。

 「水の精霊より力を……なんだっけ」

 俺は詠唱をど忘れしてしまったが、なんとか魔法を使ってみた。

 「アクアショット!」

 俺は無詠唱でアクアショットを木に向かって放った。俺のアクアショットは木を粉々にしてしまった。

 「えっ!?[#「!?」は縦中横]」

 俺はとても驚いた。詠唱をきちんと唱えていなかったのに魔法が使えて、しかも魔法の結界を貫通し、木を粉々にしてしまったからだ。

 「ごっ、ごめんなさい!」

 「えっ、えぇ……」

 母さんは戸惑っていた。

 「今のは……」

 母さんは何か考え事をするように部屋に帰っていった。

 そしてそのまま夜になり俺はベッドでぐっすりと寝ていた。

 

 ガサッ! ガサッ!

 俺は物音で目が覚めた。そのとき俺の目の前にはナイフを持った人影があった。

 俺はとっさの行動で無意識にアクアサーベルを作って人影の胸に突き刺した。

 突き刺した体には手ごたえがあった。だがそれは……。

 「えっ?」

 人影の正体は母さんだった。

 「なんで……」

 俺は母さんに突き刺したアクアサーベルを引き抜いた。

 その時俺は母さんの血を大量に浴びた。

 「やっぱり……ね……」

 そう言って母さんは死んでしまった。

 俺は訳が分からなかった。俺をただ殺したかったのだろうか……。

 

 俺はその日眠れなかった。

 水を飲むためリビングに行ってみるとテーブルの上には一枚の手紙が置いてあった。俺は手紙を手に取り読む。

 『 あなたがこの手紙を読んでいる時、私はまたシルクのことが殺せなかったのでしょう』

 「またってなんだよ……」

 最初から母さんは俺のことを殺せなかったんじゃないか。

 『私はあなたに伝えないといけないことがあります。まず、あなたは大魔王の転生者ですね? あなたは無詠唱で魔法が使えた。それにあの桁違いの威力です。誰でもわかってしまいます。あなたがこれから人間としてこれからも生きていくのだから魔法は極力控えてね』

 今後の俺の心配してんなよ……俺のこと殺そうとしたじゃないか……。

 俺はそんな事を考えてると、無意識に涙がこぼれる。

 『それとこれは母さんとの約束です。学校、やすまずにいってね。友達、たくさんつくってね。街の破壊、絶対やめてね。あなたはいい人になるはずです。私が育てた自慢の息子ですから』

 『それとこれは母さんからの質問です。答えは空で聞いてます。声に出して答えてください。私が母さんで良かったですか? 私はいい母さん、出来てましたか?』

 「当たり前だろ……俺の母さんは……最高の母さんだよ……」

 その後俺は一晩中泣き続けた。

 そして俺は大魔王の転生者ということを納得した。あの力を見るに、納得せざるを得ないからだ。


ご高覧ありがとうございます!

感想等頂けると幸いです。

次回から学園生活ものとなります。

次回は10月1日午前0時に投稿する予定です。

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