6.〜元魔王の本当の力〜
「誰だお前たちは!」
セリナの死刑を命令した男が俺たちの方を見ている。
「反乱軍だ。今からお前をぶっ飛ばして、セリナを助ける!」
「ほぅ、反乱軍。その顔はシルクとか言う聖剣使いだな。魔王様から見つけたら処分するよう言われてる、安心しろ、一瞬で灰にしてくれる」
「やれるもんならやってみろ」
俺の言葉にムキになり男は詠唱を唱え始める。
「インフェルノランス」
俺は聖剣を取り出し前に出す。
「無駄だ。私の魔法はそこら辺の聖剣の力など、とうに超えている」
なっ……。
そして炎の槍は俺の方目掛けて一直線にうってくる。
「それはどうかな、これはただの聖剣じゃないんだぜ」
隣にいる霧雨が悠長に喋り出す。
そしてオレの聖剣はインフェルノランスを一瞬で消滅させた。
「なにっ!?」
「……いわゆる、神器ってやつだ」
俺は重力断絶魔法を剣にかけて男に斬撃を飛ばす。そしてその斬撃は男にめがけて一直線。
だがそこでセリナが父親をかばって一緒に斬撃をかわした。
「セリナ!?」
「この男は私の父親なの。人間なの。シルクくんに罪を背負わせる訳にはいかないじゃない?」
「おぉ、セリナ助けてくれたのか。たまには役に立つじゃないか。ありがとう」
「だから私が殺すわ」
「セリナ!? 何を、私は父親だぞ! おい! セリナ!」
「私を今殺そうとしたのは誰? 私はあんたの娘なのよ!」
そしてセリナは詠唱を唱え始め、炎のナイフを作り出した。
「死ね!」
──!?
「──やめろ」
セリナの手を霧雨が受け止めた。俺は少し安心した。だがセリナは──。
「離して! 私がこいつを殺さないと! こいつさえいなければ、私は日々平穏に楽しく暮らしていけたのに」
「やっていい事と、悪いことがあるだろ? 俺がこいつの身柄を預かる。だからこいつの処分は俺に、いやグレンテ王国に任せてくれ」
そう言われた後、セリナは父親を睨みつける。
「わかったわ」
「何を言っている小僧ども! 私の真の力を見せてやる!」
そう言うと父親はニヤリと笑い詠唱を唱え始める。
「おい、何を!」
霧雨が言いかけた瞬間、そこで大爆発が起こる。
地下の真上にあった建物は一瞬で灰と化した。そして俺とセリナの目の前には大の字になった霧雨の姿。
「霧雨!」
「無事だったか……済まない。俺はもう戦えそうにないようだ……。あとは頼んだぞ……」
そう言うと霧雨は目を閉じた。
「霧雨! おい霧雨! 霧雨!」
霧雨が目を覚ますことは、もうなかった。
「ほう、二人を守って自分は死ぬのか。なんて可哀想な死に方だ」
俺の目の前には巨大な炎の巨人が立っていた。
「だまれ……」
「あっ?」
「人の生き様を馬鹿にするな!」
俺は聖剣を振り斬撃を飛ばした。だが斬撃は巨人に触れた瞬間に消えてしまった。
「なんだ? 今の攻撃は? 痒くもないぞ?」
「ならこれならどうだ?」
そう言うと俺は天に手を上げる。
「ミィーティアライト!」
──!?
オレは魔法を使った。それも大災害級魔法を。聖剣の力で斬撃を制御できているのなら魔法だって出来るかもしれない。そんな軽はずみの気持ちだった。
空に大型の魔法陣ができ、多数の隕石が炎の巨人を襲う。
「貴様! 何を……」
隕石は巨人の喋る間も与えずにどんどん落ちていく。
やばい、止まらない……。
──そして数秒後。
炎の巨人はおろか、二二ホの街は一部だけ悲惨な状況と化した。
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