表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サタンクローズ〜魔王が転生して人間に〜  作者: 白石 月
第二章 少女の心を救いだせ
15/19

3.〜そして少女は嘆いた〜

カオリ達の言い争いはエスカレートしていく。


 「わたしじゃない! 私じゃないのに……なんで皆分かってくれないのよ!」

 「お前以外に誰がやったと言うんだ。俺は見たんだ。お前が俺達の故郷を燃やし、家族を焼き払ったところを」


 ディアスはセリナに追い討ちをかけるように怒鳴る。ディアスに怒鳴られるとかなり怖いだろう。


 「私だって、私だって……っ、誰がやったかなんてっ、わかんないですよ!」


 セリナは鼻をすすり、涙をこぼしながらながら嘆く。

 パシンッ!

 カオリがセリナの頬を叩く。


 「私は見たの! あなたが私の目の前で! 目の前で……カンナを……!」


 カオリは涙目になりながら怒鳴る。おそらくカンナとはカオリの双子の妹なのだろう。

 

 ドカンッ!

 

 その時突然木が壊れるような音が鳴る。そして扉から聖剣を持ったシルクが現れる。


 「「シルクッ!?」」


 カオリとディアスが同時に音がしたドアの方を見て、俺の名を呼ぶ。

 魔法で結界を張っていたはずなのに出てきたのだ。普通驚く。

 そして俺はドアの傍にいるセリナをかばって立った。


 「やっていい事と悪いことがあるだろ……」


 俺はカオリの仕打ちに対して激怒する。


 「サラのためを思って俺はこの作戦に参加した。だがカオリやディアスは仇だのなんだのって──」

 「何が言いたい! 俺達の故郷を破壊したのはこいつなんだ。今だってなにをやらかすか──」

 「本人が違うって言ってるだろ!」


 シルクの放った言葉にはなんの根拠もない。そしてディアスの放った言葉には根拠がある。この口論はシルクが負けるだろう。だがシルクはそれを認めない。


 「シルクはもっと冷静なやつだと思ってた!」

 「冷静じゃないのはどっちだよ!」


 そして俺達の口論は終わりが見えないなと思っていた時だった。


 「先輩、捕まって!」


 俺はとっさの行動で、ドアのそばに居るセリナの手を握りドアを出た。

 店の傍には名前を知らない女子生徒姿があり、魔法の詠唱を唱えていた。

 俺はその女子生徒を無視してセリナの手を握ったまま走った。

 

 「インフェルノランス!」

 

 完成した魔法が飛んでくる。

 だが俺にはもう魔法は効かない。この聖剣があるかぎり。

 俺は聖剣をインフェルノランスに当てる。するとインフェルノランスは一瞬で消え去る。


 「えっ!?」


 女子生徒は驚いているようだった。俺も今のこの状況に驚いている。

 まさかこんなことになるとはな……。

 俺達はそのまま遠くに走り続けた。

 

 そして俺はセリナを連れて自分の家までやってきた。

 セリナは今日、俺の家に泊まることになった。

 食事は久しぶりに俺が作り、セリナには先に風呂に入ってもらっていた。

 食事の準備ができると俺はセリナを呼びに行く。


 「セリナ、ご飯できたぞぉおお?」


 俺とセリナは同時に風呂の扉とその手前の扉を開けて鉢合わせる。


 「ごめんなさい!」


 そう言って俺は扉を閉めた。

 その後セリナの反応はなかった。ご飯の時も……。

 だがそんな俺にこっち来てと手を振った。

 俺はセリナの誘いに乗りベッドの方に近づく。

 おそらく先程の出来事の話だろう。


 「ごめんなさい!」

 「あの、えぇ!?」


 俺の『ごめんなさい』とセリナの『あの』のタイミングが同じだった。

 そしてセリナは驚いた。


 「その、俺がノックさえすれば──」

 「その話じゃないの」


 えっ?


 「もちろんその件は私も怒っているわ」

 「ごめんなさい」


 俺はごめんなさいを連呼する。


 「でもそんなことより、ありがと。助けてくれて」


 『そんなことではないと思うが』という気持ちは置いておこう。許してくれたんだ。

 ていうか俺は本当になぜあんなことをしたのだろう。もしかしたら本当にセリナがカオリ達の南の島のオーガス村を滅ぼした犯人なのかもしれないのに。


 「私ね、嫌われてるのよ」


 『知ってる。見てたから』なんて言えないよな……。


 「オーガス村を滅ぼしただのって言われてね。でも私、本当にそんなことしてないのよ。オーガスって村も知らないし、私にはそんな力もない」


 この時俺はなんの根拠もないがセリナを信じようと思った。同情みたいなものだ。


 「なのに……どうして私なのかな……私ばっかり虐められるのかな……似てるから……? そんなの認めない……! 認めるなんて、出来るわけないじゃない……」


 セリナは涙目になりながら嘆いた。


 「俺はセリナ先輩を信じるよ。どんなことがあっても守ってみせる」


 俺の言葉を聞いたセリナは、涙を堪えきれずにポロポロと流し出す。それは守ってくれる人ができたからではないだろう。

 それは『初めて自分を信じてくれた』ことによる安心感やありがたみから出る涙なのだろう。


 「本当にありがとう……」


 それが彼女の最後の言葉になった。

ご高覧ありがとうございます!

感想等頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ