1.〜青髪の少女〜
あれから一週間が経った。
学校や校長の家はいつも通りの姿になり、街の修復は刻々と進んでいた。
そしていつも通りの日常が送られる。
だがそんなことより大事なのは……。
「サラはまだ目を覚ましていないのか!」
俺はここ一週間、学校が終わると直ぐに校長の家に通っていた。ここ一週間サラの見舞いに行っているので、校長の家の鍵をキリハに貰っていた俺は、家の鍵を開けて急いで階段を駆け上がり、サラの寝ている部屋に駆け込んだ。
何故かサラの家に親はいない。だから校長の家にサラを預けているのだ。
「えぇ……。なんでこんなことに……」
キリハは最近、学校に通うこともなく、ずっとサラの看病をしている。
前にキリハに学校に行かない理由を尋ねると『親友が目を覚ました時、誰もいなかったら寂しいじゃない?』と答えた。
キリハはどこまで仲間思いなのだろう。
俺はサラにこんなことをした犯人に目星はつけている。
おそらくあの青髪の少女だ。
サラの命を助けてくれた張本人だが、俺の頭にはあの少女がやったとしか考えられない。
俺はキリハの横で眠っているサラの手を握る。
「絶対に助けてやるからな」
俺はそう呟いて部屋を出ようとした。
だがそこで俺は霧雨と居合わせる。
確か霧雨はキリハの国の聖騎士長で、この街の危機をもたらすものを倒すために二二ホに来たと言っていた。
「すまない。俺の力が足りんばかりに……」
霧雨はそんな事を言うがかなり強い。あれは誰が見ても『人間の力ではない』と言うだろう。その霧雨が力が足りんばかりにと言うのは皆に無礼だ。
「霧雨さんが謝ることはないよ……。それに霧雨さんはあの場にいる誰よりも強かった。それでもどうにもならなかったんだ」
仕方がないことだ。そう言って俺は部屋出たあとに家を出ようとした。
「シルク、待て! 俺が必要な時はいつでも言ってくれ。なんでも力になる」
霧雨は責任感が強いやつだ。街の家を破壊したりしていたが、住民は既に避難させていたらしいし、こういう奴が聖騎士長なのは納得がいく。
「わかったよ」と言って俺は校長の家を出た。
そして歩くこと二十秒後、俺は学校の校門からでてきた少女に目を疑う。それは一週間前に出会った青髪の少女。サラを眠らせたと思われる少女だ。だがサラを眠らせた証拠はどこにもない。俺は打つ手はないが少女に話しかける。
「あなたは確か……」
「先日はサラを助けるために駆けつけてくれてありがとう」
俺はこの青髪少女が怪しいと睨んでいる。何かぼろを出してくれるよう揺さぶりをかける。この青髪少女がサラを眠らせた張本人なら、この言葉に、何か表情に動きを見せるのではと思ったからだ。
だがそんな素振りを微塵も見せずに青髪少女は答える。
「いいえ、先日も言いましたが私は当然のことをしたまでよ」
その後も俺は話を続けたが青髪少女はボロを一切出さずにそのまま帰っていった。
唯一俺が得た情報はあの青髪少女が三年C組のセリナということだけだ。
次の日
俺は昼休みの時間にセリナの教室に行き、セリナのことを観察することにした。
俺の二年A組からセリナの三年C組は一番遠い造りになっている。特に用事もない俺が見つかると色々と対応に困るので壁越しに隠れてセリナの教室を覗いた。
すると教室は目を疑うような光景になっていた。男子と女子のそれぞれのグループがドア側に固まっていて、外側の窓にたった一人、青髪の少女の姿があった。
いわゆるいじめと言うやつだ。こういう奴があっていい訳がない。俺は居ても立っても居られなくなる。俺は教室に入って叱ろうとした。
だが誰かが俺の手を握りそれを引き止める。俺が今からやることを止めるように。
そして俺は後ろを振り向く。そこには反乱軍のディアスの姿があった。
「辞めとけ」
ディアスはその言葉だけを言って俺を真剣に見つめる。俺は一瞬その真剣な気迫に押されるが直ぐに気を取り直す。
「辞めとけってどういう意味だよ」
「彼女のことを知らんのか?」
だが俺から映る彼女の姿に悪いところは思い浮かばない。
「彼女はひとつの町を滅ぼした悪魔なんだ」
真剣な顔で俺に話をするディアスは目を見ればわかる。冗談で言っているわけではなさそうだ。
「それってどういう……」
「セリナは十二年前、俺達が昔住んでいた村を幼い頃に破壊した。その記憶はセリナにはないらしいが、俺達は彼女で間違えないと思っている。青髪の少女、それにほかの女子の話によると胸元に傷跡があるらしい。それは俺達の町を滅ぼした少女と全く同じ特徴なんだ。あの不気味な笑い声は、まだ俺の耳に焼きついている」
ディアスから殺気を感じる。なんとも言えないがディアスは真剣な顔をしている。
信じるしかないのだろうか。心優しく人を助けた少女が、町を滅ぼし嘲笑う。やっている事が他の魔王と同じだ。
だがその記憶がないのは気がかりだ。嘘をついているのなら、また別の話だが。
「わかったよ」
そう答えて俺自分の教室に向かった。だが俺の心の中で、次やることは決まっていた。
「セリナ先輩!」
俺は校門でずっとセリナを待っていた。大体一時間くらい……。そしてようやく校門に来たセリナを呼んだ。『先輩』と付けて。
俺は昼休みの時間、何も見ていない。
ただサラの眠り続けた状態を回復する手段がわかればいい。
「どうしたの?」
セリナは明るく振る舞うが、俺にはどこか暗く見えてしまう。目が少しだけ悲しい表情を見せている。
「ちょっと一緒に帰りたいかなって」
「そう、わかったわ」
そして俺とセリナは話の流れで商店街に向かう事になった。と言ってもこれはカオリの作戦に過ぎないが……。
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