11.〜俺がみんなを守るから〜
聖剣が輝きだし、全員の視界は一瞬何も見えなくなる。
そして視界が戻る。
魔王ジンの幹部、絶対防御のスケルトン(蛇)は俺のいた場所に視線を向ける。
だが元々俺のいた場所に俺はいない。
その事実に蛇が気づいたとき、蛇は腕がなくなっていることにも気づく。
そして俺はサラを抱きかかえている。
聖剣が光を放った瞬間に俺は剣をスケルトンの方に振り高速の斬撃(魔法)を飛ばし、蛇の腕に当てたのだ。その斬撃は蛇の防御力を打ち砕いたのだ。その時俺は全力で走り落ちてくるサラを受け止めた。
その事実に至らない場の皆が混乱している。
「ありがとう……ございます……」
助け出したのはいいが、サラはかなり弱っているようだ。
「誰か! 医療魔法を使えるやつはいるか!」
俺は必死に叫んだ。このままでは衰弱死してしまうかもしれない。
「誰か!」
「ふざけるな!」
俺の声を遮るように蛇が大声で叫ぶ。蛇はようやく状況を理解したようだ。
「俺の腕を……俺の腕を!」
蛇は頭突きでもするかのように俺の方に向かってくる。
「邪魔だ!」
そう言って俺は蛇に向かって剣を振る。すると斬撃(魔法)が再び飛んでいく。
普通の魔法の制御はできないが、聖剣で斬撃を飛ばすように魔法を使えば制御ができるようだ。
聖剣から放たれた斬撃は蛇目掛けてまっすぐ飛んでいく。そして蛇の頭を真っ二つに切り裂く。
蛇はその時悲鳴を上げて鬱蒸せに倒れかける。
だがそれは俺が許さない。鬱蒸せに倒れられたら俺とサラの命が危ない。
蛇の頭が俺達に当たりそうになる瞬間、俺は蛇の頭を斬り刻んだ。
すると跡形もなかったように蛇は消えていった。
「早く! 治療魔法が使える人はいないのか!」
その場に居合わせた全ての人間が動揺している。だが直ぐにサラの命が危険だと理解した街の人々は俺と同じように叫び出す。
そしてその場に慌てて走ってきた少女がいた。街の人々の声に駆けつけたのだろう。
「私で……ハァ、ハァ……よければ」
その少女は息を切らし、青髪が乱れていた。
「頼む! サラを助けてくれ」
「わかりました」
そういうと少女は詠唱を唱え始める。
「エンジェルヒール!」
その時サラの体は緑の光に包まれる。サラの体力が回復していくのが目に見えてわかる。
「あと、これを飲ませて」
そういうと少女は黒い豆を取り出す。
「体力が大幅に回復する豆よ」
そんな豆は聞いたことがないが、俺は少女のことを信用してサラに豆を飲ませる。
すると直ぐにサラは目を覚ました。
「ありがとう……ございます」
目を覚ましたサラはそう言うと眠りについた。おそらく疲れているのだろう。
「こっちもお願いー」
そう言うのは倒れた霧雨の近くにいるキリハだった。霧雨はあの時がやはり限界だったのだろう。今は衰弱しきっている。
「わかりました!」
青髪の少女は快く引き受ける。
そして青髪の少女は怪我人全員の治療を終えた。
「ありがとう。駆けつけてくれて」
「いいえ、私は当然のことをしたまでよ」
この少女はかなり人がいいのだろう。治療魔法の使用はかなりの体力を必要とする。だがそれを快く引き受けてくれたのだから。
「それに今しかこんなことは出来ないからね……」
と小声で呟く。
そして少女はその場から去っていった。
どういう意味か分からなかったが俺には関係ないことだ。
皆が助かった。それでいい。
俺達は犯罪者ではない。そして俺は母親殺しではない。そんな根拠の無い噂が街中に瞬く間に広がった。
これでようやく街に平穏な生活が戻ったのだ。
そんな事を一週間前の俺は思っていたのだろう。だが俺達の敵はそんな甘くはなかった。
サラはここ一週間、目を覚ますことはなかった。
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