〜元魔法使いの新人〜
この世界には魔法管理所という機関がある。
例えばハリーポッターの世界で何か魔法を唱えたとしてもその術者だけだったら、その魔法は出るはずもない。
ハリーポッタの世界にある魔法管理所という施設が詠唱魔法に合わせて、魔法を再現しあたかも術者がそのものを出したようにしてるのである。
つまり、術者自体は杖をかざして言葉を唱えてるだけである。
実際に魔法を作っているのは魔法管理所である。
これはそんな魔法管理所に新しく配属になった元魔法使いのお話である。
『こんちわ!!』
『今日から魔法管理所第14支部に配属された###といいま〜す!!』
『よろしくお願いします!!』
俺には自信があった。
魔法部門の全体1万人をまとめていた人望、線を越える詠唱魔法、そしてなにより魔王を討伐した経験どれをとってもこんな辺境の地で働いてる奴らには足元にも及ばない。
きっと歓迎されてもてはやされると思っていた。
『はい、今日から来た新人くんね。早速だけど働いてもらうよ』
『えっ、なんか質問とか、職場の案内とかはないんすか?』
『ここはね、とても忙しいところだから、一から教えてる暇はないんだよ』
『じゃあ早速だけど防護服に着替えてもらって、攻撃部で待ち合わせね』
そう言ってここで20年は働いてそうなベテランのおじさんは去って行った。
『なんだ、ここのやつは愛想がねーし、世界的大スターの俺が来ても何も言って来ねーよ』
今に見てろ、魔法に関しての知識は世界一を自負しているこの俺が度肝を抜いてやる。
〜攻撃部門〜
『着替えて来たね。じゃあ後はよろしく』
『えっ』
『おー新人君か!私がここの攻撃部門を担当してるハヴィだ。よろしく』
身長は俺と同じくらいの姉御って感じの人が挨拶して来た。
『あっ今日からお世話になる###です。よろしくお願いします』
『前職は魔王軍討伐部隊で隊長をやってました』
『おー隊長かーじゃあ力はあるほうかい?』
『えっなんですか?』
目の前に目の前に巨大な避雷針が現れた。
『これどーするんですか?』
『そこにある光学迷彩のマントを避雷針にかけて転送部隊のとこまで持って行ってくれ。』
『一人できついなら誰か付けるが…』
『これくらい余裕ですよ!僕に任せてください』
『じゃあ頼んだぞ』
『ハプラァァァァ』
強化系の呪文を唱えたが発動しない
『おかしいな…発動しねえぞ』
『おい、新人早く動かせ!後ろ詰まってるぞ』
『すっすみません、でも魔法が使えないんですよ』
『はぁ魔法だと!何言ってんだここで魔法が使えるわけねぇだろ』
『おい、他のやつ代わりに運んでやれ』
『はい!親方』
隣から来たマッチョが軽々と運んでいく
『なんなんだここは…』
それからというもの俺はほぼ何もできず小さな岩や、砂を転送部隊のところに運んでいた。
『はぁ〜疲れたー、やっと終わったー』
『おっ新人君じゃないか。どうだった仕事は』
僕の三倍ある荷物を軽々運んでいたハヴィさんが話しかけて来た。
『もう無理っす、ここ魔法使えないんすもん、あんなの運べるわけない』
『はは、みんな最初はそういうもんさ!何週間かいれば運べるようになるさ!』
『明日も頑張ってくれよ!隊長さん!』
そう言って笑いながら去ってしまった。
〜帰り道〜
『ここで俺やってけんのかなー、もう嫌だなぁ…』
そんな弱音を吐いていると遠くから足音が近づいて来た
『あれぇ〜元魔法部門の隊長さんの###さんじゃないっすかー』
嫌な奴に会ってしまった。
こいつは俺の後釜で魔法部隊の隊長をやっているアルバという魔法使いだ。
実力もなく、媚だけでのし上がった人のことをすぐ見下す嫌な奴だ。
『こんなところで何やってんすかー?』
『左遷されて田舎に飛ばされたって聞いたんですけど』
『あぁ仕事場がこの近くなんだ』
『あ〜なるほど裏方に回ったとは聞いてましたが、ここまで地味になるとはねぇ〜」
『まぁ先輩には派手な魔法より靴磨きとか雑巾かけの方が似合ってますよ〜』
俺の部下でいるときは『先輩、すごいっすね!!』『先輩マジで尊敬です!!』と可愛らしく愛らしいキャラを演じていたが、俺がここに勤務することがわかると急に態度を変えてこのような舐められっぷりだ。
『じゃあな』
怒る気力もなかったのでそう言って帰ろうとすると
『せんぱ〜い地方に飛んでくれてありがとうございます〜、おかげで僕だいぶ偉くなれました〜』『この調子でアンナ先輩も僕がもらうので、結婚式でまた会いましょ〜い』
そう言って去って行った。
〜一週間後〜
『おはようございまーす』
こうして現場に入るのにもだいぶ慣れて来た。
筋肉の使い方を考え、そして筋トレしてだいぶでかいものでも運べるようになった。
『おー新人君!!おはよう!!』
『ハヴィさんおはようございます!!』
『聞いたぞー、避雷針運べるようになったんだってな!!すごいじゃない一週間で!』
『これじゃあもう元新人君だな!』
『やめてくださいよ笑、まだまだですよ!』
そんな冗談をかわしながら現場に入って行った。
『大変です!!対魔法結界が魔界に張られてます!これでは魔界に魔法が届きません!』
『今魔界には、魔王討伐軍が向かっています!!、このままでは全員死んでしまいます!』
『これはまずいなぁ、今回の討伐魔法部隊だけで組まれてるって行ってたしな』
『何かあったんですか?』
『いや、今魔王討伐に向かってる、部隊がいるんだがな、その部隊のいる場所に、対魔法結界というものが張られてな、これがあるとうちらはものを運べないんだよ』
『かといってこのまま見殺しにすると、そいつら全員死んじまうし、そいつらが払うはずのMPがもらえなくなるから、経営もきつくなるんだよな。』
『転送部門から人間って飛ばすことできますかね?』
『それは一応できるが、何をやるつもりだ』
『僕が行って、引き返す様に言って来ます』
『ダメだ、ここで働く以上、こういう形での干渉は罪に問われる。そしてなにより、お前が行ったところでみんな信じないし、最悪魔王軍に殺される』
『大丈夫です、行かせてください。今日魔王軍を討伐に行く部隊って、僕のいた部隊ですよね。
元部下を見殺しにすることはできません』
『…、ダメだそれなら私が行く』
『あれっどこ行った?、あいつ消えやがった』
そうして俺は光学迷彩で自分の体を隠して、魔界の近くに転送される、避雷針に潜んで、そこに飛んで行った。