お寺での借り暮らし
パパがクリーニング店をしていたのは
幸が1歳半か2才になるまでだろうと思います
店の近くにパパの兄つまり幸の伯父の家があります
忙しいママは幸を伯父の家に預けました
伯父の妻つまり伯母は
快く幸のお守りを引き受けてくれました
台の上に座わり
アイロンをかけているパパを
幸は幸わせな気持ちで見ていました
なぜ幸はその光景と気持ちを
覚えているのでしょうか?
幸は赤ん坊の時のことを
断片的に覚えているのです
クリーニング店を閉めると
パパは車のスプリングの会社で
営業の仕事を始めます
家族はお寺の二階を借りて住むようになります
借り暮らしのアリエッティならぬ
借り暮らしの家族という感じでしょうか
お寺の境内の階段を何度も
ポンと飛んで降りて遊んだものです
お寺に住んで
わずか1年半の後
パパは会社の転勤で郷里を離れることになります
家族は田舎に引っ越すことになりました
ここまでが田舎で暮らす前のことです
幸…3歳です
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お寺で借り暮らしの時
縁日で買ったヒヨコが廊下を一直線に走っていました
何匹か糞をしながら足を高く上げてヒョコヒョコぴゅん
大きな台風がきた夜パパは窓に板を打ち付け
食器棚を押さえていました
余談ですが、お座りをしていた赤ちゃんの幸は
茶筒の蓋で遊んでいると
人差し指をズバリと切ってしまいました
小さな指の半分まで達する傷だったそうです
畳に座って遊んでいたのは覚えていますが
指を切った痛さは全く覚えていません
ママは真っ青になり
お医者さんに駆け込んだそうです
人差し指の爪の付け根が傷ついたため
生えてくる爪はとんがり屋根のような形です
その人差し指の爪がお気に入りであることも
付け加えておきます