しもやけの冬
田舎は冬が来て雪が降ると大変です
幸の家の回りは一面銀世界に変わります
朝起きるとママはいつも肌着のシャツを脱がせ
洗濯したシャツを子供たちに着せます
寒い季節は一気に目が覚めるほどシャツが冷たく感じます
朝食を済ませランドセルを背負って長靴を履くと
雪が積もった道を歩いて学校へと向かいます
道は誰も歩いていないので雪をかき分けるように歩きます
道と田んぼの境目がわかるのは水がある川くらいのものです
幸は膝の上まで積もった雪道を
足を持ち上げるように一歩一歩進みます
学校へ着くと長靴の中に雪が詰まっています
靴下には雪が毛玉のようにくっついて取れません
内履きのズックに裸足で履き替えます
教室に入り脱いだ靴下をスチームの上に乗せて乾かします
たくさんの靴下がスチームの上に並ぶと授業が始まります
学校が終われば道は人や車が通ってついた道が出来ます
でこぼこして滑って何度も転びながら家に着きました
足の指はしもやけで真っ赤になり膨らんでいます
幸はこたつにもぐり
冷えきった身体を温めます
少し暖まると しもやけが痒く感じます
ママは幸を呼ぶと
菜っ葉を茹でた後のお湯を洗面器にはり
足を入れるように言いました
幸はお湯の中で赤く腫れた足の指を擦りました
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菜っ葉を茹でたお湯の色は少し緑色で
大根の匂いがします
今でも菜っ葉を茹でると
ママが足を浸してくれた洗面器のお湯を思い出します
そして毛糸で編んでくれたパンツのチクチクする痒さと
しもやけの痒さも思い出すのです