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物語に出てくる小人がいなくても

洗濯物も外に干せないような曇り空の日

幸は自宅の横にしゃがんで苔をじっと見ています

緑の苔の上にヤシの木のような形の苔が密集しています

まるでジャングルのようです

体が小さくなればジャングルに住めそうだなと思いました

苔の横では小さな蟻がウロウロしながら

地面の穴に空いた巣の中に入っていきます

蟻のように小さな生き物がいるのならば

小人がいても不思議ではないと思いました

庭にいたママに「小人さんがいそうだよ、ほらここ」と

幸は言いました

ママは幸の声が全く聞こえていないようでした


白雪姫でも小人が出てくるし、親指姫もお花の中にいます

小人の出てくる物語りは多いためか

小人はいるに違いないと思っていました

でも幸は小人の姿を見たことは一度もありません

ある日、授業が終わり廊下を歩いていると

壁の穴に紙が入っています

幸はその小さく折り畳まれた紙を広げました

『いつも頑張っているね、その調子で明日も頑張って』

と書いてあります

こんな所に手紙があるなんてと幸は驚きました

小さな小さな手紙は小人が入れたに違いありません

鉄棒をしながら小人の事を考えました

手紙の入っていた穴を毎日見に行きました

ですが手紙が入っていることはありませんでした


学校の中に鍵が掛かっている小さな扉がありました

その扉を見つけた時、扉の中は違う世界につながっていて

小人はそこから出入りしていると思いました

その翌日のことです

手紙のあった穴のことは忘れていました

偶然そこを通りかかった時、紙が入っていました

手紙を広げると

『もう来れないと思うけど、これを食べると元気になる。

頑張って』と書かれた紙にラムネが包まれていました

幸はそれを持って教室に戻るとラムネを口の中に入れました

レモンのような酸っぱい味がして

元気が出たように思いました

友達に小人の話しをすると

その女の子は「小人がいるの?本当に?」と幸に言いました

幸は手紙をその子に見せました

「本当にいるのかも」と驚いています


その手紙のとおり二度と穴に

手紙が入っていることはありませんでした

そして幸は小人の姿を最後まで

見ることはありませんでしたが

手紙は小人の存在をこっそり教えてくれたような出来事でした


幸 小学校四年生です


────────────────────

今思えば、学校の生徒の誰かが手紙を書いて

入れたのではないかと考えています

それでも不思議な経験をした幸は

幼い子供が語ることは、否定も肯定もせずに

聞くことにしています

子供たちの物事の見方は

教えられることが多いのですから

そして沢山の未来の可能性を感じながら

子供たちの話しを聞くことは楽しい時間となります


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