お兄ちゃんヒーローになる
国道の広い道を自転車を走っている
男の子の姿が見えますよ
小学校の高学年くらいでしょうか
時折、立ち漕ぎをしたりしていますが
その顔は生き生きとしています
あらあら、後ろに誰か乗せているようですね
小さな女の子です
男の子と小さな女の子は兄妹のようです
女の子は少し不安そうな顔で
お兄ちゃんのズボンのベルトを
落ちないように小さな手で
しっかり掴んでいます
どこへ向かっているのでしょうか?
郷里のクリーニング店を営む祖父の
家にいた時の事です
お兄ちゃんは幸に自転車の後ろに
乗ってと突然言いました
幸は何もわからずに
お兄ちゃんに言われた通り
自転車の後ろに乗りました
町中を抜けるまでに1時間半
途中には急な坂もあります
国道に出てしばらく走ったところで
お兄ちゃんは自転車を停めました
「ここ通った事ある!パパの車で」と幸
「まだまだだな」お兄ちゃんがふうっーと息をつきました
「幸行くぞ、後ろに乗って」と言いました
幸はお尻が痛くなってきていました
けれど、お兄ちゃんには言いませんでした
その後また1時間あまり走ったでしょうか
見覚えのある町が見えてきました
「お兄ちゃん、幸もうお尻が痛いの」
とようやく幸が自転車の後ろから言いました
「もう着くぞ」というと真っ直ぐ前を見ながら
立ちこぎをしてスピードを速めました
着いたところは伯父さんの家です
玄関を開けて中に自転車を入れると
伯母さんが部屋の戸を開けました
「自転車で何処からきたね?」と言うと
「爺ちゃんちから」お兄ちゃんが答えました
ほらほら入って入ってと伯母さんは
お茶とかき餅を出してくれました
しばらくすると伯父さんが顔を出しました
伯母さんが驚いて伯父さんの会社に電話をして
呼び出したようです
「お前ら、どこから来たんだって?」
「爺ちゃんち」
伯父さんは目を丸くして
「すごいな、よく来れた、よく来れた」と繰り返しました
幸は自転車で帰った記憶がありません
お兄ちゃんは自転車で一人で帰ったからです
幸はそのまま伯父さんの家にいたと思われます
その後、お兄ちゃんが幸を乗せて何十キロも自転車で
爺ちゃんの家から伯父さんの家まで来たことに
みんなが驚いてお兄ちゃんは一躍ヒーローに
なったのでした
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お兄ちゃんはお尻が痛いと言った幸を
乗せて帰らなかったようです
幸のお尻が、お猿さんのようになると
思ったのかもしれませんね
幸はお兄ちゃんをただ信じ
ただ頼っていた頃
幸 小学校3年生です




