姫のひみつ
飛燕は楽しみにしていた母との昼食を終えた。昼食の内容は、甘辛いタレを付けて食べる鳥肉の蒸し焼きに、薄い皮の中に肉汁が閉じ込められた飲茶、魚の唐揚げ、沢山の種類の果物、他にもフカヒレの姿煮などで、飛燕の好物ばかりだった。
桂花によると、久し振りに飛燕と昼食をとれると喜んだ母上が、今日は飛燕の好物を沢山用意してしてくれと料理人に頼んだようなのだ。
「それにしても暇だなあ」
今日は空に雲1つない晴れた日だ。そんな日には、後宮にある桜の下でお昼寝をするととても気持ちが良い。そう思い立った飛燕は、何処か昼寝をするのに丁度良い場所を飛燕は探し始めた。今日は飛燕付きの女官も着いてきてはいないので地べたで昼寝をしても文句は言われない。
「何処がいいかねえ」
飛燕は静かで人がいなさそうの場所を探して後宮の奥へと入っていった。今日は特別な国の行事が近々あるので後宮の近衛も女官もそちらに行っており、後宮はいつもより静かだ。飛燕は歩いていると、桜や植物が何かを隠すように植えられているのを見つけた。近づいて、桜の木に登ってみると、飛燕は小さい小屋を発見した。木から降りてその小屋を見てみると、もう何年も人の手が入っていない様だった。
「ぼろっちい小屋だなあ。でも、何か見覚えがあるな、、、」
なんだっけ、と思いつつ飛燕は小屋の中へと入ろうとした、しかし建物が古いせいで扉が普通に開けようとしても開かない。飛燕は周りを見渡して、よし、と言った。
「おりゃっ」
という声とともに飛燕は扉に飛び蹴りを食らわせた。すると扉は数十年ぶりに役割を果たし、同時に壊れた。
「よしよし開いたな、こんなもん壊れてても誰も困らんから大丈夫!」
などと言い訳をしつつ、飛燕の所業で埃が立った部屋を見渡した。そこにあったのは庶民の家にあるような古い造りの卓に椅子、寝台と流しがあるだけであった。
「うーん、なんもないみたいだなあ。」
埃が舞っていて視界が悪いので、飛燕は窓を開けて風通しを良くした。窓の方は壊れなかったのでなんとなく安心した。
外に埃が出て行くと、視界が少し良くなって飛燕は卓に傷が付いていることに気がついた。気になった飛燕は小さな手の平で埃を払う。すると、そこには刃物で雑に刻まれた下手な文字が書いてあった。この刻まれている文字には飛燕はかなり覚えがある。
「あ!この字は俺の字!なんて書いたんだっけ?えーと?『英陵の身勝手最低糞馬鹿野郎!!』?ううーん、我ながらなんと貧困な語彙力なんだ。」
しかし、この文字を見て思い出した。後宮の奥にあるこの小屋は、初代皇帝である英陵と英陵の身近な者が束の間の時間を過ごす場所だった。
そしてここは英陵が城下に抜け出す際、よく使っていた秘密の抜け道であった。
午後に用事がない飛燕が考える事はひとつしかない。
「よしよし、久し振りに抜け出してみるか。」
この事がバレたら、飛燕は両親にこっぴどく怒られるだろう。それは構わないが、この場所だけは絶対に死守だ。




