6話 【マルイクタレ】公国
馬車に戻った私達は、その後、交代で馬車に結界を張りつつ大きな敵に出くわす事なく、任務日を過ごしていた。
「もう少しで【マルイクタレ】に着きますので、もう一度国外移動証明書の提出をお願いします」
ガボットさんの指示で【クリステーラ】を出る時にも使ったチケットを取り出した。
「はい、みんな出してください」
一度、雪乃が集めガボットさんに渡した。
行きと同じ様に直ぐに通れると思っていた私たちは結界を解き、楽しくお喋りしていたが、兵士の一人に「止まれ」と言われて驚いた。
「なんですか?」
代表してマルクが聞くと、
「何故ギルド員ごときが一級証明書を持っている」
…あーもー!フェル…目立つって事考えてなかったの…。
「一級証明書を持って来たのは私です」
しょうがなく名乗り出た私はごめんなさいと思いながらも、記憶の改竄魔法を使った。
「…【具現せよ 我が望むは 記憶の改竄 偽りの記憶 その組替えを 記憶の精霊…記憶の番人 その力を我に】」
魔力の使いすぎで一瞬目眩がしたが【魔力欠損症】には、なっていないらしく、目眩も直ぐに収まった。
「…通ってよし!」
皆は唖然としていたが兵士の声で元に戻った。
「…あんた、第一級指定魔法 精霊記憶魔法じゃ…」
「はぁはぁ…そ、うです」
息切れしながらも肯定した私に皆は驚きが隠せないらしい。
「だって…」
「………。着きましたよ。降りましょうか」
はぶらかす様に馬車から降りた私の背中に疑念の視線が降り注ぐ。
…だって言ったら私が『1』ってバレるしね…。
◾️◾️◾️
「いやぁこれまでの護衛、お疲れ様でした。報酬はギルドカードに振り込まれています。ありがとうございました」
任務が完了しガボットさんから報酬をもらった私は視線から逃げるように立ち去った。
ギルドカードには、日本で言う“ワオンカード”みたいにも使える為、よく任務の報酬の支払いに使われる。
さて、この【マルイクタレ】公国。
【クリステーラ】帝国よりも規模は小さいが、技術は高く色々なものが集まっている。
まぁ、この世界の日本みたいな国。ギルドカードに入ったお金はどの国でも使えるが、任務はその国のギルドカードでしか受けられないので、私はギルドカードを作るべく、この街のギルドへ向かった。