4話 涙と旅立ち
部屋へ戻ると、私は机の上に見慣れない手紙が置いてあるのに気がついた。
手紙には、『フィマリー・ウェッジロッテ様』と記してあり、不審に思いながらも手紙を開いた。
手紙には、
フィマリー、お元気ですか?
私は、クリステーラ帝国第一王女のフェルク・マッジ・クリステーラです。
一瞬王女様が何の用と手紙を破棄しそうになったが一様先の文にも目を通す事にした。
私がこうして手紙を書いているのは、ウェッジロッテ男爵家の爵位継承権についてお話ししたい事があったからです。
今現在、爵位継承権第一位は、フィマリー貴方です。
これは覆る事が有りません。ですが、貴方を引き取ったスクラープ夫妻の娘…ネミリア・スクラープにも低いですが爵位継承権がある事が判明しました。よって夫妻はどうにかして貴方を消そうとするでしょう。
だから逃げなさい。国外に。この手紙と共に入っているチケットは国外に出る為のものです。卒業後でも構いません。早く逃げてください。
どうかお元気で。
…フェルより
スクラープ夫妻が私を消そうとしている、か。粗方そうなるだろうと思っていたので余り驚いては居ない。
フェル…フェルク王女とは、私が両親を亡くし、軍に入るまでのとても短い時間だけれど…友人だった。
心が壊れそうだった私を励まして慰めてくれた、大切な親友。
たが、スクラープ夫妻は子爵家。身分の違いからもう関わることはないと思っていた。の、に…
「…ひッ、グス、フェル…フェルぅ…グス」
私は声を殺して泣いた。
暫く泣いて落ち着くと私は魔法のポーチに旅支度を始めた。
就寝時間がとっくに過ぎた夜中…私は机に退学届けを出し、学園を後にした。
この国は国外に行く門は一つしかない。が、歩いていける様な距離でもないので一度街によりギルドに行く事にした。
「んー国外に行く護衛ってあんまり無いなぁ………これ、これにしようっと」
私が選んだのは【クリステーラ】から【マルイクタレ】までの護衛だった。十人の募集だったが後の九人は五人と四人のパーティで揃っておりソロを探していたらしい。
「あの…すみません。これ受けたいんですけど」
「はーいって…『1』」
「わぁぁぁあ、言わないで下さ〜い」
危ない。バレたらどうするのよ。
「あ、はい。では受付完了です」
えーと、他の皆さんは…
護衛当日、私は馬車乗り場で他の皆さんを探していた。
「おーい、こっちだ」
声がして振り向くと探していた人たちを見つけた。
「今日はよろしくお願いします」
「ええ。てか、国外移動証明書もってるの?」
「はい。もってます」
「そう…ならいいけど…じゃあうちのパーティを紹介するわ。私がリーダーのエルク、で」
「ジュンだ」
「ま、マルクです」
「…ドール」
「この四人で、チーム『アドバーズ』よろしくね」
「よろしくお願いします」
「次は俺らだな。俺はリーダーのカイト」
「おらは、ナイガだ」
「私は雪乃です」
「僕はエミル」
「ミリアンだよっ」
「この五人で、チーム『スプライト』だ!よろしくなっ」
「よろしくお願いします…じゃあ次は私ですね。私はソロの…」
「ソロの?」
名前…フィマリー、マリー、フィリ!
「フィリです。足手纏いにならない様頑張ります」
「なあ、あんた幾つなんだ?」
「10歳です」
「うそっ」
「…まぁギルドは実力があれば年齢関係なく入れるけど…」
「だが…」
…私、なんか弱い扱いされてない?
「私弱く有りません。ので、お気になさらないでください」
「でも…」
「はい、今日はお集まりくださって感謝します。私が依頼主のガボットです。今日はよろしくお願いします」
その言葉に私たちは馬車に乗り込み、ハチャメチャな旅が始まった。