盗賊討伐と・・・
今、アサドンク王国に向かうブルホースの鞍の上で、リリアナは風魔法の自主練習をしている。
周囲に風魔法を飛ばしたり、風魔法のシールドを作ったり。
俺はと言うと、仕入れた大量の書籍の整理を兼ねて、王宮の秘文書館で読んだ内容について、頭の中で整理している。
まずこの世界の歴史から。
この世界の文明は一度滅びたらしい。
と言っても記録に残っている物はなく、あくまで伝承やら古代遺跡アイテム《アーティファクト》などから推察されているだけで、本当にかつて現在のこの世界の今の文明以上の社会があったかどうかは定かではない。
古代遺跡アイテムと名前が付いているが、この世界に古代遺跡はない。
大陸の遥か彼方にあると言われてはいるけれども、この世界で航海術はなく、第一、大陸の周囲にある海には大陸に出現する魔物以上の強さを持つ魔物が支配する世界らしいので、陸から離れた海域まで出ることは不可能みたいだ。
ともかく、古代文明が滅びる原因となったのが、邪竜ヴェルドランだ。
絶対的な悪と言うべき邪竜。
全てを破壊し全ての魂を喰らったと考えられている。
この邪竜を封印したのが、この世界の8柱の神々だ。
本来神々とは、この世界に直接干渉してはならないとされていて、神々の恩恵としてその力の一部をスキルと言う形にして分け与えるに留まっているのだけど、流石に邪竜がこの世界の全てを破壊し、古代世界にいた勇者や英雄と呼ばれていた者たちをあっさりと殲滅しつくしてしまったのを受けて、直接干渉したらしい。
8柱の神々の力をもって邪竜を完全に倒し邪竜の魂を完全に消滅させようとした瞬間、邪竜は自らの最後の力を使って、自分の核を7つに割って、この世界にばら撒いた。
邪竜の魔核はそれぞれ迷宮のダンジョンコアとなり、魔物を生み出すことになった。
神々としても、邪竜本体の討伐ならば直接干渉もできたけれども、分割された邪竜の魔核に対して直接干渉すると神々の力(正の力)が強すぎて、世界のバランスを崩すことになりやむなく、8柱の神々の内7柱の神がそれぞれ神の核を生み出し、世界に散らばった邪竜の魔核(負の力)に対抗できるようにするに留まった。
この神の核が「都市核」であり、都市核の周囲には結界(正の力)が張り巡らされ、迷宮から生み出される魔物(負の力)を防ぐことができた。
神の核(都市核)は、その当時生き残っていた種族の内、勢力が大きかった7つの種族が一つずつ管理するようになる。
そしてこの都市核を中心にして7つの国が興き現在の7王国ができる。
すなわち、
妖精族のピアフォール王国、
竜人族のドラゴニア王国
亜人族のスネール王国
獣人族のアサドンク王国
人族のニードリックマウス王国
巨人族のフライン王国
天魔族のゴートン王国
ニードリックマウス王国の国王には会ったけど、俺がこの世界に最初に転移したゴードン王国は、天魔族が国王だったんだな。
尤も、外見的にほとんど変わらないらしい。
羽をもつ天魔族もいるらしいけどね。
7つの王国があるのは、龍が住んでいると言われる高い山々とその裾野には魔物の森と呼ばれる広大な森林地帯を持つ中央山脈地帯を中心に持つ「大大陸」と呼ばれる大陸だ。
ピアフォール王国を時計の12時の位置とすると、時計回りに、ドラゴニア王国、フライン王国、ゴードン王国、ニードリックマウス王国の5つが中央山脈の周囲に並び、邪竜と神々の戦いの時に大陸から切り離されたと言われているニードリックマウス王国の西側の「小大陸」アサドング王国がある。
またゴードン王国と、フライン王国との間にある大砂漠を挟んで、これまた邪竜と神々の戦いの時に大陸の一部が削り取られて半島のように突き出た形になっている部分にスネール王国がある。
あと、夢物語的な伝承では、この大大陸の周囲にある大海の遥か彼方に、古代大陸と呼ばれる大陸が存在すると言うことになっている。
都市核については、極秘中の極秘事項なんだろう、今回秘文書館で読んだ書籍の中には詳しい内容はなかった。
ただ、この都市核が
都市の結界の役目をしていること。
この世界の生物が持つそれぞれの核の情報を「真実の板」を用いることで参照できること。
ある条件の元で、成長(?)すること。
王家の血筋の一部の物の力(スキル?)によって、分割することができること。
などは、様々な情報を突き合わせて解っている。
迷宮に関しては、ゴードン王国、ニードリックマウス王国については、主迷宮と呼ばれる邪竜の核がダンジョンコアーになっている迷宮が1つのみだけど、他の王国では副迷宮が存在し、特にアサドング王国が一番副迷宮が存在するらしい。大きな砂漠が国境付近にあり、人の往来が不自由なスネール王国も、副迷宮が多いらしいので、こちらにも行ってみたいところだ。
ニードリックマウス王国の国境付近にある最後の都市を出発して数時間後、ブルホースの上でそんな考察を続けていた時に前方に索敵反応があった。
最後の都市を出る時に、ここから先アサドング王国に入っても街道を走っていても十分に注意をするように言われてたし、元より常に索敵スキルを発動しているのですぐに解った。
リリアナも気付いたようだ。
順調に探索スキルが上がっているようだ。
「ジュン様・・・」
「魔物じゃなくて盗賊だろうね。ここで捕まえても、兵士に突き出すのにまた街に戻るのも大変だしね。」
「はい。国境付近で盗賊をやっている時点で当然殺されるリスクを考えているでしょう。」
「まあその辺りはどうかと思うけどね。ヤバくなったらアサドング王国の方に逃げるつもりで、この辺りを縄張りにしているのかもしれないしね。」
「では、今回も捕えますか?」
「いいや。面倒だし、アジトを聞き出した後は殲滅しちゃおうか。死体はアンテッド化すると厄介だから回収していくけど。」
アイテムボックスの中に収納できるのかどうかはやったことないけど、死んでしまえば物扱いだろうし大丈夫だろう。
リリアナと簡単な打ち合わせをした後、俺たちはそのまま街道を進んだ。
街道付近まで森の木々が張り出してきている場所に来ると、前方からパラパラと盗賊が出てくる。
周囲の木々の中に弓をもった奴らも潜んでいる。
ザッと見た所、LV10前後の奴らだ。
テンプレの盗賊の口上は割愛。
サクッと風魔法で始末した。
リリアナの方は、対人戦を経験したいと言う希望で双剣を振るって始末したけど、相手にもならなかった感じ。
口上を述べてた奴だけ隷属魔法で生かして、アジトに案内させた。
襲撃地点から1㎞程森に入った場所にアジトがあった。
テンプレの洞窟だ。
そのままサクサク始末しながら、サクサク死体を収納して行って、最後のボス部屋みたいなところで、盗賊の親分とその取り巻きを始末した。
「ジュン様、この先に・・・。」
「ああ、多分、盗賊に捕えられてた人だろうね。ともかく、助けようか。」
そう言って、小部屋みたいになっている場所に入ってみると、木で格子を作った牢屋があり、その中に反応の通り2人の生存者がいた。
耳が長いけど肌が黒い。
ダークエルフ族の子供だ。
ダークエルフ族も長命種族ではあるけど、子供の時には子供らしいんだなぁとか妙なところで感心してしまった。
剣を持った俺とリリアナが無言で近づいてきたので、殺されると思ったのか、女の子の方が男の子の方を庇いながら、
「弟には手を出さないで下さい。わ、私なら何をされてもいいですから。」
「お、お姉ちゃん・・・」
姉弟なのか。
鑑定ではそう言うの出ないからね。
あれ?でも年が一緒だけど。
「ああ、ごめんね。怖がらせちゃったか。悪い奴らは始末したよ。もう大丈夫。」
「えっ?あの大きな怖い人も?」
「大きな怖い人?盗賊の頭?」
「はい。大きな斧を持って、一番強くて。村の人たちも皆、殺されました。」
「そいつも含めて全員始末したと思うよ。一応、アジトに入る前に仲間の人数を確認したし大丈夫だと思うよ。」
「そうですか。それで、あなた方は?冒険者さんですか?でも、村が全滅して冒険者ギルドに依頼とか出せなかったと思いますけど。」
「俺たちは冒険者だけど、今回ここに来たのはたまたま。俺たちを襲ってきた奴らがいたからね。ついでにアジトも潰しておこうかと思って来たんだよ。」
「そうですか。申し遅れました。私は、ダークエルフ族のシュリア集落の族長の娘でミミ・シュリアといいます。こちらは、双子の弟でケル・シュリアです。」
「そうか。双子なんだね。そう言われてみるとよく似てるね。それで、これから先どうしたい?俺たちは冒険者でアサドング王国の迷宮探索に向かう途中なんだけど。」
「えっ?どうしたいとは?私たちは奴隷になるのではないのでしょうか?」
「奴隷?何で?」
「私と弟はすでに帰る家も場所もありません。私たちの集落はオークの集団に襲われて、主だった戦士が大怪我を負ってしまって、その時に現れた盗賊の集団に残った人たちは全員殺されて、私と弟だけが連れてこられました。奴隷商に売り渡す予定だったようです。」
「俺としては別に君たち二人をどうしたいとかないんだけど。頼れる人とかはいないの?」
「はい。私の集落の人は皆、殺されました。ダークエルフの他の集落へ行っても余所者扱いになるでしょうから、行くあてはありません。」
しっかりした受け答えで、気丈に振舞ってはいるけど少し震えている。
ダークエルフの精神年齢の成長速度がどの程度なのか解らないけど、見た目通りなら甘えたい盛りの年齢だしね。
「リリアナ、こういう場合にはどうしたらいい?」
「王国の孤児院に預けるか、ジュン様が奴隷として引き取るかしかないかと。」
「二人だけで生きて行くには小さすぎるか・・・。取り敢えず、アサドング王国へ行くかい?それとも、ここニードリックマウス王国がいいの?」
「ここは、ニードリックマウス王国なのですね。私たちの集落はピアフォール王国でしたが。私も弟も多少の武術の心得はあります。もし、ジュン・・・様がお許しいただけるのでしたら、私たちと奴隷契約を結んでい頂けないでしょうか。成人前の私たちだけではいずれ誰かに捕まって強制的に奴隷契約を結ばされると思います。どうぞよろしくお願いします。」
「えっと、弟くんの方もそれでいいの?」
「は、はい。お姉ちゃんの言うとおりです。僕は体が弱くて武術はあまり得意ではないですけど、光魔法を使えます。初級の回復魔法でしたら使えますし、きっとお役に立てます。」
「リリアナ、どう思う?」
「彼女の言うとおり、成人前の子供だけで生活するのは都市の中では無理でしょう。本人の意思と関係なく奴隷契約を結ばされると思います。かと言って、子供二人だけで都市以外の場所で生活することも難しいかと。ジュン様には必要ないかもしれませんが、ジュン様の元にいることが一番いいのではないでしょうか。」
「そうか。わかった。俺たちはアサドング王国に向かっている途中なんだ。二人の故郷とは離れてしまうけど、それでもよければ一緒にアサドング王国の王都に行ってみるかい?。それまでに、これからどうしたいか、二人できちんと話し合うといいよ。じゃあ、アジトの中にいろいろ残してても勿体ないから、貯め込んでいた物を全部収納したら出発しようか。その前に、二人にはこれをつけてもらおうかな。俺やリリアナの側にいれば安全だけど、この先、危険な場所を通って行くだろうからね。」
そう言って、二人が装備できそうな防具類やブーツを出してやって、武器はミミには小弓を出してやった。ケルにはどうしようかと思ったけど護身用に小刀を出してやった。
最高級品だし悪くないだろう、多分。
アジトからは、かなりのお宝が手に入った。
あとでアイテムボックスの整理もしなくちゃいけないな。
金貨や白金貨も随分と貯め込んでたみたいだ。
こういう場所でお金を貯め込んでどうするんだろうな。
金なんて使わなきゃ意味ないだろうって思うけど。




