マジックアイテムリング
王宮では俺の後ろにいて何もしゃべらなかったリリアナが、帰りの馬車の中でやっと口を開く。
「ジュン様、地下17階のこと話されてよかったのですか?」
「ああ、あれはね、王宮と冒険者ギルドを牽制するためだよ。王宮の方から地下17階の情報について冒険者ギルドに問い合わせがあるかもしれないけど、冒険者ギルドの方はその情報を持ってないから答えようがないだろう?王宮は冒険者ギルドが情報を隠していると考えるだろうし、冒険者ギルドの方も王宮が俺の方から個人的に何か情報を得たのかもしれないと思うだろうけど、自分達に問い合わせてきたってことで、王宮が確証がなく調べていると考えるだろう。結果的に、地下16階の情報も上手く情報をコントロールしようとするだろうし、俺自身に対しても王宮と直に接触しないようにガードしようとするだろうから、結果、俺の情報についても慎重に取り扱ってくれるだろうしね。尤も、そんな都合よくことが進むとは思わないけど、この国には工房に発注した武器が出来上がるまでの間滞在したらすぐに、アサドンク王国に向かう予定だしね。それまでは、迷宮に潜って迷宮の中で滞在するから問題ないだろうと思ってる。」
「そうですか。そのような深いお考えがあったのですね。」
「まあ結果論だけどね。俺が国王のブラフに引っかからなければ、黙ってるつもりだったしね。いずれにせよ、この国の冒険者のレベルでは、地下16階を越えて17階まで来れるとは思えないけどね。」
「それで、この後の予定はいかがされるのですか?」
「取り敢えず、武器ができあがるまで迷宮に潜って、武器が出来上がったら、アサドンク王国に向かうつもり。リリアナはどこか行きたいところとかある?」
「いいえ。ジュン様のお考えの通りに。」
「リリアナもいろいろスキルが上がったから迷宮で戦うのが楽になっていると思うよ。」
「はい、ありがとうございます。ジュン様のお力で、私にもこのような力を与えていただいて本当にありがとうございます。ジュン様のお役にたてるように頑張ります。」
その後、冒険者ギルドによって用意して貰っていた、大量の写本を受け取った後、ドング迷宮に入ることを断ってドング迷宮都市に向かった。
迷宮都市での宿泊場所も冒険者ギルドが用意してくれると言ってたけど、迷宮内で滞在する予定だからということで断った。
迷宮都市は都市全体がお祭り騒ぎの状態だった。
地下15階を突破したことはそれほどのことなんだろうか。
どのみち、その階層まで入れるのはA級ランクの冒険者パーティーだけだと
思うんだけどなぁ。
俺とリリアナはサッサと迷宮に入り地下15階に転送した後、サクサクと地下17階へと進む。
途中、地下16階で冒険者パーティーの気配を感知したけど、あっちには見つかってないと思う。
17階へ降りる通路は簡単には見つからないだろう。
と言うか連続で、通路の前にいる魔物と戦わないといけないから
普通は避けて通る道だと思う。
この迷宮を作った奴がいるとすれば、なかなか意地悪なやつだ。
地下17階の小部屋みたいになっている場所で、一旦コテージを出して休憩する。
久しぶりの湯船に入りながら、いろいろ検討することにした。
「やっぱり湯船は気持ちいいな。」
「はい、ジュン様。」
少し蕩けた表情でリリアナが答える。
普段、生真面目にキリッとした表情をしていることが多いから、こう言う表情をするリリアナは、湯船の中だけだ。
なかなかに可愛い。
「お風呂を出たら、王宮で貰ったアイテムの確認をしたいと思う。」
「承知しました。そう言えば、効果が解らないアイテムがいくつかありましたね。」
「ああ、あっちの方は問題ないよ。宰相は効果が解らないと言ってたけど、俺には鑑定できたみたいだからね。尤もその効果の実証はやりようがないけど。」
「そうなのですか?流石、ジュン様です。」
今回、王宮から貰ってきた、古代遺跡アイテム《アーティファクト》は、
マジックアイテムリング
抗毒の指輪
抗麻痺の指輪
ここまでは、宰相も効果も名前も把握していたようだ。
効果が解らなかったのは、一つは、
「幸せのコルセット(女性専用)」
それともう一つは、
「フォンブレスレット」
両方とも、古代遺跡アイテム《アーティファクト》なので、すでに鍛冶や錬金、彫金などの生産系スキルを習得した俺でも作成はできない。
ただ、成分と言うか必要な素材は解っているので、今後俺自身が成長したら作成できるようになるのかもしれない。
まず、マジックアイテムリングから検証する。
俺が装着しても、特に変わりない。
元々、俺のアイテムボックスはかなり異常だしね。
リリアナに装着して貰う。
「どうだ?何か変化あるか?」
「えっと、特にアイテムボックスの項目とかに変化はないようです。あっ、取り出しが手の上ではなく、ジュン様のように自由にできるようになってます。それに、今までは収納できなかったテーブルや椅子もできます。でも、大型のコンロは入りません。こちらの食材庫は大丈夫です。」
「そうか、じゃあ、取り敢えず、リリアナの服や、食器類などの物品はリリアナが持っていて。あと、予備の武器や装備もいくつか持ってて。それからポーション類もいくつか渡しておくから。」
「承知しました。」
「それで、元々のアイテムボックスの枠と、新たな枠とは識別できてる?」
「はい。元々のアイテムボックスの方は、これまで通りの容量と枠です。取り出しも手の上のみです。」
「じゃあ、アイテムボックスの方に、貴重品類。お金、武器、ポーション、冒険者カードなどを入れておくといい。」
「解りました。一旦出して、入れ替えます。」
ちなみに、当たり前だけどリングを外すと、そっちに入れていた物も全て取り出せない。そのリングを俺が装着するとそこから、さっきリリアナが入れた物を取り出せた。リング自体に個人の識別機能はついてないみたいだ。
「よし、じゃあ、このリングはリリアナが装着してて。」
リリアナは少し迷う感じを見せたけど、俺自身のアイテムボックスの能力の方が上だと気がついて素直に装着してくれた。
「リングタイプのマジックバックは珍しいみたいだし狙われることもないだろうけど、念のため人前では、リリアナも大きめのバックを持ってそこから物を出し入れするようにね。」
「承知しました。」




