剣神スキル
王様が先導する形でやってきたのは、王宮殿の裏庭にあたるのか、俺たちが入ってきたのと反対側にある広い敷地の場所だ。
近衛兵の宿舎もあるみたいだ。
兵の練兵所とは言え、そこは王宮の一番の守り手、全員が剣術か槍術、格闘術のスキルを持った人たちだ。
剣将クラスもいる。
基本、剣術メインなのか、近衛兵って。
まあ、馬に乗って戦うとかは少ないか、王の護衛だと。
ともかく、舞台が整って、最初の手合わせの相手が出てきた。
「俺は、第二騎士団長を拝命しているフィオと言う。弓将だ。どうする?実戦形式で決着をつけるのか?」
「俺はどちらでも構いません。団長の本気の技を見せていただき、一手ご指南頂けたらありがたいです。」
「俺の本気か。では、俺の技、速射と連射をお見せしよう。好きな武器で弾いてくれ。即死はしないように狙うつもりだが、神官が治癒を施すまでの間は、痛いのは我慢して貰うことになるだろう。」
「了解しました。いつでもどうぞ。」
「得意の槍は出さなくていいのか?そっちの準備ができるまで待っていよう。」
「あー弓があるので問題ないです。いつでもどうぞ。」
「その若さで天狗になるのも仕方ないか。少々痛い思いをするだろうがいい薬になるだろう。」
そう言い終わるや否や、目の前に突き刺した矢を次々に番えて俺に向かって放つ。
少々痛い目って、最後の一本は眉間を狙ってるじゃねえか。
相手は5射。
両手足と眉間を狙って撃ってきた。
それに対して俺は2射。
3本ずつを2回。
その内5本で向かってくる矢を撃ち落とし、残る一本は、股間の真下。
あっ、羽の部分が大事なところを掠って行った。
直撃じゃないし、大丈夫だろう、多分。
場内がシーン。
フィオさんは、状況が呑み込めたのか顔が蒼くなっている。
「えっと、まだ続けますか?」
「曲芸紛いのことをしおって。槍術においてはそうはいかん。この間合いに入れば小細工は通用せぬ。」
第一騎士団団長のドルガーさんは、なぜが激怒している。
相手も名乗ってないし、そのまま始めちゃってもいいんだろうな。
徐にアイテムボックスから矛を出して構える。
うおー
雄たけびを上げながら迫ってくる。
熱い人なんだ、ドルガーさんって。
最初から全力だ。
ドルガーさんの周囲の土が舞い上がり、あたかもドルガーさんが球体の中に
入ったかのような状態だ。
まあ、厄介ではあるんだけど、この手の攻撃は簡単なんだよね。
ぽちっと、槍の持ち手の親指を突いてやると、あら不思議、槍が飛んで行って無防備な状態に。
「もう一度仕切り直ししますか?」
場内は、さらに静まり返り、王様もやや茫然。
フリートさんは憮然としている。
「えっと、それでフリートさんにご指南を頂けるんでしょうか?」
その場の人が全員硬直したように、シーンとしているので、俺が王様に聞いてみた。
王様も苦渋の色に染まる。
まあ絶対の自信があったんだろうけど、王宮の団長が続けて破れてしまって、仮に剣聖の近衛騎士団長が破れてしまえば、正に王宮の騎士の面目丸つぶれだしね。
俺にとってはどうでもいいことだけど、貴族にとっては由々しきことだろうし。
「陛下。私に立ち会わせてください。いえ、立ち会わねばなりません。」
「しかし、フリートよ。」
「私も数十年、剣の道を極めてきました。自分の全力をぶつけられる様な相手は、もはや王国にはおりません。武術者として立ち会いたいのです。それに、王を守る剣として、ここで引くわけにはまいりません。」
「そうか。そうじゃの。お主は我が王国の剣じゃ。お主の力を見せてくれ。」
「御意。」
そう言うと、アイテムボックスからスラリとした細身剣を取りだした。
近衛兵としていつも持っている片手剣よりもこちらの方が本来の得意剣ということなんだろうな。
「ジュンと言ったか。私も本気の剣を出す。従ってお主も得意の武器をもつがいい。」
「あー、俺としては剣術の指南を受けたいので、剣で。」
「お主がそれでいいと言うならいいだろう。ニードリックマウス王国の剣を存分にその身で味わうがよい。」
剣聖フリートさんとの立ち会いは静かに始まった。
距離は5mほど。
どちらにとってもあってないような距離だろう。
細身剣だから突き技なのかもしれないけど、まあなるようになるか。
どちらともなく間合いを詰める。
とたん、俺の警戒モードがいきなりレッドへ。
自分の勘に従って、攻撃を止めて剣で左側の防御をする。
ガキッ。
シュルルルルー。
あれは剣じゃないのか?
剣の刃が鞭のように伸びてきて俺の首を狙ってきやがった。
「ほおー。初見でかわすか。ただの偶然でもなさそうだな。ならば、これはどうだ。」
剣筋は上段からの振り下ろし。
しかし警戒は俺の背後から迫っている。
ならば・・・
俺は、上段振り下ろしの間合いに入って行く。
後ろから迫ってくる剣先。
延髄を突こうとするその瞬間、数㎜の回避で剣先を避ける。
目標を失った剣は、そのままフリートの胸に突き刺さる。
手加減はできない。
そのままフリートの右手を切断する。
剣に流れていた魔力が途絶えたためか、剣が元の細身剣の形状に戻る。
結果として、切断されたフリートの右手が、フリートの細身剣を、フリートの胸に突き刺した状態だ。
ここまでの攻防をきちんと認識できた人間がここに何人いるのか。
もしかしたら誰も認識できなかったのかもしれない。
「な、何がどうなっておるのじゃ。なぜフリートは自分の胸を自分で刺しておる。なぜ右手が切断されておる。」
「そんなことよりも、高位の治癒魔法を使える人か、高位の治癒ポーションはないんですか?今なら、後遺症もなく治癒可能です。」
俺がそう言うと、やっと周囲が動き出す。
しかし危なかったな。
武器の情報がなかったとは言え、剣をあんな風に使うとはな。
流石は聖クラスってところか。
フリートさんは、右手をスパンと切られて血液がかなり出て意識が朦朧としている。
いろいろ聞きたいこともあるけど、流石に奥義と言うような内容を簡単に教えてはくれないだろうな。
それよりも、自分のステイタスを確認してみる。
剣神スキルだ。
ただしLV1。
これまでスキルを習得すると大抵すぐにLV5悪くてもLV3だったのに。
流石、神クラスのスキルってことかな。




