武器新調
そうこうしているうちに、鍛冶工房街に到着。
まずは、品物の品質をチェックして、腕のいい鍛冶師がいる工房を見つけることだな。
大小さまざまな工房があるけど、店の大きさと鍛冶師の腕とは必ずしも比例しないからなぁ。
取り敢えず、いろいろ回ってみる。
ゴードン王国の迷宮都市の鍛冶屋の親父さんはなかなかの腕だったけどなぁ。
この国でも王都よりも迷宮都市の方に腕のいい鍛冶師がいるんだろうか。
まあ、これだけ冒険者や騎士、傭兵みたいな奴らが集まってるんだし、それなりの腕の職人がいるだろう、きっと。
そんなことを考えながら、目につく武器の品質をチェックしながら歩いていると、騎士の鎧は来てないけど、騎士っぽい歩き方をするそれなりの人族の男が目の前を通り過ぎる。
俺が目に付いたのは、彼が手に持っている槍がミスリルの達人級、しかも攻撃力10%アップの付加が付いていたからだ。
その男は周囲の工房には目もくれずに、一直線に工房街の奥の道に進んでいく。
すぐに男の後を追いかける。
リリアナはそんな俺の様子に気がついて、何も言わず後ろから付いてくる。
男を見てから10分ほど歩いた所で、その男が一軒の工房に入る。
そこは大通りからかなり入った場所にある小さな工房だった。
周囲にも何軒か小さな工房があるけど、大通りの工房と比べると客は少ない。
俺は迷わず、その男が入った工房に入る。
鋼鉄製の武器が多いけど、千年木の杖、竜骨の弓などあまり見かけない素材の武器も置かれている。
しかも全てが最高級品質のみだ。
達人級の物も多い。
「それでは親父さん、メンテナンスをお願いする。」
「おう、2日もあれば問題ない。代わりの槍は?」
「しばらく休暇なので問題ない。では2日後に伺う。」
そう言うと、男が出ていく。
念のため確認すると、第二王宮騎士団副団長となっていた。
槍将のスキル持ちでLV21だ。
「それで、そちらのお二人は何か探し物かい?」
「男が出て行った後、店の親父さんが声をかけてきた。」
「こんにちは。俺たち冒険者なんですけど、武器を新調しようと思いまして。」
「こんな奥まで探しにか?誰かの紹介か?」
「あー、いいえ。先ほどの方が持っていた槍が立派だったので、先程の方を追いかけてきました。」
「ほう。このミスリル槍が立派に見えたか?」
「ええ、かなりの業物ですよね。」
「お前さんも槍使いかい?」
「ええ、今はこれを使っています。」
そう言いながらミスリルの矛を出す。
「ほっ、ほー。こいつは驚いた。初めて見る槍だ。この国の物じゃないね。」
親父さんが俺の矛をあれこれチェックしている間に、俺も親父さんをチェックした。
何と、鍛冶匠スキルもちだ。
初めて見た生産系スキルでの上位スキル持ち。
「手入れもしっかりやっている。まるで新品みたいだ。その癖、何度も気を通されて、いい感じに熟成されている。こいつがあれば、新調せずとも問題ないだろう?」
「これはこれで問題ありません。ただ、今後迷宮の中下層を探検するに当たってやはりさらに強力な武器を手に入れたくて。」
「迷宮の中下層?ドルグ迷宮は地下15階から先へは行けないぞ。余所の国なら16階層まで探索は進んでいるんだろうけどな。」
「あー、地下15階は突破されました。この国でもこれから迷宮下層への探索が進むと思います。」
「何だと?そいつは、確かか?って、嘘を言っても意味ないな。お前さんたち冒険者と言ったか。その若さでなー。まあお金に余裕があるんだったら、冒険者なんぞ辞めておいた方がいいぞ。長くできる職種じゃない。」
「ええ、まあ。自分の力が及ばないようならすぐに撤退します。」
「まあいいや。貴重な情報を教えてもらったことだし、多少はサービスしてやるよ。で、槍系を探してるのかい?後ろのお譲ちゃんの武器も探してるのかい?」
「取り敢えず、一通りの武器を揃えたいと思っています。」
「一通りの武器?なんだい、武器コレクターなのかい?」
「俺自身、若いですし、一通りの武器を修練してみようと考えています。」
「まあ、自己責任だし、こっちは武器を売る方だから文句はないけどな。しかし、本当に武術を極めようと思うんだったら、どれか一つの武器をきちんと修練した方がいいぞ。」
「はい、ご忠告ありがとうございます。それで、こちらで売っているのは、今ここにあるものだけでしょうか?」
「まあ、いくらかの在庫は裏にもあるけど。」
「それでは、一通り試させて頂いてもいいでしょうか?」
「そいつは構わねえが、本当に全部の武器を購入する気か?」
「親父さんの目で見ていただいて、俺が使いこなせそうになければ諦めます。」
最初は半信半疑、寧ろ小さな子供が駄々を捏ねてるのを仕方ないなぁ程度に思っていた感じの親父さんが、全ての武器を素振りとはいえ使いこなし、その武器の能力を十二分に発揮してくれると思ってくれたのか、奥から秘蔵の逸品と言うような感じの武器まで出してくれた。
「いやはや。俺も見る目がない。申し訳なかった。」
「そんな、寧ろ、こんな逸品の数々を本当に譲っていただけるんですか?」
「勿論。いや、是非使って欲しいよ。俺もこれまでたくさんの武術者をみてきたけど、あんたほどの人はいない。それにお譲ちゃん、いやお譲ちゃんなんて呼んだら失礼だな。そちらの兎族の姫剣士の腕も凄いものだ。ここまで双剣を使いこなせる剣士はそうそういないよ。」
「ところで、こちらの武器の内、能力付加が付いている物とそうでない物の違いはなんでしょうか?」
「能力付加?能力付加っていうのは何だい?まあ、俺なりの鍛冶の製法なんだが、極稀だが他のは違った逸品ができることがあるんだ。なかなかそこの違いまで感じれる奴は、鍛冶スキルを持ってるやつでも少ない。鍛冶匠を持ってるやつなら話が通じるんだがな。使い手の武術者にもその違いが解る奴は稀だよ。まあ、ミスリルやアダマンタイト、高品質の鉄鉱石などがたくさん手に入れば、俺もいろいろ試しながら作れるんだが、この国では鍛冶素材はなかなか十分には手に入らないんでな。」
「あー、アイアンゴーレム、シルバーゴーレムなんかの素材なら持ってますけど。」
「何?どれほどある?全部買うぞ。いや全部譲ってほしい。」
「全部ですか?全部は無理かも。」
「まあそうだな。貴重な素材だ。一見の工房に売れるわけもないか。」
「あーそう言うんじゃなくて、量があるので、全部は無理だと思いますよ。」
そう言って、武器の試しを行っていた工房の裏の小さな広場に、一体だけアイアンゴーレムを出してみた。
「なっ!」
まあ、絶句するよなぁ。広場一杯だしな。取り敢えず片足だけ切り離して残りを収納した。
「えっと、シルバーゴーレムの方はどうします?」
「そっちも丸ごとか?」
「ええ、まあ」
「それじゃあ、そっちも片足分。いや、膝から下部分だけでいい。」
「それから、こう言うのもあるんですけど。」
シルバーゴーレムの膝下を出した後、地下15階のボス戦の後ゲットしたミスリル塊を出した。
「こ、これは。これはまさか、全部ミスリルなのか?」
「はい、そうですね。あと、こっちの方は小さいですけどアダマンタイトと緋色鉄です。」
「なんだと。これが全部アダマンタイトの精製済みの塊だと?緋色鉄・・・間違いない、緋色鉄の純塊だ。申し訳ないが、これだけ全て買い取れるほど、俺には資産がない。この工房全てを代わりに売っても全然足りない。お前さんは一体・・・。」
「では、どうでしょう、今日の武器の代金と、これらを使って俺たちの新しい武器を作ってもらうと言うことで、買い取れる分を引き取ってもらうと言うのは。」
「何?そんな条件でいいのか?勿論、OKだ。こちらからお願いしたい。これだけの素材を手に入れられる機会はそうそうあるものじゃない。借金をしてでも買い取りたい。」
「こちらの工房には、今後もお世話になると思いますし、借金はなしで。親父さんの負担にならない程度で引き取りをお願いします。俺たちがこの国にいる間は、定期的にこちらで取引させて頂きますので。」
結局、ミスリル塊のごく一部、握りこぶし2つ分ぐらいと、アダマンタイトと緋色鉄も少しだけ引き取って、武器の代金と、新しい武器各種と新調して貰うことで相殺して貰えた。
ついでに、防具でお勧めの職人工房も教えてもらって、その足で防具も新調した。
今、夕食後の日課になっている鍛錬をやっている。
リリアナも新しいミスリルの双剣を振るっている。
片手剣や両手剣も問題なく振るえたけど、結局、リリアナは双剣をメインにするようだ。
今は、剣に魔力を流す訓練も同時に行わせている。
2つの魔法スキルLV3のリリアナならほどなくコツを掴めるだろう。
そのうちに、魔力操作と魔力感知のスキルも転写してやるかなぁ。
いやいや、今はリリアナも俺に絶対服従しているけど、人って怖いからなぁ。
何でもかんでも転写して強くし過ぎるのは拙いか。
寧ろ、人数を増やしてリスクを分散した方がいいかな。
隣で一生懸命に素振りをしているリリアナを見ながら、そんなことを考えてしまった。




