孤児院
「おや、ドルガーさん、もう戻りですか?」
「ああ、ギルドに呼ばれてるからな、今日は早めに戻ったんだ。」
「そうですか。あれ?そっちの子は?ドルガーさん、今日はリリアだけ連れて出ませんでした?」
「ああ、そこの森の前で倒れてるのを拾ってきた。頭を打ったみたいでな、記憶が飛んでるみたいだ。取り敢えず、リリアにマリアの所に連れて行って貰おうと思って連れてきた。」
「そうですか。しかし、見たことない子ですね。この門からも出てないと思いますけどね。」
「まあその辺り詳しいことは、本人の記憶が戻ればはっきりするだろうさ。」
「まあ問題ないでしょう。一応規則なんで、みなさん、水晶に触って下さい。」
最初ドルガーさんが触れる。水晶が青く光る。リリアも触ると同じように青く光る。俺もビビりながら触れると青く光った。
兵士の方は、当然といった感じだ。あれで何が解るんだろう?
門を潜った後、中世ヨーロッパみたいな石造りの町並みの中を歩きながら、
途中でドルガーさんが、リリアに何か言って別の方に向かった。
俺もドルガーさんについて行こうとしたら、リリアに服を引っ張られて、
顎をしゃくって付いてくるように指示された。
何だよ顎指示って。
目的地に着くまで、リリアは全く後ろを振り返らない。
黙々と歩く。
俺も話すことはないから黙々とついて行く。
いい匂いがするなーとかよそ見してたら、
リリアがどんどん先を歩いて行くんで俺もどんどん歩く。
いくつ道を曲がったのか覚えてないけど、ついに到着したようだ。
到着したのは、古びた大きな建物のある場所だ。
この一帯、なんとなく古びた家が多いけどね。
「ただいま、マリア先生。」
「あら、リリア、お帰り。今日はドルガーさんと狩りに出たんじゃないの?」
「出たけど、獲物がいなかった。最後に見つけたのは、そいつに取られた。」
なっ、俺が取ったって?何ですとー。冤罪だ、冤罪を主張する。
「あら、この子は?」
「ホーンラビットの前に突然飛び出してきた。それで頭を打って馬鹿になった。」
「えっ?ホーンラビットに?どこか怪我をしたの?こちらにいらっしゃい。回復魔法かけてあげるわ。」
「そいつは大丈夫。ぶつかったホーンラビットが死んだ。」
「えっ?」
「はじめまして。ミソラジュンと言います。どうやら僕は記憶を失っているようです。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。」
「まあまあ、ご丁寧に。ミソラジュンくんて言うのね。個性的なお名前ね。私は、マリアと言います。この孤児院のお世話をしています。記憶を失っているってどういうこと?」
「ホーンラビットにぶつかった時に頭を打って、馬鹿になったって、ドルガーさんが。」
「リリア、ドルガーさんがそんなことを言う筈がないでしょう。元王国の騎士様ですよ。人を貶すようなことはしません。それで、頭を打って記憶をなくしているのは本当みたいね。親御さんの名前とか住んでた場所とか、何か思い出すことない?」
「済みません、自分の名前ぐらいしか。」
「そいつ、26歳なんだって。」
「えっ?人族よね?」
「ねっ、自分で26歳とか言うんだから馬鹿になってるの。」
「これ、リリア、そんなこと言わないの。」
「えっと、済みません。僕のことで。」
「アイテムアウト」
リリアがそう言うと、手にホーンラビットが出てきた。
「あら、リリア、狩りはできたのね。よかったわ。これでE級に残れるわね。」
「これは、そいつの獲物。リリアはそいつの代りに持ってきただけ。」
「えっと、僕もそう言われたんですけど、自分で意識して倒した訳じゃないですし、もしかしたら、僕にぶつかる前に、リリアさんが狩っていたと言うことですので、弱ってたのかもしれません。ですのでそれはリリアさんのものです。」
「えっ?」
「あら、そうなの?リリア。」
「えっと、私が狩っていたのは本当だけど、最後はそいつにぶつかって倒れて。でも角からぶつかったのに、そいつに何の怪我もなかったから、勢いが弱かったのかも。」
「そう、まあ、そこはよくわかりません。じゃあ、2人で冒険者ギルドに行って、今の話を正直にお話しなさい。それをどう判断するかは、冒険者ギルドがすることだわ。」
「えっと、ジュンもそれでいい?」
「ジュン?」
「ドルガーさんが名前が長いからジュンって呼ぶって。」
「そう、ミソラジュンくんはそれでいいの?」
「えっと、それでお願いします。」
「じゃあ、ジュンくんと呼ぶことにしましょう。さあさあ、そうと決まれば、2人とも急いで冒険者ギルドへ行ってらっしゃい。」
「えっと、はい先生。ジュン行くよ。アイテムイン」
ホーンラビッドを収納?した後、入って来た道を引き返すように走り出した。
今回は一応、俺に気を使ってくれてるようだ。
まあ子供の走るスピードだ、俺にとっては大したことはない。
来る時には、随分かかった気もしたけど、引き返して冒険者ギルドに到着するのに10分もかからなかったと思う。
すこしゼーハーゼーハーしてるけど大丈夫か?
最初から最後まで全力疾走するからだよな。
これだから子供は・・・