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ニードリックマウス王立図書館

途中、いろいろ寄り道もしたし、ニードリックマウス王国でも盗賊団を壊滅させたりしたんで、王都に着いたのは、ゴードン王国の迷宮都市を出てからおよそ3週間後だった。


ニードリックマウス王国の王都は、平野部に広がる広大な都市だ。

恐らく都市の中心部が王宮なんだろうけど、そこからほぼ同心円状に3つの城壁がある。

一番外側の城壁の外側にも住みついている住民がいるみたいだ。

まだまだ発展しているってことなのか、いずれにせよ、ゴードン王国の王都と比べて3倍以上の広さがあると思う。


門兵ならお金はかからないだろうと思って、城壁を潜ってすぐに冒険者ギルドの場所を聞いたら、お金を請求された。

銅貨1枚程度だしまあいいか。

今、俺とリリアナは馬車じゃなく、ブルホースの上に大きめの馬具をつけて直接乗っている。

ちょうど、俺がリリアナを後ろから抱きかかえるような感じだ。

ゴードン王国の最後の街に寄った時に、2人乗りでブルホースに乗っている人を見かけたので、馬具を買い求めて乗ってみたら、馬車の御者台に座ってるより乗り心地がいいし、ブルホース自身も走りやすそうなので、馬車を収納して直接乗るようにしている。

ニードリックマウス王国に入ってから盗賊退治をはじめ寄り道したけど、思ったよりも早く王都に到着したのはそのためだ。


ともかく、王都の中がこれだけ広大だと歩いて回るわけにもいかないし、そのままブルホースに乗って王都の中を歩く。

冒険者ギルドは、王都の中にある城門をもう一つ潜った、中地区と呼ばれる区画にあった。

正確には中地区南門街区だ。

冒険者ギルドはこの区画の中でも一気は目立っていた。

4階建てのちょっとした市民ホールっぽい感じだ。

建物の横には訓練場なのか小さなコロセウムみたいな広場もある。

また反対側には大きな倉庫があって、そこに引っ切りなしに荷馬車が出入りしている。


俺とリリアナがブルホースを厩において中に入ってみる。

そこは広々とした空間に、10ヶ所近くの受付カウンターが並び、色分けされたボードにびっしりとクエストの依頼用紙が貼り付けられた市役所っぽい感じの場所だった。

受付カウンターの後ろのスイングドアからは職員が出入りし、受付の前には順番待ちの列もできていた。

ホールの半分はバルみたいな空間で、小さなテーブルにパーティー同士なのか酒を酌み交わしている奴や、会議みたいなことをやってるグループもある。

何となく忙しない雰囲気に圧倒されながら、受付の列に並んで順番を待つ。


「次の方どうぞ~。」


やっと俺たちの順番だ。


「こんにちは。ゴードン王国から来たんですが、俺のB級昇格試験の申請をお願いしたいんですが。あと、この街には図書館とかはありますか?もしくは書籍、特に魔法やスキルに関する書籍を読める場所、購入できる場所を探しているんですが。」


「それではまず、あなたの冒険者カードをお願いします。お連れの方もご一緒に受験されますか?」


「彼女はC級に上がったばかりなんですが、受験資格ありますか?」


「では確認してみますので、冒険者カードをお願いします。」


「では、よろしくお願いします。」


「ジュン様。確認できました。B級受験資格認定されてますね。リリアナ様の方はC級になってから魔物討伐の回数がないようですので今回の受験はできません。それで、ジュン様の方は、最速ですと丁度明日、B級昇格試験が行われるんですがどうされますか?今回の課題はここから1日ほど北に行ったトングの森の中にできたゴブリンのコロニーの討伐ですので、数日かかる予定です。行き帰りの馬車はギルドの方で準備しますが、食料をはじめ野営の準備も含めて自己責任、そして採点項目になります。準備の時間がないですし、次回の受験にしますか?」


「野営の準備なら、ここに来るまでに途中野営をしてきましたので問題ないです。明日の分で参加させて頂けるならよろしくお願いします。」


「わかりました。では、明日の朝6時までに、外地区北城門前に集合してください。時間厳守でお願いします。クエストの内容や、試験の方法は馬車の中で試験官の方から説明があります。それと、図書館は内地区東門街区にあります。入るときに預託金金貨3枚と入場料銀貨10枚が必要ですが、預託金は出る時に中で本の破損等のペナルティーがなければ返還されます。あと図書館の中で写本の販売がされています。また中の書士に写本を委託することもできます。値段は書士との直接交渉になります。書籍自体は、東門街区を中心とした街中でも販売されていますが、よくよく注意しないと粗悪品や写本ミスの不良品なども売られていますので、書籍に慣れていない方は多少割高になっても、図書館での購入をお勧めします。あと、魔物、植物関係の書籍でしたら、当ギルドの2階でも販売しています。行っていただければ分かりますが、各種ポーション類や、武器の販売も行っています。」


「各種ポーションですか?」


「ええ、他の国から来られた方ですと馴染みが薄いかもしれませんが、ニードリックマウス王国では薬学関係の研究も進んでいまして、薬草などを改良して各種ポーションが販売されています。他国にないポーションも販売されていますよ。尤も、高額ですし誰でも購入できるわけではないですが。」


「いろいろありがとうございます。あと、今後迷宮探索をしたいんですが、迷宮の場所は離れているんでしょうか?それから、お勧めの宿があれば教えてください。」


「迷宮は、明日B級昇格試験が行われるトングの森の傍です。明日は、トング迷宮都市で泊まることになると思います。お勧めの宿ですか?そうですね。明日の出発も早いですし、中地区北門街区にある狐の尻尾亭さんなどはお勧めですよ。お一人銀貨5枚で夕食と朝食が付いてます。シャワーは共同になりますがお部屋は綺麗ですよ。」


「ありがとうございます。それでは、そちらに行ってみたいと思います。」


冒険者ギルドを出て最初に向かったのは内地区東門街区だ。

まずは、この世界の書籍がどうなっているのか知りたい。

できれば、魔法やスキルについて詳しく書かれている本を探してみたい。


「ジュン様、今はどちらに向かわれているんですか?」


「ああ、ごめん、言わなかったね。最初に図書館に行ってみたい。そこで、魔法習得やスキル習得のヒントになるようなことがわかるといいけど。あと、武器への能力付加についてもね。」


「武器への能力付加ですか?」


「まあ、そっちはダメ元っていうか、あればいいかなぁって感じ。今欲しいのは、魔法の一覧表なり、スキル一覧表なり。とにかく、この世界にあるスキルがどのようなものがあるのか知りたいかなぁ。」


「それで、明日からは私はどうしたらいいでしょうか?」


「取り敢えず、リリアナも一緒にトング迷宮都市まで行こうか。リリアナはこいつに乗って馬車の後ろからついてきてくれればいいし。試験自体はすぐに終わるだろうから、後はそのまま迷宮都市に居残るか、もう一度こっちに戻ってるかその時に決めればいいかな。いずれにせよ、いろいろと知りたいことが多いしね。しばらくはこの国に滞在したいと思ってる。」


「了解しました。できれば、ジュン様の試験を見学させて頂ければ嬉しいんですが。」


「その辺りは、試験官って言う人に聞いてみないとね。多分、問題ないと思うけど。って言うか、見学するまでもないと思うよ。相手はゴブリンみたいだしね。槍だけで十分対処できると思うよ。」




「凄いな。宮殿みたいな広さだな~」


思わず声に出して呟いたら、通りがかりの人に、


「宮殿みたいじゃなくて、元は宮殿だったんだよ。と言っても東宮殿だけどな。王都には元々中央宮を中心にして、東西南北4つの宮殿があったんだよ。今では中央宮の周囲にあった貴族宮を全て、内街区に移動させて、空いた場所に全ての王族の宮を移して巨大な王宮区になってるけどな。東西南北の宮はそのままいろんな施設に変更されたって訳だ。」


「そうなんですね。そんな立派な場所が図書館なんですね。」


「まあな。東宮殿が一番警備が厳重にできるからね。書籍を集めて管理するのには一番いいって訳だ。」


入口で、情報のように2人分の預託金と入場料を支払って中に入ると、日本で知っていた図書館とは別な世界が広がっていた。もし全部の施設を回って書籍を確認しようとしたら数カ月は軽くかかる感じだ。


入ると、大きな受付カウンターがあって、その後ろに受付の人が並んで座っていた。入場料や預託金が結構高いけど、それなりに人が入っているようだ。


「すみません。本を探しているのですが。」


「いらっしゃいませ。どのような書籍をお探しでしょうか?」


「魔法全般に関するものと、スキル全般に関するものです。」


「魔法関係は、一の宮に集められています。スキル関係は、四の宮に大体集められています。こちらが館内の案内地図です。」


「ありがとうございます。あと、書籍の販売もされているとお聞きしたのですが。」


「書籍販売でしたら、そちらの階段を上がって頂いた2階です。人気の書籍の写本でしたらほとんど取り揃えてあります。また、指定の書籍を写本希望の場合は、2階奥にいる書士のところにお持ちください。」


「ありがとうございます。」


そう言って受付を離れた。なんか圧倒される感じだ。


「リリアナは何か読みたい本とかある?」


「えーっ。私ですか?私などに書籍は勿体ないです。それに難しい文字は読めませんし。」


「リリアナに勿体ないってことはないよ。書籍は人を選ばないよ。人の方が書籍のランク付けしたりするんだろうけどね。口で教えてもらう以上の知識や知恵を得られるからね。リリアナも興味があるなら読んでみるといいよ。文字が難しいなら、簡単なものから始めるといいよ。」


「はい、ありがとうございます、ジュン様。」


リリアナがいつも以上にキラキラ光線を出して俺を見てるけど、まあそれはいいか。

まずは2階に行ってみた。

人気の写本販売ということでこじんまりとしているのかと思いきや、ちょっとした本屋さん状態だ。

ジャンル別に結構な量の写本が置かれている。

まずは、魔法関係のコーナーに行ってみた。

リリアナも気になるようだ。

光魔法と風魔法関係の本があったのでリリアナに渡してやると、嬉しそうに読み始めた。

文字よりも呪文が多いし、魔法解説みたいな感じだから読めるでしょうきっと。


俺は、魔法大全という本を見つけた。

魔法に関する百科事典みたいな奴だ。

かなり厚いけど、同じ本が何冊かあるから人気の本なんだろうな。

あと、薬草事典というものも見つけた。

いろんな薬草の効能とか保存方法、煎じ方などが書いてある。

おっ、薄いけど、これはポーション関係の本?

残念ながら成分とか、生成方法などは書かれてないけどどう言ったポーションが

あるかなど詳しく書かれている。最先端の分野なんだろうな、多分。


あと、リリアナに渡した各属性魔法の解説書みたいなやつの他の属性もあった。

パラパラとみたけど、何となく使える気がする・・・多分。


今度はスキル関係のコーナーに行ってみた。

書籍は少ない。コーナーって言うか、端の方に一段だけしかない。

それでも、いろんなスキルが網羅された一冊があった。

俺自身が持っているスキルもあるけどね。

ただ、ざっと見た感じスキルの上位互換については物理攻撃系のスキル、例えば剣術、剣将、剣聖、剣神があるってことぐらいしか書かれてない。

まあ、剣聖の上に剣神ってスキルがあることがわかっただけでもOKだけど、いずれにせよ、俺が欲しい知識は書かれていない。

スキル関係は直接書籍を確認した方がいいかもしれない。


あと、錬金、鍛冶、調合についての専門書みたいなやつがあった。

これら3つは生産系スキルと呼ばれているものだ。

スキル発現に関しては、種族属性があるか持って話だが、その種族じゃなきゃ絶対に発現しないって訳ではないようだ。鍛冶はドワーフ族、調合はエルフ族に発現しやすいらしい。


何だかんだとチェックしてたらかなりの分量になった。

会計して貰うと白金貨1枚ほどになってしまった。

書籍ってマジで高い。


その後、四の宮の方に行ってスキル関係の書籍をチェックしてみた。

どのようにしたらスキルが発現するのかなどの研究はないみたいだな。

スキルは神様から貰える恩恵とみている節がある。

習得できればラッキー。習得できなくて当たり前って感じだ。


ただ、武術関係のスキルに関する研究と言うか解説書はあった。

剣術の訓練法と言うか、指導者向けの本みたいだ。

どのような訓練を、どのような手順でやったらいいかみたいな内容だ。

この手の書籍をそれぞれ写本して貰うことにした。

書士に頼んだら、一冊当たりページ数も少なかったのか金貨1枚程度だった。

武術は、剣術、槍術、格闘術、投擲術、弓術、斧術、盾術の7つが確認されていて、それぞれに指導方法があるようだ。

俺自身は、弓術と斧術以外は持ってるけど、リリアナや今後仲間になる奴のことも考えて一通り揃えておくことにした。


ここまでやって、夕方近くになっていたけど、図書館が閉まるまでもう少し時間があったので、一の宮へ行って、魔法関係の書籍を見てみた。

できれば、迷宮内で水晶転移と言う現象がある以上、転移魔法ないし属性魔法以外の魔法がないかどうか確認したかったからね。


書籍の量が半端ないので、ここの係りの人に尋ねたら、それは失われた魔法・古代魔法のコーナーにあると言われて行ってみた。

ただ、研究としてはあるけど使える人もいないし、使えたという記録もないそうだ。

あくまでも、真実の板や迷宮の転移水晶のように古代遺物と呼ばれるアーティファクトが存在する以上、そのような魔法があったのではないかという推論みたいだ。

それでも、かなり勉強になったし、じっくり読んでみたいのでこれも写本することにした。

数冊あったけど、そのうち魔法関係の本を一番書いている人物の物にした。

これは少し値が張って金貨5枚ほどかかるようだ。

すべての写本が出来上がるのが1週間後だと言うので、その時に受け取りに来ることにした。本の受け取りだけなら入口で連絡したら入場料はかからないらしい。


リリアナはと言うと、光魔法の本をずっと読み耽っている。そこまで集中して読むほどの内容かって思って聞いてみたら、出てくる文字がわからない物が多いので、何と書いてあるのか考えながら読んでいるとのことだ。


図書館を出て、宿に向かいながら馬の上で一ページずつ声に出して読んでやりながら、言葉の解説も加えてやった。

文字数が少ないけど、リリアナは丸暗記してるようだ。

何度も小さく声に出しながら同じページを読んでいる。

文字の勉強にもなるし、自分の興味のあることだからきっと続けられるだろう。

宿に着いてからもずっと本に嵌っている。

宿の部屋にはシャワーが付いてなかったので、俺が浄化魔法で綺麗にしてやったら、自分もいつか使えるようになりたいと息巻いてた。

今のレベルだと必要SPが全然足りないからね。

そのうちに使えるようになるよと言っておいた。


俺も、アイテムボックスの中に入れた書籍から新たな知識をかなり仕入れた。

属性魔法は全て上位変換した。

俺の場合、そのスキルなり魔法に対する正確な知識を持つことが、スキル習得の一つのキーになるようだ。

正確な知識と明確なイメージ。


この世界の基本となっているのはそこなんだよな。

明確なイメージ。

イメージを具現化するのに、魔法なりいろんなスキルの補助が必要って感じかな。

スキルや魔法がなくてもイメージの具現化は可能だけど、効果が弱く持続時間が短いんだよね。


いずれにせよ、光魔法が聖魔法になったように、

影魔法が闇魔法。

火魔法が炎魔法。

水魔法が氷魔法。

風魔法が嵐魔法。

土魔法が岩魔法。

と上位変化した。


あと、夕食後、宿の裏庭で素振りをするときにこれまで盗賊たちから奪った武器を使って、武術指導の指南書に書いてあった型を思い出しながらこなしていくと、全ての武術が将化した。

現在の俺の記憶力って半端ない感じ。

一度パラパラと読んだことがらが、ほぼ完璧に記憶されている。

IQで言えば200越えてるんじゃないかな。

能力値万歳だ。


ともかく、「将」から「聖」さらには、「神」へとさらに上位変化するために何が必要なのかは残念ながら今日手に入れた書籍には何も載ってなかったので、ここから先はまた手探りだ。


あと、錬金、鍛冶、調合については今日は時間がなくて未検討だ。

明日、トング迷宮都市へ向かう馬車の中ででも検討してみるかな。


ちなみに、闇魔法を習得したことで、完全不可視化の魔法が使えるようになった。

リリアナの真横にいても全く気がつかなかった。

実験だと断って消えたのに、しばらく姿を現わさなかったらリリアナが半泣き状態になったので慌てて解除した。

ずっと隣にいたのにね。

ちなみに、不可視化魔法をかけた状態で、リリアナに触れても気がつかなかったようだ。

声も聞こえなかったみたいだ。

不可視化魔法マジで凄い・・・


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