スキル習得のヒント
翌朝、宿を出て昨日の門兵の詰め所に行ってみると、しばらく待たされて隊長さんみたいな人が出てきた。
装備とか雰囲気がかなり上の人だろうなって感じだ。
「君たちが、我狼団を殲滅してくれた冒険者か。街を代表して心より礼を言わせてもらおう。本当にありがとう。」
「たまたま、運がよかったんだと思います。俺たち2人しかいなかったので相手も油断してたんでしょう。」
「うむ。あいつらの話を聞いても全く要領を得なくてな。どのように殲滅したのか説明してくれないだろうか。勿論、君たちのスキルに関わることなら詳しくは説明しなくても構わないが。」
「そうですね。詳しくは説明できませんが、彼女は双剣を使いますが、魔法も使えます。俺もこの槍を使っていますが、格闘術の方も少し習得しています。俺たちの武器を取り上げたことで彼らの油断が生まれ、そこをうまくついた感じです。魔法の詳細については、俺たちの生命線なので詳しくは申し上げられませんが。」
「うむ、なるほど。頭目達の話だと、アジトの前で君たち2人を連れてきた仲間を見た後、記憶があいまいで、気が付いたら荷馬車の上で縛られていたってことなんだが。まあ不意を突かれたのなら、戦闘行為の記憶がなくても当然だな。」
「そう言えば、魔法師が一人いたと思いますが、彼はどのように拘束するんですか?」
「魔法師は詠唱ができなければ唯の人だからな。舌を抜いた。奴の火魔法で殺された者の数は多い。本来なら舌を抜くぐらいじゃ気がおさまらないが、死ぬより辛い鉱山奴隷送りだ。これまで被害に遭った者たちの遺族も納得してくれるだろう。」
「そうなんですか・・・・」
「おう、それよりも、これが領主からの報奨金、そして奴隷売買で得た金だ。あと、ブルホースの売却と馬車の購入の手続きも済んでおる。」
「いろいろありがとうございます。お世話をおかけしました。」
「何、手間賃まで貰っておるのだ。兵たちも喜んで交渉したようだ。本来は、領主よりお礼を申し上げるべきところだが、あいにく王宮に出かけておって不在なのだ。許せよ。」
「そんな、滅相もないです。十分な報奨金を頂きましたし、街では新鮮な食材も購入させて頂きました。ありがとうございます。」
「おうそうか。我が領地で産される乳製品は格別だからな。」
その後、兵士たちに見送られながら、新しい馬車に乗ってやっと出発した時には、すでにお昼近くになっていた。
急ぐ旅ではないし、あとはブルホースに自分で走ってもらうだけだ。
「ジュン様、風魔法の訓練は・・・」
さっきからモジモジしてたのは、これが言いたかったのか。
そう言えば、外に出たら、風魔法の練習をしようって昨夜言ったからな。
魔法練習に関しては貪欲だな、リリアナ。
「風魔法はいろいろと使い方はあるだろうけど、リリアナの場合、双剣と合わせて使えるような魔法を優先して習得した方がいいかな?それとも何か希望はある?」
「えっと、特には希望はありません。ジュン様の指導に従います。」
「じゃあ、まず、風刃を習得しようか。これなら、ここに座りながらでも練習できるしね。」
「はい、お願いします。」
「イメージとしては、ほら俺のこの矛の刃の部分。これを風で作る感じ。そうだなぁー。あーあそこに鳥が飛んでるだろう?あの鳥の翼部分。あそこが刃になって飛んで行って対象物を攻撃する。」
「風刃」
俺が詠唱しながら、街道わきにある木の枝に向かって風魔法を発動する。
自分でも加減がわからなかったので、かなり強めに発動したら枝じゃなく、一抱えもありそうな木の幹ごと切断された。
目が点になっているリリアナをみながら、内心ではちょっと焦りながら平然と、
「まあこんな感じ。威力は練習を続けることで上がっていくし、こうして数枚一度に出せるようにもなる。」
今度はうまくいった、3つの刃が心地いい音を立てながら枝を切り裂く。
「まずは、イメージを固めて、飛ばす。大切なのは刃のイメージをどれくらい明確に持ち、保てるかってことと、対象物のどこに当たるかを明確に認識することだよ。攻撃魔法全てに言えることだけど、対象物をどうしたいのか明確に、瞬時にイメージし、そのイメージを持ったまま魔力を集めて発動することが大切かな。最初は手のひらから出せるようになるといい。慣れてくると武器自体に自分の魔力を浸透させて、武器自体から魔法の発現ができるようになるよ。」
「はい、ジュン様。頑張ります。」
その後は、リリアナはいつもの集中力を発揮して魔法の練習に没頭している。
俺もその間に、自分のアイテムボックスの中身の整理をすることにした。
アイテムボックスが進化したのか、俺が使い方に慣れたのかはわからないけど、一々取り出さなくても何が入っているのか、どういうものなのか鑑定ができるようになってる。
アイテム数が多くなって、がらくたっぽい武器やアイテムは一まとめにしたいとか考えてたら、ちゃんとフォルダーみたいに分類された。
ソート機能で武器だけの選別や、貴重品の選別は簡単にできるけど、何気に便利な機能だ。
アイテムボックスから取り出さなくても中身がのぞけるってことは、本とかアイテムボックスに入れてたら、取り出さなくても読めるんだろうか?
ニードリックマウス王国の王都で本が買えたら試してみよう。
その後、ニードリックマウス王国に入るまでは、何事もなく過ぎた。
夜は俺のコテージで眠ったけど、宿にいるよりやはり便利だ。
何といっても湯船があるしね。
リリアナもコテージの方がいいみたいだ。
ブルホースの小屋もクレイゴーレムの素材で作ってやった。
ブルホースも街の宿屋の馬小屋よりもこっちの方がいいみたいだ。
まあ確かに、新鮮な水と、餌、きれいな寝床と、他の動物の気配に悩まされない環境だしね。
ゴミゴミした宿屋の馬小屋よりもいいのかもしれない。
ともかく、無事に国境を越えて、さらに進んでニードリックマウス王国の王都に向かった。
この国の迷宮も1つのみみたいだ。
ニードリックマウス王国を一言で現わすと、商人の街って感じだ。
お金に限らず、いろんなものに対して貪欲さが垣間見える。
露店で串焼きを買うのすら、ボーっとしてたらボッタくられる。
でも、きちんと交渉するとかなり安く手に入れられたりもするようだ。
要は自己主張をきちんとしないといけない国って感じだ。
日本人的発想ではあっという間に身ぐるみ剥がされかねない。
基本的な食材は、俺とリリアナが1年食べても食べきれないほど買い込んでるので特に問題ないし、おしゃれにも俺もリリアナも関心がないのであんまり実害はないけど、これから書籍を購入するうえでは十分に考慮すべきだろうな。
ちなみに、道行く人にちょっとしたことを尋ねても場合によってはお金を請求される。
なので、情報収集はちょっとした買い物ついでに行わなければならない。
「何か、国が違うと随分と雰囲気が変わるんだなぁ。」
「ジュン様のおっしゃる通り、各国によって国是とするものが違うようです。例えば私が生まれた、ゴードン王国は奴隷のうち特に性奴隷の数が圧倒的に多いといわれています。奴隷商館に入るとまず、性についていろいろ教えられます。私はできれば戦闘奴隷として買って欲しかったので、商館のお姉さんたちからの指導とか話を余り聞かなかったんですけど、本当はそっち方面の知識と技術がなければ、いいご主人様に買われていくことはありません。私は、ジュン様に買っていただいて幸せですが。」
「そうなの?そう言えば、街の中に結構、娼館が多かったよね、ゴードン王国って。ニードリックマウス王国に入ってから、ほとんど見かけなくなったけどね。なるほどね~。」
「あ、あの、ジュン様がそのようなことをしたいなら、私は、いつでも・・・。」
「あー、俺はそう言うのは今はいいかな。俺自身まだまだ子供だしね。それに、まずは自分のスキル、技能を磨くことの方が楽しいし、充実してるからね。」
「あ、はい。私に魅力がなくて・・・」
「リリアナは十分に魅力的だし、可愛いと思うよ。本当に。ただ俺自身がそういう方面に興味がないってだけで。女性としてってより、パートナーとしてリリアナのことは大切に思ってるし、ずっと一緒にいて欲しいと思ってるから、これからもよろしくね。それに、リリアナの料理美味しいし・・・。」
「はい。ありがとうございます。ジュン様のために益々、料理も頑張ります。」
「そう言えば、料理ってスキルを持っている人って少ないの?」
俺も食堂とか、街中、露店商などを鑑定してるけど、料理スキルを持ってるやつって見たことないんだよな。
俺自身は習得してるから、スキルとしてはある筈だけど。
「料理スキルを持ってる人は、一流料理店の料理長をやってるか、王宮や貴族の厨房で働いていると思います。生まれついての才能と何十年も料理の修業をしないと身に付かないそうです。その辺りは武術スキルと同じだと思います。」
「なるほどねー。確かに、リリアナは双剣で高ランクの魔物を倒したり、風魔法や光魔法も発現できるけど、スキルとしては発現してないよな。」
「申し訳ありません。私の努力不足で・・・。」
「そんなことはないよ。少なくとも、双剣については剣術スキルを持っている人と比べても遜色ないと思うよ。」
「はい、ですが、私の場合双剣しか使えませんし。片手剣、両手剣なども使いこなせるようにならないと、剣術スキルの習得はないと思います。」
「えっ?そうなの?武器って一種類だけ使えればOKじゃないの?」
「その辺りはよくわかりませんが、武術の修練をするときには、まずは片手剣、続いて両手剣、そして刺突剣を使った修練を積み重ねると聞いたことがあります。それだけやっても、スキル発現する人と、発現しない人がいるようなので、全ての剣の種類を習得したら絶対に剣術スキルが発現するとは限らないようですけど。あと、剣術スキルを持っている人は、得意の剣の修練をさらに積むことで、剣将スキルが発現するそうです。もっとも、そのクラスになると王宮騎士クラスか、A級冒険者クラスみたいですけど。」
「そうなんだ。よし、じゃあ、リリアナは今日から、この鋼鉄剣とこのバスターソードはリリアナには重過ぎるか?王都に着いたらリリアナでも持てる両手剣を手に入れるからそれを使って素振りをやってみて。」
「えっ?私は魔法適性があるようなので、武術系スキルは習得できないんじゃ?」
「そうなの?」
「魔法が使えて、さらに武術スキルを持っている人って聞いたことがないです。勿論、ジュン様以外にですけど。」
「確かに、スキルなんて1つ持ってるだけでも珍しいんだろうけどね。ともかく、実験だと思ってやってみて欲しいかな。」
「わかりました。ジュン様のお役にたてるなら何でもやります。お任せください。」




